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女神に誘われ異世界へ  作者: 新垣すぎ太(sugi)
第4章 ドワーフの戦士
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04.03 ドワーフの怒れる戦士 後編

「結局レーザーは理解してもらえなかったね」


 シノブはイヴァールを連れ、魔法の家に戻った。そしてソファーに腰掛けた彼は、(かたわ)らのアミィに笑いかける。


「光の波動を揃えるなんて、想像したこともないと思いますよ。そもそも単一の波長の光など、普通の人には出せませんし。

しかし、よく思いつかれましたね。魔力の波動を揃えてから光に変換すると、光の波動も揃うなんて……」


 アミィは感嘆の表情で応じた。彼女はシノブが見せた技を、改めて思い出したようだ。


「うん。自分以外の魔力の波動に同調できるようになった後、色々考えてみたんだ」


 シノブは指を壁に向ける。

 指で示した壁には、ほんのりと赤い点が浮かんでいた。ただし僅かな魔力しか込めていないから、光はレーザーポインタのように壁を照らすだけで傷付けることはない。


「魔力にそれぞれの波動があるなら、単一の波長や位相に揃えたらどうなるのかな、ってね。人それぞれ独自の波動を持っているけど、普通は周囲にそのまま広がっているだろう?」


 シノブは治療院で、患者の魔力の波動に同調して体力回復を掛けた。それから彼は、この技を治癒魔術以外に応用できないかと考えていたのだ。


 魔力は通常、周囲にそのまま拡散する。

 これを魔術として使う場合、働きかける場所や方向を指定する。しかし厳密に揃えてみようという考えは、今までなかったようだ。

 もちろん実現可能な魔術師など存在しなかったというのが、一番大きな理由なのだろうが。


「どうして波動を揃えたら威力が上がるのか、伯爵達は不思議そうでしたね」


 アミィは説明された伯爵達の様子を思い出したのか、かすかに微笑んだ。


 魔術に詳しい伯爵やアリエルはシノブに何度も問い返したが結局理解できず、特殊で強力な光の魔術ということで落ち着いた。

 もっとも伯爵達の理解度だけではなく、シノブの大ざっぱな説明にも問題があったのかもしれない。


「イヴァールには説明の必要がなくて楽だったね」


 シノブは対面に座るイヴァールの姿を見る。伯爵達とは対照的に、彼が魔術について質問することはなかった。


「俺達ドワーフは魔術に縁がないからな。使えもしない魔術の説明を聞くくらいなら、戦斧でも振っているほうがマシだ」


 イヴァールは、リビングの隅に置いている自身の武器を見る。

 背中に担いでいたハンマーのようなものは、実は戦斧であった。シノブがハンマーのように思ったのは、戦斧に被せた金属製のケースだったのだ。

 もっともイヴァールによればケースを付けたまま敵を打ち倒すこともあり、戦槌としても問題なく使えるという。

 見るからに重たげな金属製で、あれで殴られたら人などペシャンコになりそうだ。


「イヴァールさん、お茶のおかわりはいかがですか?」


 イヴァールの持つグラスが空になったのを見て、アミィが魔法の水筒を手にした。この水筒は、アムテリアから授かった魔力回復のお茶が無限に出てくる魔道具だ。


「おお、感謝する……しかし、イヴァールで良いのだがな」


 イヴァールはアミィにグラスを差し出すと、微笑みを浮かべたのか顔を覆う髭を微かに揺らした。


「私はシノブ様の従者ですから。主の友人を呼び捨てにはできません」


 アミィは、魔法の水筒からお茶をグラスに注ぎながら、イヴァールに答える。

 シノブからアミィの実力を聞いたイヴァールは、彼女にも呼び捨てにするように言った。しかしアミィは自分はシノブの従者だからと断ったのだ。

 (かたく)ななイヴァールと、従者としての態度を崩さないアミィ。二人はしばらく押し問答をしていたが、どちらも己の主張を譲らないままだった。


「イヴァール様。押し付けはいけませんよ。……馬で駆け通しでお腹もすいているでしょう。簡単なものですがどうぞ」


 侍女のアンナは、持ってきた軽いつまみをイヴァールに差し出す。イヴァールが急ぎの旅をしてきたのは事実だが、この辺りで問答を終わりにしてはという意味もあるようだ。


「ありがたくいただくぞ。

……まあ、アミィの希望だから仕方がない。従者の矜持(きょうじ)というのも理解はできるしな」


 ほっそりとして小柄な狐の獣人のアミィと、がっしりとしたドワーフのイヴァール。

 外見上は全く似たところのない二人だが、頑固なところは意外と似ているかもしれない。そう思ったシノブは、綻ぶ顔を二人に悟られないように引き締める。


「ドワーフに戦士の誇りがあるように、私にはシノブ様の従者としての誇りがあるのです! 従者として守るべき一線は譲れません!」


 アミィは高らかに宣言すると胸を張る。小柄な彼女が胸を張っても微笑ましいだけだが、本人は真剣だ。


「はっ! これは一本取られたな。確かに誇りは大事(だいじ)で神聖なものだ」


 イヴァールは顔を覆う髭を(しご)きながら大笑いした。彼らドワーフは、伝統や掟と同じくらい誓いや心の拠り所を重んじるようだ。


「わかってもらえて嬉しいです!」


 イヴァールに納得してもらえたのが嬉しいのか、アミィの狐耳と尻尾も元気が良い。


 アミィは、ぶっきら棒で遠慮がない口調のイヴァールを、最初は敬遠していたようだ。

 しかしシノブと友情を誓ったイヴァールに心を開いたようで、その後は親しげに接していた。そのためだろう、魔法の家に戻ってからはシノブの友人をもてなすべく親身に世話をしている。


「……しかし、重臣達の会議とやらは時間がかかるな。ドワーフの長老会議ほど退屈で長いものはないと思っていたが、負けず劣らずではないか」


 暫しアミィの様子に笑みを浮かべていたイヴァールだが、唐突に顔を(しか)める。

 もっともイヴァールが気に掛けるのも無理はないだろう。彼は早駆けしてまでセリュジエールへと急いだのだから。


「う~ん。俺やアミィの他に、誰が行くのか揉めているのかな?」


 シノブは答えつつも、僅かに首を傾げた。

 イヴァールの要請に自身が応えると、シノブは訓練場でベルレアン伯爵に伝えている。そのとき伯爵は反対しなかったし、交易が滞っているのはベルレアン伯爵領としても重大な問題だ。

 したがってイヴァール達の国ヴォーリ連合国に出かけるのは確実で、残る議題は同行者の選出くらいだとシノブは想像していたのだ。


「……シノブ様。カトリーヌ様の件ではないかと思います」


 首を捻るシノブに、アンナは深刻そうな顔で第一夫人カトリーヌの名を出した。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 伯爵の館、右翼側の二階に存在する会議室。そこには、館の主であるベルレアン伯爵とその重臣達が集まっていた。

 内務、外務、商務、農務、財務の各長官と次官。

 領軍を代表して第三席司令官のシャルロット。彼女は次席司令官である先代伯爵がいない間、父の右腕として働いている。

 更に伯爵の横には、家令のジェルヴェもいる。家令は長官や司令官に並ぶ重職なのだ。


 ドワーフの使者イヴァールの来訪とその理由、彼にシノブが協力を申し出たこと。それらを伯爵は、順を追って語っていった。

 続いて伯爵は自領から誰を同行させるべきか諮るが、家臣達の議論は別の方向へと進んでいく。


「奥方様は御子を宿しているのです! 治癒の名手であるシノブ殿が不在の間に万一のことがあったらどうされるのですか!」


 財務長官のルカミエは、シノブがヴォーリ連合国に赴くこと自体に反対した。

 もちろん財務長官としては、交易の停滞で税収が減ると困る。しかし彼は伯爵の侍従ジェローム・ルカミエの父で、主君とその妻カトリーヌがどれだけ出産を望んでいるか知っていた。それに伯爵達がシノブを深く信頼していることも、たびたび息子から聞いている。

 そのため財務長官としての立場を曲げてまで、シノブが領都セリュジエールを離れることに反対しているのだ。


「……繰り返しますが、私としてはシノブ殿にご出馬いただくしかないと思いますが。

使者のイヴァール殿は、シノブ殿の実力に驚き友誼を結ばれたとか。イヴァール殿のご指名に反対するのはいかがなものでしょうか?」


 外務長官のダマーズが、冷静な表情で伯爵に意見を述べる。外交担当としてはヴォーリ連合国との関係悪化を避けたいのも当然だろう。


「そうですな。交易が滞るのは困ります」


「シュナル殿はどうお考えか?」


 商務長官のリシェがダマーズに賛同したからだろう、ルカミエは内務長官のシュナルに意見を求めた。商務畑と違い、内務なら主家の安定を優先すると思ったのだろう。


「わ、私は……その……」


 シュナルはなぜか口ごもり、隣に控える内務次官のシメオンを見た。どうやら彼は、主家の一族であるシメオンを扱いかねているらしい。


「シュナル長官。私に遠慮することなどありませんが」


「私は……行政担当として御子の誕生を優先すべきだと思います。

ブロイーヌ子爵が隠居して子爵位は空いたままです。領地の安定した統治には、ご一族の繁栄が不可欠かと……。

そもそもドワーフによれば、竜の活動期は一年程度らしいです。……冬になれば山越えは厳しくなる。それを考えれば実質半年少々の我慢では?」


 シメオンは彼独特の冷静な声で、上司の回答を促した。するとシュナルは部下を気にしているらしき表情のまま、自身の意見を口にした。


「クプラン殿は?」


「農務担当としてはヴォーリ連合国との交易が停滞しても特に不都合はありませんな。今年は豊作ですが、王領でも他の伯爵領でも、いくらでも売り先はありますぞ」


 外務長官ダマーズが意見を求めると、農務長官のクプランは収穫の状況に触れる。

 熊の獣人だけあってクプランの声は大きく、部屋の隅々まで響き渡った。そして力強い言葉と喜ばしい内容に、集った者の顔も大きく綻ぶ。


「出馬への賛成が二人、反対が三人ですな。では、シノブ殿には自重いただくようお願いするということで……」


 自身の望む方向で話を終わらせようと急いだらしく、財務長官ルカミエは口早に語り出す。決断を下すのはベルレアン伯爵だが、確かに反対が多けれは文句も言いにくいだろう。


「多数決で決めるべきことではないでしょう。大族長エルッキ殿の息子であるイヴァール殿を怒らせたら、一年後に竜が落ち着いても交易を断るかもしれません」


「ドワーフの族長は世襲ではないと聞いているが。イヴァール殿も、必ずしも次期族長になるわけでもあるまい」


 ダマーズはルカミエの発言を(さえぎ)るかのように、口早に自説を述べる。するとルカミエは憤慨したらしく、厳しい表情で(にら)み返す。

 気弱そうなシュナルは黙り込むし、商務長官リシェはダマーズの尻馬に乗っていただけのようで様子を窺っている。そして農務長官クプランは、農務への影響を聞かれたとき以外は黙り込んだままだ。


 ベルレアン伯爵の思惑とは異なり、家臣達はシノブがヴォーリ連合国に旅立つこと自体を延々と議論していた。

 外交の発展と内政の安定。どちらの主張も一理ある。そのためだろう、伯爵は発言をせずに黙っている。それに両脇のシャルロットとジェルヴェも、彼の気持ちを考えてか無言のままだ。

 普段は伯爵の継嗣として凛然と人を率いるシャルロットも、敬愛する父母に遠慮しているのか己の意見を述べようとしない。きつく引き締められた彼女の表情は、痛々しさを感じるくらいであった。


「イヴァール殿は優秀な方と聞いていますし、祖父のタハヴォ殿も族長でした。彼が族長になる可能性は高いのでは?」


 議論が行き詰まったせいか、内務次官のシメオンが発言する。

 長官達が40代から50代であるのに対し、次官は30歳前後かそれ以下だ。そのため問われることがないかぎり発言しない次官が多いのだが、シメオンには遠慮などないらしい。


「シメオン殿は、シノブ殿の出馬に賛成なのかね?」


 意外な味方を得たと思ったのか、外務長官ダマーズは嬉しそうだ。


「はい。もし御子の誕生を願うあまりシノブ殿を阻止したなどと知れたら、ドワーフ達との信頼関係が崩れる恐れもありますし、商人達も失望するでしょう。それにシノブ殿が毎日診察しなくとも、無事出産できるのではないでしょうか?

確かにシノブ殿は奥方様の懐妊を教えてくれましたが、その後何らかの治療をしたわけではありません。シノブ殿から教わった注意事項を守って生活していれば、問題なく出産できる可能性も高いと思います。……そもそも、御子も今回限りではないと思いますが」


 シメオンは長官達に淡々と説明する。

 語る内容は極めて扱いが難しい事柄だ。しかしシメオンは毛筋ほども表情を変えず、ただ言葉を紡ぐのみである。そのため冷静や冷徹を通り越し、非人間的な印象すら受ける。


「シメオン殿! 確かにそうだが、あまりに無神経な発言では!?」


 思わず激昂したらしいルカミエは、椅子を蹴立てて立ち上がる。そして彼は大きな声を上げ、シメオンを(にら)みつける。

 怒髪天を衝くというが、狼の獣人であるルカミエは頭上の耳をピンと立てていた。


「まさかシャルロット様やミュリエル様がいるから、御子はどうでも良いというのかね?」


 交易を優先したいはずの商務長官リシェも、不快そうな顔でシメオンを問い(ただ)す。やはり彼も、主家への敬意を欠く発言は無視できなかったようだ。


「そんなことは言っていません。

それに、シャルロット様も出向くべきでしょう。シノブ殿だけに解決されてはベルレアン伯爵領の立場がありませんし、交易再開後に問題が出るかもしれません」


「シ、シメオン殿……もしや貴方は……」


 シメオンはルカミエやリシェの視線に(ひる)むことなく説明する。すると隣で、上司のシュナルが(おび)えたような表情で呟く。


「シュナル長官。『もしや二人を亡き者にするつもりか』とでも言いたいのですか?

ご安心ください、私も同行します。主戦力はシノブ殿。シャルロット様には旗頭となってもらいますが、交渉役も必要でしょう。これでも子爵の息子ですので、あちらでも多少は役に立つかと」


 シメオンは上司をちらりと見ると、冷静な表情を崩さないまま発言した。


「その通りだ。当家の都合で大局を見誤ってはならない。

シメオン。言いにくいことを、よくぞ言ってくれた。お前の言うようにシャルロットを含め一丸となって対応すべきだ」


 伯爵がシメオンに同意したとき、大きな音と共に会議室の扉が開かれた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「ベルレアン伯爵! 妻女のために我らとの友誼を捨てるのか!?」


 大音声(だいおんじょう)を発しながら、イヴァールは大股に歩き会議室に入っていく。

 その背には再び戦斧と戦棍(メイス)が背負われている。憤然とした形相で歩み寄るイヴァールを見て、重臣達は思わずどよめいた。


「危急の時は果断な決断も下す英傑と聞いていたが、噂など当てにならぬということか。

お主の事情もわからんでもないが、こちらも交易や鉱山での採掘がかかっている。ぐずぐずしているなら俺とシノブだけで旅立つぞ!」


 伯爵に向かって歩み寄るイヴァールは、その迫力で見かけより遥かに大きく見えた。

 本来は制止すべき重臣や護衛達も、憤怒をあらわにした彼の表情に思わず後退(あとじさ)っていた。


「イヴァール殿! 我らは友誼を捨てなどしない!」


 シャルロットは思わず立ち上がり、蒼白な顔でイヴァールに叫ぶ。

 彼女の青い瞳は、伯爵に詰め寄るドワーフの戦士を射抜かんばかりに見つめている。


「イヴァール!」


 追いかけてきた二人、シノブとアミィも続いて足を踏み入れる。無断での入室だが、頭から湯気を上げんばかりの勢いのイヴァールをそのままにしておけないだろう。


「伯爵、失礼します……イヴァール、落ち着け!」


「いや、構わないよ。ちょうど結論が出たところだ」


 イヴァールを押しとどめようとするシノブに、伯爵は微かに笑いかける。その様子は、やはり高位貴族に相応しい器量の持ち主と思わせる落ち着きようだ。


「ほう! それは良いときに来た。それで、どうするのだ?」


 結論が出たと聞き、イヴァールは歩みを止める。そして彼は伯爵をギロリと(にら)み、返答を待つ。


「シノブ殿のご意思の通り動いてもらうよ。そもそも客人に対して我々の都合を強制できるものではないからね。

我が領からはシャルロットとシメオンを派遣する。シャルロットは父も認める腕、シメオンは戦いに向いていないが調整役として同行させる」


「閣下、本当によろしいのですか! 待望のお子様です。せめて一ヶ月、いや半月でも……」


 伯爵の説明を(さえぎ)るかのように、財務長官のルカミエが声を上げた。更に彼は、妊娠初期のカトリーヌがある程度安定してからでもと伯爵に翻意を促す。


「……ルカミエ殿。お気遣いは嬉しいですが、本末を取り違えてはいけませんよ」


 一同が伯爵を見つめる中、会議室に優しげな声が響いた。

 伯爵の第一夫人カトリーヌが入室してきたのだ。議論の焦点となっていた彼女は、緩やかにウェーブを描く長いプラチナブロンドを(きら)めかせながら、静かに室内へと入ってきた。


「母上……」


 カトリーヌの姿を見てシャルロットが思わず声を漏らす。

 母の登場に、思わず気持ちが緩んだのかもしれない。悲壮な雰囲気すら漂わせていた表情もどこか柔らかさを取り戻していた。


「カトリーヌ。どうしたのかね?」


「イヴァール様のお声はサロンまで聞こえましたので……。ですが、安心しました。

皆様、主人の言うとおり、シノブ様をお止めすべきではありません。お腹の子も、領地の利益を捨ててまで生まれたと知れば悲しむでしょうし、そのような者が領民の上に立つことは許されません」


 伯爵が気遣うように声を掛けると、カトリーヌは柔らかに微笑み返す。そして彼女は居並ぶ家臣達に顔を向けると、毅然とした声で宣言した。

 対する家臣達は、静やかな礼で伯爵夫人への敬意を表す。先ほどまでの激論や対立が嘘のように、揃って(こうべ)を垂れるのみである。


「シノブ様。どうかご心配なく。ブリジットさんやミュリエル達と、無事のお帰りをお待ちしております。

お帰りになるときには、この子ももう少し大きくなっていると思いますが、生まれるまでにはお帰り下さいね?」


 シノブを見つめるカトリーヌは、慈母のような微笑を浮かべていた。

 強さと優しさを兼ね備えた女性に、シノブは深い敬意を覚えた。そして彼女の希望に応えるべく、一刻も早く戻ると約束した。

 そしてシノブの決意が伝わったのだろう、囲む人々の(おもて)からは先ほどまでの憂いが消え去っていた。


お読みいただき、ありがとうございます。


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