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女神に誘われ異世界へ  作者: 新垣すぎ太(sugi)
第21章 神と人の架け橋 ~第一部エピローグ~
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21.06 希望の星達 後編

 『永日(えいじつ)の間』に喜びを伝える使者、神々の眷属にしてシノブの最も頼りとする導き手アミィが現れた。


「シノブ様、赤ちゃんです! シャルロット様も赤ちゃんも健康そのものです!」


 大きな感動に揺れる声で、アミィはシノブが待ち望んでいた知らせを響かせる。

 アミィの薄紫色の瞳には歓喜の涙が浮かんでいた。最上の笑顔、感極まった胸中を表すかのようにピンと立った狐耳、弾む足取りと共に揺れるフサフサとした尻尾、同じく揺らめく飾り気は少ないが愛らしいドレス。その全てが万事問題なしと語っている。


「アミィ、ありがとう!」


 シノブも喜びを爆発させ、アミィへと駆け寄り手を取った。

 アミィがシャルロットを見守ってくれたから、今日の分娩を含め陰に日向にと助けてくれたから、今の喜びがある。そして彼女の庇護を受けてきたのは、シャルロットだけではない。

 シノブもアミィに導かれ、鍛えられた。シノブの脳裏に彼女との歩みが、苦楽を共にした日々が浮かび溢れていく。


「シノブ、おめでとう!」


「良かったです!」


「アミィさん達のお陰ですわね!」


 コルネーユが、ミュリエルが、セレスティーヌが、見つめ合う青年と少女に寄っていく。

 初孫を得たコルネーユは、ミュリエルと似た緑色の瞳に熱いものを浮かべていた。大領ベルレアンの主にして『魔槍伯』の異名を持つ彼も、祖父となった感慨は別して大きかったのだろう。

 ミュリエルは父と同じ(きら)めきで頬を濡らしていた。姉と甥の無事に大きく安堵したようで、アミィの言葉を聞いたとたん彼女の目から大粒の涙が(こぼ)れていったのだ。

 セレスティーヌもミュリエルと同様に、喜びを率直に表現し顔を綻ばせている。しかし彼女は年長だからか、あるいは王女として学んだからか、アミィ達への気遣いも同時に示している。

 そして動いたのは三人だけではない。


『シノブさん、おめでとうございます!』


『アミィさん、お疲れ様でした!』


『シノブの兄貴~! 二代目誕生、アマノ王国も安泰ですね~!』


 岩竜オルムル、炎竜シュメイ、そして光翔虎のシャンジーが、弾む声音(こわね)を重ねて響かせる。

 もちろん他の子供達も同じである。岩竜ファーヴ、海竜リタン、光翔虎フェイニー、嵐竜ラーカ、炎竜フェルン、朱潜鳳ディアス、更に最も幼い玄王亀ケリス。先の三つと合わせて十の祝声がシノブ達に降り注ぐ。


「ありがとう、皆! 義父上もありがとうございます!」


 シノブは囲む者達に、顔一杯の笑みと感謝の言葉で応じる。

 このサロンに集った者達だけではなく、支えてくれた全ての者達に。そして天地の万物に。あらゆる存在に向け、ありがとうとシノブは叫ぶ。


「シノブ様、早くお二人のところに!」


「そうだね!」


 アミィに促されたシノブは我に返り、外へと駆けていく。続いてシノブを囲む者達も、彼に負けない慌ただしさで午後遅くの陽光が入るサロンを後にした。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 シャルロットは既に彼女とシノブの居室に移っていた。

 高位の女性の通例に習い、シャルロットは分娩をした産所で着替えも済ませ、更に魔術による母体への治療や回復も終えている。これらの術を施したのはアミィ達だから、シャルロットは既に懐妊前と代わらぬ体力を取り戻している。

 新生児、つまりシノブとシャルロットの子も同様だ。こちらは産湯を使ってすぐに真新しい肌着とおくるみに包まれていた。


 そのため居室に入ったシノブは遠慮せず、宙を飛ぶ勢いで妻子に駆け寄る。そしてシノブは輝く笑顔で感謝の言葉を妻に贈る。


「シャルロット、ありがとう! 本当にありがとう!」


 シノブはシャルロットの手を取り、溢れる想いを紡いでいく。

 一方のシャルロットは頬を染めて夫を見上げている。彼女は寝台にもなるソファー、揺り籠と並んだ柔らかな寝椅子に横に近い状態で収まっていた。


「大変だっただろ? (つら)かっただろ?」


 現代日本で育ったシノブは、出産とは夫が付き添い励ますものという印象があった。

 日本でのシノブは未成年で未婚だったから、地球にいたとき出産や子育てを思ったことは殆ど無い。とはいえシノブも漠然とだが、将来は自分も立ち会いなどをするかもと考えたことはある。

 これが普通の男性ならともかく、シノブは治癒魔術も得意としている。そのため半日近くも妻と離され我が子の誕生を待つしかない事態はシノブにとって非常に大きな苦しみを伴う試練となり、そこからの解放が激しく感情を爆発させたようだ。


「シノブ……」


 シノブの歳相応の姿、三ヶ月後に二十歳(はたち)を迎える若者に戻った表情、言葉、振る舞い。それらを目にしたシャルロットは、柔らかな笑みと僅かに恥じらいを含んだ声で応じた。


 居室には駆けつけた者達の他、タミィ達四人の眷属、シャルロットの母カトリーヌ、アンナやリゼットなどの侍女、ルシールやカロルを含む治癒術士、それに数人の乳母もいる。このうち実母のカトリーヌや日常的に接している者はともかく、乳母達は側付きとなって日も浅い。

 そのためシャルロットはシノブの赤裸々な感情の発露に、多少の気恥ずかしさを感じたようだ。


 シャルロットも我が子の顔を見た瞬間には大いに感動し、周囲など心から消し飛んだに違いない。しかし彼女には分娩を終えてから居室に移るまでの時間があった。

 そのため今のシャルロットは夫ほど我を忘れてはいないようだ。


「シャルロット……愛しているよ……君が、君が……」


 ついにシノブは言葉を詰まらせる。妻がくれた幸せ、共にいる喜び、それらをシノブは伝えようとしたが、とめどなく湧いてくる想いが、そして溢れる涙が言葉を奪ってしまったのだ。


「はい、私も……。シノブ、心からお慕い申しております……」


 言葉にならぬ想いも含め、シャルロットには全てが伝わったようだ。夫を見上げる彼女の深く青い瞳も濡れ、頬に輝くものが伝っていく。

 そして感極まったのだろう、シャルロットは古風な言葉で強い慕情を示した。


 稀なる武勇を示すシャルロットだが、彼女の母はメリエンヌ王国の王女であったカトリーヌだ。当然ながらシャルロットは、王族に相応しい古式ゆかしい表現を教わっている。

 シャルロットは、それらを愛する人に(ささや)く日を夢見ただろう。剣を振り槍を操る修行の日々、それが(ゆえ)に彼女の純粋な憧れは膨らんでいったに違いない。

 『ベルレアンの戦乙女』と呼ばれたシャルロット。しかし至福の表情でシノブを見つめる姿は、彼女が愛を渇望した少女だったと如実に示している。


 囲む女性達から微かな溜め息が上がる。彼女達は深い共感を(いだ)いたのだろう、愛を示した二人を瞳を潤ませ見つめている。


「……命名の儀に移ります」


 暫しの後、声を発したのはアミィであった。するとアンナを始めとする侍女やルシールが率いる治癒術士団、更に乳母達までが別室へと向かっていく。

 そのため室内はアマノ王家の四人と新生児、コルネーユとカトリーヌ、五人の眷属、そして超越種の子供達だけになる。


「アミィ、ご苦労様です」


 扉が閉まると同時に姿を現したのは、光り輝く女神アムテリアであった。命名の儀とは、彼女を迎えるための口実だったのだ。

 アムテリアは特定の者だけに真の姿を見せることが出来る。しかし彼女に手間を掛けさせまいとシノブ達は考え、アマノ家には命名の儀式があるとしたわけだ。


「さあシノブ、名前を」


 アムテリアはシノブを促す。彼女は天狐族のアミィとタミィ、そして金鵄(きんし)族のホリィ、マリィ、ミリィを両脇に従え歩んでいく。

 向かう先はアムテリア自身が作りし品『天空の揺り籠』だ。そして彼女の贈り物の中には新たな命が収まり、微かな寝息を立てている。


「はい。この子はリヒト……リヒト・ド・アマノです」


 シノブはアミィの呼び掛けからアムテリアの出現までに、多少の落ち着きを取り戻していた。合わせて十数人の退出だから、時間も多少あったのだ。

 そのため揺り籠へと向き直ったシノブは穏やかな声音(こわね)で、事前にシャルロットと相談し決めていた我が子の名を口にした。


「シノブ様、どのような意味があるのでしょう?」


「リヒトとは、この地域に伝わる言葉で光を意味します。そして私の故国の姓名表記では天野(あまの)理人(りひと)となります」


 問うたカトリーヌへの返答も含め、シノブは息子の名の由来を語っていく。

 アマノ王国は地球ならドイツに相当する地域で、人名や地名には()の地の言葉や似た語感のものが多い。そのためシノブは将来この国の王になるだろう息子にも、この地の人々と同じ名を与えたかった。

 光を意味する『Licht』ならアムテリアにも通ずるし、日本風に理人(りひと)と漢字も当てた。そしてシノブは『天野(あまの)理人(りひと)』に、更なる願いを託していた。


「……『光を(もっ)て天の(ことわり)を示す人になってほしい』という想いが篭められた名です。神々の教えを胸に天と地を繋ぐ……素晴らしい名です」


 隣の寝椅子からシャルロットが続く。彼女はミュリエルとセレスティーヌに支えられ上体を起こし、母なる女神を見つめていた。


「シノブ……シャルロット……ありがとう」


 アムテリアを取り巻く光は一段と強くなった。夕方近いアマノシュタットだが、ここだけ真昼のような明るさだ。

 そのためリヒトと命名された赤子は、まどろみから覚めたらしい。彼は目を見開きアムテリアへと顔を向ける。


「シノブに似た瞳ですね」


 アムテリアが評したように、リヒトは青灰色に近い碧眼であった。それに金髪だから全体的にシノブに似た印象である。

 もっとも母のシャルロットもプラチナブロンドに深い湖のような青い瞳の持ち主だ。したがって彼女から受け継いだ要素が出ても、リヒトの瞳や髪は似たような色合いになったかもしれない。


「あ~、あぁ~」


 リヒトは可愛らしい声を上げ始める。泣いているのではなく、どこか嬉しげな響きと共に彼は母なる女神へと手を伸ばす。


「リヒト、リヒちゃん……アムお母さんですよ」


 どういうわけだろうか、アムテリアは自分も母だと言い出した。

 この星を統べる女神で、こちらでの創世からでも千年以上を神として過ごした彼女だが、それでも『お婆さん』とは言いたくないのだろうか。そう思ったからだろう、シノブの顔に笑みが広がる。


「シャルロットが生まれたときを思い出すね」


「本当に……シノブ様、赤子のときのシャルロットに声が良く似ています」


 コルネーユとカトリーヌが、感慨深げな顔を孫に向ける。更にアミィや超越種の子供達が、同じようにリヒトを見つめる。

 そして暫しの後、オルムルがアムテリアの側に寄る。


「ええ、そうしなさい」


 アムテリアはオルムルの心を読んだらしい。彼女は光り輝く小さな竜に、大きく頷いてみせる。


──父さま、母さま、長老さま! 赤ちゃんは男の子、名はリヒトです! 光の子、リヒト・ド・アマノです!──


 オルムルは天井近くに舞い上がり、優しい光と強い思念を同時に発した。すると外で何頭もの竜や光翔虎の咆哮(ほうこう)が響き、更に空から威厳に満ちた声音(こわね)が続く。


『人の子らよ……『光の盟主』の長男が誕生した』


『名はリヒト、世に光を(もたら)す子です』


 王宮の真上にいるのは、オルムルの父母ガンドとヨルムらしい。それに寿(ことほ)ぎの言葉は二頭からだけではなかった。おそらく超越種達は王都アマノシュタットの各所に散っているのだろう、更に多くの場所から王子誕生を知らせる声が生じている。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「リヒトか……シノブ君らしいね」


「はい。この地への配慮、大神アムテリア様への感謝、そして光り輝く次代の星達への期待。素晴らしい名です」


「未来への希望を示す光……ただちに魔力無線で各国に知らせます! ガンド様達に負けてはいられませんから!」


 ここはシノブ達と同じ王宮の一角、『大宮殿』の宰相の間だ。主のベランジェ、そして内務卿シメオンと軍務卿マティアスは侍従の差し出すグラスを手に取り、乾杯をする。もっともマティアスは乾杯を済ませたら、早速仕事に取り掛かるようだ。


「皆さん、準備を急ぎましょう」


「はい、沢山の方々がいらっしゃいますから! エルリアス、君は『金剛の間』を見に行って!」


「今からなら夜会ですね! 舞踏会の準備もしなくては! ミケリーノ、『瑠璃の間』に伝達を!」


 侍従長のジェルヴェの言葉が響く中、従者や侍女達が忙しそうに駆け回っている。

 リゼットの弟レナンとアンナの弟パトリック、少年従者の筆頭と次席は続く者達に素早く指示を出していく。そして声を掛けられた軍務卿マティアスの長男エルリアスとメグレンブルク伯爵アルバーノの甥で養子のミケリーノは、弾かれたように走り出した。


「リヒト殿! 良い名じゃな!」


「うん!」


 こちらはシノブ達に近い場所、隣接する控えの間だ。先に叫んだのはカンビーニ王国の公女マリエッタ、続いたのはアフレア大陸から来たウピンデ族のエマである。

 もちろん控えの間にいるのは二人だけではない。他のシャルロット付きの護衛騎士達、そして先ほど下がった侍女や治癒術士などもいる。


「リヒト様、可愛いですよね……」


「ええ。それに何というか、普通の赤ちゃんとは違うような……。でも、お二人の赤ちゃんですから当然ですね」


 並んでソファーに腰掛けたアンナとリゼットは、生まれたばかりの王子を話題にしていた。

 半日ほども働き通しだった二人や同僚達は、やり遂げたと言わんばかりの表情で語り合い、そして抜いた朝食と昼食を補うべく飲み物や軽食などを口にしている。


「これから更に忙しくなるぞ!」


「はい、頑張ります!」


 意気軒昂な猫の獣人はアルバーノの父エンリオだ。シノブの親衛隊長である彼は、エマの兄ムビオなど部下達に檄を飛ばしている。

 リヒトは生まれたばかりだが、男性王族だから彼らの担当でもある。それに数年もすれば、エンリオの率いる一団から王子の親衛隊を分けることになるだろう。


「次はヤマト王国のタケル殿下ね……」


 情報局で呟いたのはミケリーノの姉、通信筒を手にしたソニアだ。

 ソニアは特に伝えるべき人々や魔力無線が届かない遠方に知らせる役だ。彼女の脇では情報局員達が通信筒で送る文書を作成している。


「王子様か!」


「父ちゃん、『リヒト』って昔の言葉で光なんだって!」


 街でも喜びの声が上がっている。シノブと会ったこともある、大工の棟梁ハンスは息子のカールと笑みを交わしていた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 最新式の長距離用魔力無線なら900kmの向こうまで知らせが届く。そのため王都での慶事は、一瞬にしてアマノ王国の全域に伝わった。


「男か! シノブ、でかしたな!」


「この場合はシャルロット様では?」


 バーレンベルク伯爵領ではイヴァールが大声を張り上げ、妻のティニヤが微笑みと共に応じる。

 ティニヤの手には、サドホルンでシノブが記した文を収めた守り札がある。イヴァールが我が子の(すこ)やかな成長を願って妻に贈った品だ。

 ティニヤも身篭ってから五ヶ月ほど、来年の三月には守り札は二人の子に渡る。その日を思ったのだろう、イヴァール達は優しい顔で護符を見つめている。


「……シノブ様、シャルロット様、おめでとうございます」


「こうしてはいられません、振る舞いを急がせます」


 こちらはゴドヴィング伯爵領のアルノーと夫人のアデージュだ。アルノーはテュラーク王宮で見せた冷たい表情とは別人のような優しい笑みを浮かべ、元女傭兵のアデージュも常とは違う柔らかさで応じている。

 王領や各伯爵領では出産の日に向けて祝いの準備を進めており、ゴドヴィングでも酒や料理を出そうと町村を含め用意していたのだ。


「モカリーナ、男の子だぞ! リヒト様だ!」


「王子様! お祝い、男の子向けを追加ですね!」


 こちらはメグレンブルク伯爵領のアルバーノとモカリーナ夫妻である。駆け込んできた夫の言葉に、モカリーナは手にしていた帳面を卓上に置いて慌ただしく立ち上がる。

 テュラークから戻ったアルバーノは不在中の仕事を片付けるべく領地経営に専念し、諜報は姪で養女のソニアに任せている。そのためモカリーナも最近は彼の側に留まり、魔力無線などを活用してマネッリ商会を動かしていた。


「パレード用の蒸気自動車、届きましたよね!?」


「大丈夫ですよ!」


 王領の町ゼルスザッハの魔道具工場でも笑顔が溢れる。工場の一角の蒸気機関製造部では、歓喜も顕わに問うた工員に製造班長のリュリヒ、かつて帝国軍に徴兵された青年が笑顔で応じている。


「アマノ牛をお届けしなくちゃ!」


「おう! 準備できているぞ!」


 こちらは東のビーレア村、牛飼いのオイゲンと娘のヘルガだ。

 ちなみにオイゲンの長男グスタフは見事に海軍に入ったから、既に村を離れていた。こちらでも新たな時代への挑戦が始まっているのだ。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 アマノシュタットからの通信は、南のデルフィナ共和国や西のメリエンヌ王国のフライユ伯爵領、更に北のヴォーリ連合国の東半分まで届く。そして受けた側は更に遠方にと送信するから、エウレア地方どころか南のアフレア大陸や東のアスレア地方まで短時間で伝わっていく。


「エドガール子爵、ラシュレー子爵。これで一安心ですね」


「はい。次はミュリエル様も……とはいえ少なくとも五年は先ですが」


「ミュリエル様のお子様が領主となられる日は、更に二十年以上……頑張ります」


 フライユ伯爵領の領都シェロノワでは、ミュリエルの祖母アルメルと彼女を支える二人の子爵が祝杯を挙げようとしていた。

 一人はエドガール子爵ロベール、先代ベルレアン伯爵アンリの甥だ。もう一人は先月終わりにラシュレー子爵ジェレミーとなった、ベルレアン伯爵領軍の中隊長でアンリの懐刀だった男である。

 男達は他領の者で、アルメルからすると昨年までは縁遠い存在だった。しかし今では将来生まれるミュリエルの子が伯爵となる日を夢見つつ、力を合わせてフライユを支えている。


「アリエル! シャルロット様が! リヒト様よ!」


「落ち着きなさい! ……気持ちは判るけど。ミレーユ、休校の通達を。お祝いに行く人は多いわよ」


 フライユ伯爵領のアマテール地方では、シャルロットの親友アリエルとミレーユが笑みを浮かべ合う。

 二人もティニヤやアデージュと同じで身篭っており、三月ごろの出産予定だ。そのためどちらも少々腹部の膨らみが目立ってきたが、まだ学園の理事として執務を続けている。

 しかし二人はアマノ王国の貴族だから、宮殿での祝賀会には当然出席する。そして教員や研究員にも同様の者は多く、業務の切り上げを命じるようだ。


「やったぞ! ブリジット殿、シャルロットが!」


「おめでとうございます、先代様」


 ベルレアン伯爵領の領都セリュジエールでは先代伯爵アンリが初の曾孫の誕生に狂喜し、彼の義娘であるブリジットが穏やかな笑みで応じている。

 二人の側ではコルネーユの息子達アヴニールとエスポワールが泣き出した。赤子達は大声を上げた祖父に驚いたのだ。そのためアンリは慌てて口を(つぐ)む。


「父上に新たな曾孫が誕生しましたね」


「畏れ多くはあるが……。リヒト様はシノブ様の子……まさしく神の子だからな」


「まだまだ続きますよ。シャルロット殿にも次の子が、それに数年後にはセレスティーヌも」


 メリエンヌ王家では、カトリーヌの異母兄である国王アルフォンス七世、先王エクトル六世、そして王太子テオドールが酒盃を掲げていた。

 そして他国でも同じようにリヒトの誕生を祝う光景が広がっていく。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「シノブ、シャルロット。多くの人々がリヒトを、そしてあなた達を祝っていますよ」


 アムテリアは各地の様子を把握していたようだ。自身が統べる星の人々に目を向けるくらい、どこであっても彼女には造作もないことなのだろう。


「眠ったようですね……」


 赤子を抱き上げ、アムテリアは静かに歩む。そして彼女は寝椅子で休むシャルロットにリヒトを預けた。


 シノブも寝椅子へと向き直り、身を屈め妻子へと顔を近づける。

 優しく微笑む妻のシャルロットと、穏やかな顔で目を(つむ)る息子のリヒト。シノブが夢見た幸せな光景が、そのまま形となっている。そのためだろう、シノブの胸に再び熱いものが込み上げてくる。

 かつてアムテリアは、愛すべき人達と家庭を持ち子供が生まれたら、本当の意味でこちらの人間になると語った。それはシノブの心に深く刻まれ、それ(ゆえ)リヒトが誕生する日を一日千秋の思いで待った。

 この世界が受け入れてくれた印、シャルロットの腕の中にいるリヒト。シノブは目の前の小さな命を、大きな感動と共に見つめ続けた。


 喜びに(ひた)るシノブを、多くの家族が囲む。

 先ほどと同じく、ミュリエルやセレスティーヌはシャルロットの側だ。将来を思い浮かべたのだろう、二人も常よりも大人びた母性を感じさせる顔をリヒトに向けている。

 更にコルネーユとカトリーヌが、子供達を応援するように後ろから顔を寄せている。そしてアミィ達五人の眷属は女神の脇、オルムル達は宙や床の上など思い思いの場所から眠る赤子を取り巻いている。


「これから二人は新たな道へと踏み出します。あなた達は子育てから更に多くを学ぶでしょう。それは人として、そして多くを率いる者として必要不可欠なことです。

あなた達は多くを成し遂げましたが、まだまだ知るべきことが沢山あるのです。それをリヒトと続く子供達が教えてくれるでしょう」


 満面の笑みを浮かべたアムテリアは、寄り添うシノブとシャルロットの肩を抱く。そして彼女は静かな声音(こわね)で親となった二人に語りかけていく。


「シノブ、貴方には多くの絆が出来ましたね。この星で生きる命であり導き手……私達と地上の架け橋……それが今の貴方です。シノブ、私の(いと)しい子……」


「母上……」


 この星の者に(まこと)の意味でなったというアムテリアの言葉は、シノブに大きな喜びを(もたら)した。そして新たな活力がシノブに湧き上がってくる。

 リヒトが、そして多くの子供達が笑顔になる世を目指そう。今までも人々の安寧に心を砕いてきたつもりのシノブだが、目の前の小さな命が更に意欲を高めてくれたのだ。


「それでは戻ります……シノブ、本当におめでとう」


 アムテリアはシノブに顔を寄せ(ささや)くと、一層の光を放つ。まるで彼女自身のように優しく柔らかい、そして春の穏やかな太陽のように心地よい慈愛の広がりだ。

 そのためシノブは(まぶ)しさにも関わらず、平静な気持ちのまま母なる女神を見送った。他の者達も同じだったのだろう、女神が去ったときシノブは自身が浮かべているだろう表情を周囲に見つける。

 そしてシノブは再び寝椅子に向き直り、妻子に顔を寄せようと腰を(かが)める。


「シノブ……リヒトを」


 シャルロットも僅かに体を動かした。そして彼女は腕の中で眠る我が子を夫に示す。


 入室したときのシノブは無事な妻子を目にして激情が溢れ、子を抱くどころではなかった。そして続いての命名の儀ではアムテリアが降臨した。こうなれば敬虔なシャルロットが女神の寿(ことほ)ぎを優先するのは当然だ。

 しかし祝福は終わり、シノブも落ち着きを取り戻している。そのためシャルロットは、夫が待ち望んだ我が子を(いだ)かせようと思ったのだろう。


「ああ……」


 シノブは妻からリヒトを受け取った。

 アヴニールとの触れ合いで、シノブは赤子の扱いに慣れた。そのため初めて父親になったにしては、シノブの姿は随分と堂に入っている。


「リヒト……俺の、俺達の子……。君に希望の未来を渡せるよう、頑張るよ」


 シノブは腕の中の命、かけがえの無い宝物に優しく(ささや)きかけた。

 この子の名の通り、光り輝く世界を。希望に溢れる未来を。多くの力を合わせて更なる豊かな世の中を実現し、彼や続く子供達に託そう。気が早いと思いつつも、シノブは遠い将来を夢見る。


 父の想いが伝わったのか。すやすやと眠るリヒトは、愛らしい(おもて)に僅かだが笑みらしきものを浮かべた。そして集った者達は大きな感動を顔に浮かべ、時を忘れたかのように父子を見つめる。


「……アミィ、皆を呼んでくれ。そして皆で新たな一歩を踏み出そう」


 暫しの後、シノブはアミィに声を掛ける。そしてシノブはリヒトを妻の腕の中へと戻す。

 儀式を始めると言ってから小一時間は過ぎただろう。それ(ゆえ)アンナ達が気を揉みながら待っていると、シノブは思ったのだ。


「はい、シノブ様!」


「アミィお姉さま、私も!」


 アミィとタミィは揃って駆け出す。揃いの衣装、そっくりのフサフサした尻尾を(なび)かせて扉へと向かう二人は、長時間の分娩を支え続けたと思えない軽やかな足取りである。


「何か食べ物をお願いします~」


 見送るミリィが二人の背に声を掛ける。

 ミリィの口調は笑いを誘うときと同じ緩やかなものだが、どうも冗談ではなさそうだ。もっとも彼女達は半日近くを殆ど食べないままだから、空腹に耐えかねたとしても無理からぬことである。


「魔法のカバンにもあるわね……」


「アミィ、タミィ! まずはあるものを出します!」


 マリィが魔法のカバンを漁り始めると、ホリィがアミィ達に声を掛けた。しかし持って来なくて良いと言わない辺り、ホリィも相当お腹が空いているのだろう。


「そうだ! マリィ、練習で作ったものが沢山ある! 義父上、義母上、実は私が作った料理がありまして……良ければ如何(いかが)でしょう?」


 シノブは料理の腕を磨くため、神域に行った後も何度か練習をしていた。そして魔法のカバンは内部の時間経過がないから、作り置きとして溜め込んでいたのだ。

 練習の品で悪いとは思うが、これも一種の義親孝行だろうとシノブは考えたわけである。


「それは嬉しいね!」


「是非いただきますわ」


 コルネーユとカトリーヌは笑顔で頷き、ホリィ達は料理を出して並べ始める。実はシノブ達も(ろく)に食事をしていない。そのためシノブも手伝いに加わり、全員の分を並べていく。


 これが自分と家族の日常だ。そう感じたからだろう、シノブの顔は自然と綻んだ。そして寝椅子の上で我が子リヒトを抱えたシャルロットは、まさしく慈母の表情でシノブ達を見つめていた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 数日後、十一月も初旬が終わり寒さを増した日の早朝。アマノ王国の中心『白陽宮』の最奥『小宮殿』の庭に一組の男女の姿があった。それはシノブとシャルロットだ。

 人払いをしたから、訓練場で向かい合う二人を見守るのは昇り始めた日輪のみだ。そのため辺りに響く音は、冷涼な風に乗って届く鳥のさえずりや朝を迎え動き出す王宮の息づきだけである。


「……シノブ、お願いします」


「ああ」


 シャルロットが模擬槍を構えると、シノブも手に持つ訓練用の大剣を握り直す。

 どちらも刃を落としている。しかし長さ3m少々の豪槍と、剣身だけで1mを優に超える長大な剣だ。下手をすれば防具の上からでも骨を砕き、突きが決まれば体を貫く。シノブ達は簡素な胸甲を着けてはいるが、それだけでは何とも頼りない。


 しかし二人にとって、これが日常だ。

 幼少から武を極めんと過酷な修練を積んだシャルロット、そして一年数ヶ月を同じように精進し数々の戦を経験したシノブ。訓練とはいえ二人は数え切れないくらい刃を交え、腕を磨いてきたのだ。


 立身中正の堂々たる姿のシャルロット、戦王妃(せんおうひ)の称号に相応しい威厳と美を兼ね備えた彼女の構えは当然ベルレアン流槍術だ。先祖代々受け継いだ、そして祖父の『雷槍伯』アンリと父の『魔槍伯』コルネーユが授けた誇り高き家伝の精華がここにある。

 対するシノブも融通無碍(ゆうずうむげ)の正眼である。フライユ流大剣術を更に神々の薫陶で昇華した、神授と呼ぶに相応しい玄妙かつ磐石の自然体だ。


「行きます!」


 鋭い声を発したシャルロットは、天から来たりし青い鷹よりも速い飛び込みを披露する。そして空気を裂いた彼女が目にも留まらぬ早業(はやわざ)で大槍を繰り出すと、轟音が生じ遠方の木の葉すら揺らぐ。

 ベルレアン流槍術『稲妻』、彼女の祖父と父も得意とする王道の技である。


 シャルロットの槍技は、既にアンリやコルネーユと並んだかもしれない。まだ精妙さでは僅かに改善の余地があるものの、シノブやアミィと磨いた魔力操作、そして母なる女神からの加護、更に彼女自身の飽くなき求道心が先代と現当主に劣らぬ絶技へと導いた。

 しかし相手は神とも戦ったシノブである。彼は寸毫(すんごう)たりとも動揺せず、風に舞う木の葉のような軽やかさで妻の猛撃を躱す。


「俺も……」


 微かな呟きを漏らしたシノブは左片手一本突き、『金剛破』を放つ。

 槍の『稲妻』と大剣の『金剛破』、どちらも強烈な突き技だ。先刻のシャルロットと同様に踏み降ろした足は地を砕き、大気は衝撃波で(とどろ)き揺れる。


 シノブの攻撃に、異神と戦ったときの威力は無い。

 幾らシャルロットといえども神には及ばない。そこでシノブは妻と同じ域に己の力を留めていた。とはいえシャルロットの至った高みも伝説の英雄に匹敵する。そのため二人の戦いは、極めて高位の武人が全力で身体強化をし手練を尽くしても辿(たど)り着けぬ技の応酬となっていた。


 シャルロットが『稲妻落とし』で大剣を巻き落とそうとすると、シノブは『燕切り』の応用で袈裟懸けの流れへと転ずる。しかしシャルロットは、極めれば槍すら不要と言われる『無槍水月映し』の読みで僅かに退(しりぞ)き、逆に『大跳槍』で跳ね上げようとする。

 もちろん黙って受けるシノブではない。剣を引いて突きの連撃『千手』へと移るが、相手は物心つかぬころから修行の道に入った戦乙女だ。シャルロットは愛弟子マリエッタが得意とするカンビーニ流槍術最高奥義『流星光翔槍』を用い、シノブの死角を目指して飛翔する。


 まるで神話のような想像を絶する技が続く。渦巻く魔力や放つ闘気に驚いたらしく先刻までの鳥の()()み、周囲に響くのは二人の振るう武器の奏でる歌のみだ。

 しかし戦の悲しみや嘆きがないからだろう、蒼穹(そうきゅう)へと広がる激音は妙なる調べのように美しい。二人の絆、深い愛情と信頼が、単なる技の競い合いを超えた神聖な儀式へと変えたのだろう。

 いつまでも続いてほしい。見る者がいれば、そう願ったに違いない美しい舞踏。しかし千変万化の技の披露にも終幕のときはやってくる。


「この一撃に私の全てを! 貴方と共に歩む強さを示します!」


「ならば俺は、君と肩を並べ守り抜く強さを!」


 飛び離れ叫ぶシャルロットに、シノブも同じく絶叫で応じる。

 共に進むのだから守られるだけの存在ではないと宣言したシャルロット。そして手を(たずさ)えつつも守ってみせると誓うシノブ。言葉は違うが、見つめる先は同じである。


 ベルレアン流槍術の原点にして奥義『稲妻』を、シャルロットは再び放つ。自然の半身(はんみ)から全身の力を凝縮し螺旋に変えて穂先へと送り込む、防御を捨てた無心の攻撃だ。そしてシャルロットは言葉通り全てを篭めたのだろう、槍は初撃とは桁違いの速さで突き進む。

 シノブは横一文字の『天地開闢』だ。ただしシノブは剣の軌道に僅かな角度を与え、シャルロットの槍に合わせる。日々の修練が、(くぐ)り抜けた多くの戦いが、神々の鍛えが、神技として結集し超音速の槍を迎え撃つ。


「また武器を落としてしまいましたね」


 微笑みを浮かべるシャルロットの手から、言葉通り模擬槍は離れていた。

 シャルロットの握っていた大槍は、シノブの放った斬撃で吹き飛んだ。そして間を置かず『神雷』の大上段に移ったシノブは、妻の肩口すれすれで大剣を()めている。


「あのときか……大丈夫? 今度は上手く出来たと思うけど」


 剣を収めたシノブは妻に歩み寄り、彼女の手に治癒魔術を施す。

 シノブはシャルロットの手を痛めるほどの衝撃は避け、なおかつ高度な身体強化をした彼女でも得物を保持できない絶妙な技を放ったつもりだ。それは去年の夏、まだ自身の魔力に頼った戦いしか出来なかったセリュジエールでの決闘とは違う、大きな変化だ。

 とはいえシノブは念の為、癒しの技を使う。シノブは妻の両手を自身のそれで優しく包み込み、光の技を発現させる。


「はい、もう痺れは取れました。シノブ……貴方は神具を使い、私と魔力の大きさを合わせました。ですが私は勝てなかった……」


 夫の手を握り返したシャルロットは、曇りの無い笑みと共に見つめ返す。

 シャルロットが触れたように、シノブは神具で自身の力を制限していた。先日アムテリアに神域で願った品を使い、シノブは妻と同じ条件で挑んだのだ。


「本当に腕を上げましたね。技も含め、貴方が稀なる高みに至った証拠です」


 シノブへの無限の信頼、そして共に歩める喜びがシャルロットの顔にある。これも彼女の大きな成長を示すものだろう。

 かつての決闘でシャルロットは、がむしゃらに己を貫き通そうとした。しかし今の彼女に、そのときの危うさは存在しない。


「嬉しいね。これからも、そう言ってもらえるよう精進するよ……さあ、行こう。アミィ達が待っている」


「はい!」


 シノブとシャルロットは寄り添い歩き出した。先刻までとは違う愛し合う者達に相応しい笑みを浮かべて。そのためだろう、激闘で滲んだ汗すら二人を彩る宝玉のように光り輝いている。


「シノブ様、シャルロット様! お疲れ様です!」


 戦いの終わりを魔力波動で察したのだろう、アミィが姿を現した。そして駆け寄ってきた彼女は、手にしたタオルをシノブ達に差し出した。


「アミィ、ありがとう! そしてこれからも頼むよ!」


「もちろんです、シノブ様!」


 シノブは朗らかな声で応じ、アミィへと手を伸ばす。すると愛らしい少女は嬉しげに狐耳を立て、輝かんばかりの笑みでシノブを見上げた。


 東の空では遍く照らす大いなる存在が、新たな日の始まりを皆に示すべく高さを増していく。限りない慈しみを宿した光はシノブ達を、更に地上で輝く希望の星々の全てを祝福する。

 そしてシノブは愛する妻や信頼する導き手と語らいつつ、柔らかな陽光が(いざな)う輝かしい未来へと歩んでいった。


 これで第一部の完結となります。

 今までお読みいただき、ありがとうございます。


 本当に今までありがとうございました。これだけ長いお話、お読みになるのも大変だったと思います。重ねて御礼申し上げます。



2017/04/08追記:

 第二部を次話以降として公開開始しました。


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