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女神に誘われ異世界へ  作者: 新垣すぎ太(sugi)
第1章 狐耳の従者
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01.06 湖面に向かって撃て!

「いや~、いい汗かいたなぁ~」


 魔力操作の特訓を終えたシノブは、魔法の家に戻ろうとする。思い切り体を動かしたからだろう、シノブは爽快な気分で満たされていた。


「済みません……なんだか指導役らしくしすぎて、失礼なことばかり言っちゃったような……」


 アミィは満足げなシノブと対照的に、しょんぼりとした表情であった。

 幻影魔術を解いて元の姿を現したアミィだが、狐耳をペタンと伏せ尻尾も力なく垂れている。肩を落とし(うつむ)き気味に立つ彼女は十歳程度の外見ということもあり、叱られた子供のようですらある。

 どうやらアミィは、役にのめりこむタイプらしい。つまり教官役に姿を変えて魔力操作を実演していた時は、役者が配役になりきった状態なのだろう。それが素に戻って、今更ながら後悔の念が湧いてきたようだ。


「何言っているんだ。指導が厳しいのは当たり前だよ。アミィのお陰であっという間に魔力操作が身に付いたんだ、感謝しているよ」


 シノブはアミィに笑いかける。

 アミィを励ましたいのも確かだが、シノブが短時間で魔力の操作に習熟できたのは彼女の熱心な指導の成果であるのは間違いない。この世界で生きていくために必要な技能を修得できたシノブは、彼女に大きな感謝の念を(いだ)いていた。


「そうでしょうか?」


 アミィはシノブの顔を見上げる。彼女の薄紫色の瞳には、それまでの不安だけではなく微かな安堵が宿っているようだ。そのためだろう、シノブを一心に見つめる少女の顔にも僅かながら明るさが戻っている。


「うん、そうだよ。次回も厳しく頼むよ」


 心配げなアミィを安心させようと、シノブは微笑みながら彼女の頭を撫でた。肩まで伸びた彼女の明るい茶色の髪は、サラサラとして撫で心地も良い。


「は、はい! 頑張ります!」


 シノブの言葉が本心からと理解したのだろう、アミィはパッと顔を輝かせた。頭上の狐耳もいつものようにピンと立ち、背後の尻尾も元気よく揺れている。


「さあ、シャワーを浴びて着替えないと風邪を引いちゃうよ」


「はい!」


 シノブがアミィの肩を押すと、再び彼女は元気よく答える。そして二人は仲良く並んで魔法の家に入っていった。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 シャワーの後は、夕食まで一休み。シノブはソファーでゆったり寛ぎながら、このあたりの地理や国についてアミィから教えてもらう。


「私が地上監視の任務に就いていたころ、つまりおよそ二百年前のことですが、このあたりにはメリエンヌ王国という国がありました。

私はその後について直接は知りません。でも、その後監視任務をしていた仲間達からは大きな変化があったとは聞いていないので、たぶん今もそのままだと思います」


 アミィは、この地にあった、そして現在もあるだろう国についてシノブに説明する。

 一方シノブは、眷属であるアミィはどこでどのように過ごしていたのかという疑問を(いだ)いた。おそらく、二百年前と聞いたからだろう。


「そう言えばアミィってどこに住んでいたの?」


「アムテリア様がいらっしゃる神界です。アムテリア様が創った神々と眷属が暮らす場所です」


 アミィによると、神界とは一種の精神世界のようなものらしく、この世界や地球のある世界のような物質世界とは異なるものだそうだ。

 アミィ達のような眷属の多くは神界で神々の配下として働いている。しかし、中には地上の様子を神々に報告する任務に就くものもいるという。


「私が地上を見ていた頃のことですが、メリエンヌ王国は人族と獣人族が多い国でした。一番多いのは人族で、獣人族がその半分くらい、エルフやドワーフはごく僅かですがいましたね」


「エルフやドワーフもいるんだ!」


 シノブは思わず声を上げた。エルフやドワーフは、これまでの説明に無かったからだ。それに物語やゲームで知ったものと同じかどうか判らないが、馴染みのある名前の登場はシノブの興味を惹くに充分だった。

 それはともかく狐の獣人であるアミィがいるのだから、この近辺に獣人族がいてもおかしくない。そしてシノブは人族に該当するらしいから、こちらも住んでいるだろう。

 しかしエルフやドワーフはどんなところに住み、どんな暮らしをしているのか。そもそも地球の物語などと同じ存在なのだろうか。シノブの心に、そんな思いが浮かんでくる。


「だいたい地球の物語と一緒で、エルフは魔法が得意な森の種族、ドワーフは鍛冶や細工物が得意な種族ですね」


 アミィはシノブの興味と疑問を感じ取ったようだ。彼女は簡単にだが、新たな二種族について語る。


「なるほどね。そのうち会ってみたいな」


 シノブは将来を夢想する。

 ごく僅かと言うのだから、そう簡単には会えないかもしれない。そもそもメリエンヌ王国を巡るのに、どれくらいの時間が必要かも聞いていない。しかし、これから暮らしていく場所なのだ。いつかは出会うこともあるだろう。シノブは先々の楽しみが一つ増えたような気がした。


「メリエンヌ王国ではほんの少ししか見かけなかったので、国内では難しいかもしれませんね。でも、ドワーフはメリエンヌ王国の北隣の国に大勢住んでいましたから、そちらに行けば会えると思います」


 アミィによれば、この森はメリエンヌ王国の北の国境近くにあるそうだ。街道に出て南に進めば、幾つかの都市があり、その先には王都もある。

 逆に北に行くと山村などしかなく、その先の山脈を抜ければドワーフが住む国に行けるとのこと。


「そうか……どこに行くかは、もうちょっと色んな話を聞いてからにしようかな」


 シノブは、とりあえずは知識の習得に努めることとした。

 森から出たらどちらに行くか。それは、もう少し近隣の国々について聞いてから考えよう。未知の種族には興味があるが、それだけで行く先を決めるわけにはいかない。シノブは、そう考えたのだ。


 シノブは、再びメリエンヌ王国について聞いてみる。

 このあたりの人族は、地球でいう北方系の白人に近い外見で、金髪碧眼となったシノブの容姿とも近い。そのため、違和感なく溶け込めるだろう。

 獣人族は狼や熊の獣人が多く、狐の獣人も少しはいる。ちなみに猫の獣人は南方の国に多いらしい。アミィは、そのように各種族や彼らの住んでいる地域を交えながらメリエンヌ王国について語っていった。


 全く知識の無い場所について教わるのだから、時間も掛かる。アミィの話を聞いているうちに、いつの間にか日も落ちている。そこでシノブ達は、夕食を摂ることにした。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 翌日は、午前中に魔法の講義の続きと魔力操作の復習をした。魔術の行使には正確な理解とイメージが必要だというから、(おろそ)かにはできない。

 そして昼食を取った後は、魔術の実践の時間である。いよいよ待望の魔術を使えるとあって、シノブはワクワクしてくる。


 アミィが言っていた東の湖へと、二人は向かう。

 シノブは、今の体になって若干背が高くなったらしい。今の彼は、北欧系のような容姿に相応しく手足も長めである。そのためだろう、森の中を進むのも快調だ。

 森の中を二十分ほど歩くと視界が(ひら)け、湖が見えてきた。対岸まで1kmはあり、島などもなく広々としている。かなり深いのか湖面は濃い青で波もなく、静かな(たたず)まいだ。

 そして湖に着いたシノブ達は、水面(みなも)のすぐ側で魔術の練習をすることにした。


「まず、水系統の魔術から試してみましょう。水なら他の属性に比べて比較的安全ですから。

……そうですね~、やはり基本、創水の魔術からいきましょう!」


 アミィが挙げた創水の魔術とは、その名のとおり水を出すための術だ。水属性の初歩でもあるし、怪我をする可能性が低いのも確かだ。


「まずは自分の魔力を手に集めてください。シノブ様は魔力がとても多いですから、力を込めすぎないようにしてくださいね」


 シノブは手を前に伸ばし、アミィに言われたとおり手に魔力を移動させる。ここまでは昨日の魔力操作で何度もやったことだ。


「集めたらそこから押し出して、手のひらの少し先に集まるように念じてください。(こぶし)くらいの大きさで良いでしょう」


 具体的なイメージが大切というだけあって、アミィは細かな指示をしていく。そしてシノブは教わった魔力放出と集中の術式を思い出し、彼女の語る内容を現実にすべく精神を集中していく。


 魔術とは、魔力を強い思念で練り上げて自分の思い通りの事象を発生させるための技術だ。そして効率的に魔力を使えるよう(まと)めた手順が術式である。したがって選んだ方式や洗練度で魔力の消費も大きく違うそうだ。そこでシノブも、アミィから習ったとおりに創水の魔術に挑む。


 まず、シノブは魔力を術式どおりに操り手のひらから放出する。そして次に、前方10cmくらいの場所に集中させようとする。これが、魔力放出と魔力集中の術式だ。

 なんとか成功したようで、シノブは思ったとおりの場所に魔力の塊があるのを感じた。野球ボールくらいの魔力の塊が、指定した位置に浮いているのだ。


「良い感じです。それでは魔力を水に変えてください」


 アミィの言葉を受け、シノブは水変換の術式を実施する。次の瞬間、魔力の塊が水に変わり、バシャッと地面に落ちる。


「できた!」


 シノブは思わず叫んだ。魔力で何かを生み出すというのは、いかにも魔術らしい。そのためシノブの気持ちは、子供のように浮き立ったのだ。


「上手くいきましたね! 量や場所も、上手くコントロールできています! 次は水球の魔術もやってみましょう!」


 アミィも華やいだ声でシノブを褒め称える。そして彼女は、更なる段階へとシノブを(いざな)う。水に変えたときに、そのまま魔力で包み込めば水球の魔術となるのだ。


「綺麗だ……」


 陽光に(きら)めきながら宙に浮かぶ水の塊。それは現実とは思えない(さま)だが、確かにシノブの目の前に存在している。

 魔力固定の術式が追加されたことで、魔力の塊は水球に変化してもそのまま宙に留まった。まるで夢の中のように幻想的な光景だが、水球には夢幻(ゆめまぼろし)とは思えない質感が備わっている。

 そして一瞬の現象であった創水とは違い持続する術は、シノブの心を更に大きく動かした。そのためだろう、シノブは時を忘れたかのように見とれてしまう。


「これも成功ですね! 固定も問題ないようです」


 アミィもにっこり微笑んでシノブを賞賛する。彼女の様子からすると、シノブの魔術習得は順調に進んでいるのだろう。


「次は水流の魔術です。魔力を放出しながら水変換をしてみてください。術式は二つだけですが、放出と変換を同時にやるので、水球より難易度は高いです。

では、湖に向けて出してみてください。疲れてきたら魔力切れの兆候ですので、すぐにやめてくださいね」


 シノブはアミィの指示に従い水流の術に取り組む。

 といっても、水流の術はシノブにとって理解しやすかった。蛇口から出る水をイメージすれば良いからだ。そのため間を置かずに、シノブの指先からホースで水を撒く時のように勢いよく水流がほとばしる。


「これなら水撒きが簡単にできるね」


 そんなことを言いながら、シノブは指を左右に振って水を撒き散らす。確かに、庭に水遣りをするときに便利そうだ。


「放出できる量は、魔力量の目安にもなります。お風呂が一杯になるくらい出せれば、魔術師としてやっていけるレベルですね。

たぶん、シノブ様は最低でもその百倍は出せると思いますけど」


 アミィのお墨付きを貰ったシノブは、水流の強さを変えるなど色々試してみる。百倍と聞いただけに、もっと魔力を込めても大丈夫だろうと思ったのだ。


「まだ魔力は大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫。何時間でも出せそうだね」


 僅かに怪訝そうな表情となったアミィに、シノブは笑顔で応じた。実際、シノブは疲れを全く感じていない。というより魔力が減っている感じもない。


「では、だんだん遠くに、そして大量に出すようにしてください」


 シノブは、放出する魔力量と速度を上げていく。すると、あっという間に消防車の放水に匹敵する量と勢いになる。


(全然疲れを感じない……よ~し、思いっきり行ってみるか!)


 気合を入れたシノブは、かなりの魔力を注ぎ込む。すると次の瞬間、およそ直径1mの水流が轟音を上げながら一直線に伸びていった。


「シノブ様、もう充分です! 放出をやめてください!」


 アミィが驚いたような声をあげた。

 シノブが放水を止めると、数百メートル先の湖面が大きく波打っていた。水流はそこまで到達していたらしい。


「シノブ様、疲れはないんですか?」


 アミィは激しく驚いたらしい。目を見開いてシノブを見つめる彼女の頭上で狐耳は真っ直ぐに立ち、背後ではフサフサした尻尾が大きく膨らんでいる。


「うん、全然ないよ」


 一方シノブは、言葉どおり疲れを感じていなかった。確かにかなりの水を放出したのだが、それでも疲れはないし魔力が減っているようにも感じられない。


「そ、そうですか……あの放出量ならエルフの大魔術師でもあっという間に倒れると思います。

だから魔力を節約するために、水弾みたいな小さな塊にして飛ばす魔術が編み出されたのですが……」


 アミィは唖然(あぜん)とした表情のままシノブに応じる。どうも彼女は、ここまでの魔力をシノブが持っているとは思っていなかったらしい。


「いずれにしても、予想通りシノブ様の魔力量は桁違いに多いことが確認できました。百倍どころじゃなかったですけど。他の魔法を試すときも、最初は魔力を込めすぎないように注意してください」


 気を取り直したらしいアミィだが、今度は真剣な顔をしている。おそらく彼女は、不用意に魔術を使うことによる災害や騒動を恐れたのだろう。


「うん、不用意に魔力を込めると大変なことになりそうだね」


「はい、それで魔法の家では実技をやめておいたのです」


 シノブはアミィの言葉に納得した。

 確かに家の中で大洪水でも起きたら困る。実に賢明な判断と言えよう。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「それじゃ、次は弾にして飛ばす方もやってみたいんだけど」


 シノブは水弾の魔術も試してみたかったので、アミィに次をと促した。

 水球や水流は驚くべき術だが、攻撃の技ではない。この世界には魔獣という常識外れの生き物がいるのだから、対抗手段が必要である。


「はい。お教えしたとおりですが、途中までは水球の魔術と同じです。水球を出した直後に水操作の術式で球を固め、それを魔力で(はじ)き飛ばします。

水操作でなるべくしっかり水を固めてから魔力の塊をぶつけるのがコツですね。念入りに固めておかないと、飛んでいくときに水弾が崩れてバラバラになってしまいます」


 アミィの説明を受け、シノブは早速やってみることにした。アミィが幻影で湖上に幾つかの的を作り出したので、それに向かってシノブは水弾を撃ち出す。


 アドバイス通りにギュッと固めて撃ち出したので、水弾は形が崩れないが飛んでいく方向が安定しない。シノブは何度も試すが、飛ばす方向のコントロールが上手く行かず、(ほとん)どは的を外れている。


「う~ん、なかなか狙い通りに飛ばないなぁ」


「でも、水操作は凄く上手ですね。あんなに遠くまで崩れず飛んでいます!」


 確かにシノブは魔力を多めに使って固めた。

 そのためだろう、幻影をすり抜けて湖面に着弾する水弾は、アミィの言葉どおり最後まで崩れていない。そして着弾まで水弾が形を保っているため、水しぶきも高々と上がっている。


(水操作は上手くいっているけど、もうちょっと命中精度を上げたいな……)


 シノブは水球のときのように、魔力で直接コントロールしたまま遠くまで動かそうと試みる。しかし水球は少し離れると、そのまま落ちてしまう。

 おそらく膨大な魔力を込めればできるのだろう。しかし力技に頼ってばかりなのもどうかとシノブは思ってしまう。


「魔力操作で物を動かすのは、近くでしかできないんです。

近くにあるうちに勢いをつけて放り出すのは可能ですが、魔力操作で充分な力が出せるのは、普通は数mくらいの範囲です。それに、離れると正確な操作もできなくなります」


 アミィに詳しく聞いてみると、魔力操作で出せる力は距離に反比例するようだ。

 魔力は、この世界では自然に存在するものだ。したがって、他と同じように一定の法則に基づいて作用するのだろう。


「近くならしっかりと魔力で包めるのに……そうだ!」


 シノブは大砲を真似することを思いついた。彼は水弾の周りに魔力で作った円筒を発生させ砲身とし、砲尾に相当する場所で魔力の塊を水弾にぶつけて発射する。

 水弾に砲身の口径を合わせるのは精密な操作が必要だった。しかし苦労の甲斐ありコントロールが安定し、水の塊は的の中央に当たるようになった。


「シノブ様、これって地球の銃や大砲と同じやり方ですか!?」


 アミィはシノブがどんな方法で飛ばしているか、おおよそ理解したらしい。おそらく魔力で感じ取ったのだろう。


「水弾を正確に飛ばすのは熟練者でもなかなか難しいんですが、このやり方なら安定しますね!

でも、このやり方は魔力で頑丈な筒を正確に作れないとダメですね~。やり方が判っても、強力で正確な魔力操作ができない人には無理かも……」


 アミィの顔に浮かんでいるものは、驚きから好奇心へと変わる。そして彼女は、シノブの水弾発射を見ながら何やら呟き始めた。


「私も挑戦してみますね!」


 アミィは、とりあえず思案より実践を、と考えたようだ。そして彼女はシノブと同じやり方で水弾を飛ばそうとする。


「う~ん、なかなか上手くいきませんね~」


 しかし簡単には習得できないようだ。アミィは水弾の術を中断し、眉を(ひそ)める。


「砲身にネジのような筋を付けると回転で軌道が安定するよ」


「なるほど!」


 シノブはライフリングの概念も取り入れていたので、それを教える。するとアミィはシノブを真似て再び挑戦する。


「でも、幻影と水弾を同時に使うのは充分凄いと思うよ」


 二つの術を同時に操るのは凄いことだ。そう思ったシノブは、アミィに微笑みかけ賞賛を送る。


「天狐族は幻を作り出すのが得意な種族なんですよ。そのお陰で幻影を作っても魔力をあまり使わないし、特に集中しなくても維持できるんです」


 自慢の術を褒められたせいか、アミィは嬉しそうだ。狐耳もピクピク動いてご機嫌である。


「それに、こうやって同時に数多く出すのも簡単なんですよ!」


 そう言うとアミィは的の数を一気に数十個に増やした。距離や方向もランダムに配置された的の半分くらいは上下左右に動き、随分と芸が細かい。


「うわ、これは凄いね! せっかく的を増やしてもらったから色々試してみるか!」


 早速シノブは、動く的に当てる練習を始めた。動いている的に慣れたら、早撃ちや同時撃ちなど色々やってみる。

 一方アミィは精度向上のためだろう、静止している的の一つに狙いを定め、何度も撃ち出している。


 こうしてシノブ達は、湖面に向かって水弾を撃ちまくった。二人の顔は訓練ということを忘れたかのように楽しげで、陽光が満ちる水面(みなも)にも勝る輝きを放っていた。


お読みいただき、ありがとうございます。


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