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いでぃおっと・ファンタジー  作者: づき
旅立ちの章
1/16

死のうとした男と死んだ男

どうぞよろしくお願いします!

ファンタジックなとある村の北の端、鬱蒼と茂る暗き迷いの森に、人影が一人で侵入していく。

時刻にして、午前3時のことである。


かつてこの男、ウェンズデー・テルには妻と子供があった。

家族三人で慎ましくも幸せな生活を送っていた彼だったが、ある日転機が訪れた。

妻の浮気が発覚したのである。

いつの間にやら領主の息子に手を出されていたのだ。

しかも一人娘も浮気相手に心を許し、「新しいパパ」なんて呼んで懐いている始末。

いたたまれなくなって、彼は家を飛び出し、荒縄一束肩に担いで森に分け入った。

死のうと思ったのである。


「こんな人生、もう嫌だ・・・裏切られるくらいなら、いっそ・・・!」

テルは情けなく泣きじゃくりながら、一本の木に目星をつけて登り始める。

大工にとって、こんな足場だらけの木など朝飯前なのだ。

「この頑丈そうな枝に縄をくくってと・・・ん?何だあれ?」

彼の目に、奇妙なものが飛び込んできた。


剃刀である。

しかし、それはただの剃刀ではない。

金色の剃刀だ。

刀身に黄金を使った、美しき剃刀だ。


それが太い枝の先に刺さっている。

テルはするする枝をつたい、剃刀を枝から引き抜いた。

「これは・・・?なぜ、こんなところにこんなものが?」

しかし、果たしてこれは偶然発見したものなのか。

もしや、神様が自分にくれた最期の贈り物ではないだろうか。

「・・・首吊りはやめだ、これで首をかっ切って死のう」

そう思い立ち、彼は首筋に刃を突き立てようとした。

その時である。

「その剃刀から手を離せ、雑魚め!!」

何者かが、風を切り彼の元に向かってくる。

「見せずに魅せる、『花鳥風月のディバイス』見参!このまま我が姿を見ることもなく、刈り取」

すぱっ、と。

テルが反射的に剃刀を振った、それだけで。

『花鳥風月のディバイス』は、上顎と下顎が切り離されてしまった。

そのまま「彼」は即死し、樹上から転落していった。

その一瞬の出来事に、テルはただ、呆然とするばかりであった。



『花鳥風月のディバイド』が死にました。

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