09.02 年の始めの 中編
メリエンヌ王国の新年を祝う行事の一つとして、国王を始めとする王族達のパレードがある。年初の日に行われる、王都メリエの中央区を馬車で周るこの行事。それは、王都に住む民にとって新年を告げる風物詩であると共に、王家からの祝い酒などが振舞われる心弾む祭りでもあった。
パレードが通るのは、王都の城門へと繋がる四つの大通りや、それに順ずる通りだけである。四つの大通りは幅50mにもなる広々とした道であり、それ以外も多少幅は狭いが見劣りはしない。そして、政庁や軍の施設、貴族の館などで埋まる中央区である。
パレードの見物には多くの民衆が押しかけ、気の早いものは旧年中から場所取りを行う。だが、王国軍の兵士が立ち並んでいるため、彼らも道の両脇で行儀良くパレードの始まりを待っている。
メリエンヌ王国では、大神アムテリアからの神託を受けてこの地に平和を齎した王家への尊崇の念は現在でも健在である。それに、普段国王や王族の姿を見ることがない民衆にとっては、こういった行事は王家に接する数少ない機会であった。
普段は中央区への行き来は自由であるが、この日ばかりは区の境に検問が敷かれ、内部に入る者には厳重な検査が行われる。また、人数制限もある。
しかし、それでもパレードの様子を一目見ようとする者は多い。パレード自体は昼近い時間に行われる。だが、朝食後に出かけては間に合わない、というのが王都の民の常識でもあった。
そのため、彼らは朝食代わりのパンや温かい飲み物などを手に持ち、早々と出かける。パレードを取り仕切る官僚達も、寒い時期であるから、それらには文句をつけることはない。もちろんパレードの最中の飲食は厳禁だが、それ以前に関しては厳しい制限はなかった。
それどころか、通りの両脇にある軍の施設や官庁などの一部は解放され、長時間待機する民衆に不自由がないような配慮すらされている。パレードを成功させるための知恵なのだろうが、メリエンヌ王国の政治は、大よそ合理的で公平なものであると象徴するかのような措置であった。
「戦も勝ったし、今年は良いことがありそうだな」
「ああ、もしかすると弟が帰ってくるかも、とオヤジも喜んでいたぜ」
道の脇で待つ人族の男が、知り合いらしい狼の獣人の男に笑いかけた。
パレードを待つ者達の表情は明るい。昨年12月早々に発生した帝国の侵攻は、年内に終結していた。そのため、この男達のような会話がそこここで行われていた。おそらく、獣人の男は、弟が20年前の戦いで未帰還兵となったのだろう。40過ぎの渋みのある顔を子供のように綻ばせながら、隣の男に答えている。
「そうだな。俺は『竜の友』シノブ様が王都に来たときから、こうなるような気がしていたよ」
「ふっ! お前の知ったかぶりは今年も絶好調だな。まあ、俺も帝国の間者となった獣人族が解放された、と聞いたときには魂消たが……今まで誰も出来なかったことだからな」
獣人の男は、感慨深げな表情で人族の男に頷いていた。
「俺の知り合いに軍人がいるんだが、シノブ様は凄い魔術を使うらしいぞ。城壁だって消し去るし、逆にあっという間に城を造るそうだ。
……まるで、聖人様の再来だな」
人族の男は、知ったかぶり扱いされたのが不満なのか、更に知識を披露する。
確かにシノブは、レーザーで城壁を消したし岩壁で敵を防いで砦を強化した。これらは王都への戦勝報告で伝わっていたのだろう。そして、外面からわかりやすい事例だけに軍人達から民衆へと広まるのも早かったのではないだろうか。
「俺もそう思う。シノブ様が王国を助けてくれた。聖人様と同じように、国や俺達に平和を齎してくれたんだ」
狼の獣人は、そう言うと食い入るように通りの一方を見つめた。それは、パレードが来るであろう方角である。
「焦るな、そろそろ来るだろうよ。しかし今年は今まで以上に凄い人出だな。シノブ様を一目だけでも見たい、というお前のような者が多かったんだろうが……」
「うるさい! 信心深くなくて悪かったな! しかし本当に凄いな。こんなに混むとは思っていなかったぞ……」
獣人の男は、立錐の余地もないような周囲に微かに視線をやる。
今回のパレードは戦勝記念も兼ねるため、王族以外にベルレアン伯爵やシノブ達も加わっている。そして、慶事であるため、それらについては早くから公表されていたようである。シノブ達が年内に帰還した理由の一つがこれであるのだが、王宮側の思惑通り民意を盛り上げる一助となっているようである。
「何しろ『二週間戦争』の英雄様だからな」
「そういうことだ。こんなに早く戦いが終わるとは思っていなかったぜ」
『二週間戦争』とは、王国軍が王都メリエを出立したのが12月7日、そして戦が終わったのが12月21日であることから付けられた俗称である。王国軍での正式な呼称は『創世暦1000年ガルック平原の会戦』であるが、そんな呼び方をする者は軍でも少数である。
王都の人々には『竜の友の戦い』などと呼ぶ者もいた。だが、これがシノブの最後の戦いでもあるまい。したがって、それは定着しなかった。
また『フライユ伯爵の乱』や『クレメンの乱』などと呼んでいた者も少数ながらいた。だが、シノブがフライユ伯爵を継ぐことが本日早朝に公布されたため前者は立ち消えになり、後者は最初から評判が悪かった。遠方の伯爵の名前を覚えている王都の民は、多くはなかったからである。
そんな経緯で、短期で敵を倒したことを表す『二週間戦争』という俗称が主流となったのだ。
「……おお、ついに来たぞ!」
獣人族のほうが目も良いらしい。狼の獣人は、通りの向こうから現れた先導の軍人達を発見していた。綺麗に着飾った軍人達は、整然と隊列を組んで、ゆっくりと進んでくる。彼らは先触れであるため、まだ馬車の姿は見えない。
「そうか……シノブ様の姿が見れるといいな。パレードの馬車は窓も大きいが、屋根があるからな」
「お前の予想通り、こっち側だといいんだが……」
「大丈夫さ。それに、南大通りよりはこっちのほうが狭いんだ。だから逆側でも見えるさ」
人族の男は、通らしいところを披露する。彼の言うように東西南北の大通りとは違い、それらを繋ぐ支道であるこの道は、幅40mほどである。幅50mの大通りよりは、まだ見やすいだろう。
「そうか……おっ、近衛の騎馬も見えてきた。もうすぐだな!」
男達は、ざわめきを増した群集の中、シノブが現れるのを今や遅しと待っていた。彼らだけではない、周囲からも、同じような囁き声が聞こえてくる。
英雄の登場を待つ老若男女。そんな彼らの期待で、周囲の気温すら僅かに上がったようである。
そして彼らを祝福するかのように、創世暦1001年の初めの空は晴れ上がっている。まるで光の女神であるアムテリアの贈り物のような日差しの中、シノブ達を待つ人々の笑顔は一層輝いていた。
◆ ◆ ◆ ◆
「凄い人ですね……それに、セリュジエールよりも建物も大きいです!」
ミュリエルは、馬車の窓に張り付くようにして外を覗いている。
彼女が乗った馬車は王宮から進み出て、七伯爵の館がある上級貴族街を抜けたところだ。今日は、王宮やそれを取り巻く重臣達の住まいがある辺りは、立ち入り制限されている。そのため、それらを抜けたあたりから、熱気に満ちた人々が通りの両脇に並んでいた。
「ミュリエルさんは、王都は初めてでしたね。これからは王宮にも遊びに来てくださいね」
シノブと共に反対側に座っていた王女セレスティーヌが、ミュリエルへと振り向き笑いかけた。
「はい! ありがとうございます!」
王女の言葉に、ミュリエルも顔を向けなおし、可愛らしいお辞儀と共に言葉を返す。
セレスティーヌと共に馬車に乗ると聞いたミュリエルは、最初は緊張していたようだ。だが、彼女の親しげな様子に、少し安心したようでもある。それに、シノブの他にアミィや姉のシャルロットも一緒に乗っている。それらも彼女の心の支えとなっているのであろう。
「ミュリエル、外に向かって手を振りましょう。皆こちらを見ていますよ」
ミュリエルの正面に座るシャルロットが、妹へと囁いた。確かにパレードの最中なのに車中に顔を向けているわけにもいかないだろう。彼女だけではなく、ミュリエルの側に控えるアミィも頷いてみせ、賛同の意を表している。
「はい! でも、シノブお兄さま達、凄い人気ですね……」
再び窓外へと顔を向けたミュリエルは、周囲の歓声に驚いているようである。
「『竜の友』シノブ様、万歳!」
「『ベルレアンの戦乙女』に栄光あれ!」
沿道警備のための兵士達に制止されながらパレードを見る人々は、口々に歓呼の声を上げている。しかも、大半がシノブやシャルロットを称えるものだ。もちろん『王国の華』として名高い王女を祝福する声も上がっているが、それらよりシノブ達の名前のほうが圧倒的に多く聞こえてくる。
「当然のことですわ。帝国軍を倒し、お兄様を救ってくださったのですから。正に、救国の英雄です。
私達も、シノブ様やシャルお姉さまに並べるように頑張らなくてはいけませんね」
「はい!」
シャルロットの注意があったためか、セレスティーヌは窓の外に手を振りながら、言葉だけをミュリエルへと届ける。返事を返すミュリエルも同様だ。
ところで、セレスティーヌには、自身よりシノブやシャルロットに注目が集まっているのを気にした様子はない。もっとも、それも当然かもしれない。どうやら、先頭を行く国王や王太子が乗る馬車より、この馬車への歓呼のほうが大きいようだ。
先頭はセレスティーヌ以外の王族、そして二台目にシノブや彼女達、三台目には王太子と一緒に凱旋したベルレアン伯爵やシメオン、イヴァール達である。そして、通りに並ぶ人々は明らかに二台目の馬車、つまりこの馬車を見つめている。
「しかし、もっとフライユ伯爵を継ぐことへの反発があると思ったんだけど……王都の人だからあんまり気にならないのかな?」
シノブは、誰に言うとも無く呟いた。
自身を持ち上げるようなセレスティーヌの発言に恥ずかしさを感じたためもあるが、疑問を感じているのも事実であった。
パレードの馬車は少しずつ間を開けている。そして、それぞれの先頭には先導の騎士達以外にも、誰が乗っているかを示す大きな立て札を持つ兵士達が行進していた。
車中の貴人達の名前や称号が記された立て札を高く掲げた兵士達は、両脇の人々に見えやすいように左右に一組ずつ配されている。そのため、多少遠くとも車中に誰がいるか把握できるようになっていた。
そして、その立て札にはシノブの名前も記されている。もちろん『東方守護将軍 フライユ伯爵シノブ・ド・アマノ』という新たな名前が、である。
シノブの感覚からすると、この国に来て半年にもならない自分が大領主として歓迎されている光景は、なんとも不思議なものであった。建国550年を超えるメリエンヌ王国だから、余所者への反発は強いのでは、と思っていたのだ。
「シノブ様以外に、どなたが継がれても問題となると思いますわ。
父や侯爵達の心配も、シノブ様が継ぐことではなくて、継いでもらうにはどうすれば良いか、だったと聞いています」
セレスティーヌは、向かいに座るシノブへと微かに視線を向けて微笑んだ。
「もちろん、ミュリエルさんをお迎えになったのも良かったと思います。でも、民達が言うように聖人に比する功績をお持ちのシノブ様を除いて誰にも務まらない大任ですわ」
シノブの耳にも、彼を聖人の再来と称える声が届いている。
あまりに華々しい活躍は、王宮に集う貴族達にも衝撃だったようである。そのため、彼がフライユ伯爵となるのにあたっては、反対の声は無かったようだ。それどころか、断られる要因を極力排除した様子も見受けられた。
その一方で、王女との婚姻は未だ諦めていないとみえる。彼とその婚約者達を王女の乗る馬車に纏めたのも、その表れであろう。二番目の馬車に乗るのはシノブとその婚約者達。そう誤解させるような配置である。
現に、沿道からの歓声には、王女とシノブの結婚を期待する声も含まれていた。
国王の子供は王太子テオドールとセレスティーヌしかいない。したがって、彼女はいずれ婿を取ってこの国に王家の血を残さないといけない。そして、シノブはそんな彼女に相応しい存在と受け取られたようだ。
「まあ、反対が無いのは良いことですが……」
とはいえ、こう賛成ばかりなのもどうなのであろうか。シノブは期待で爆発しそうな熱気を感じながら、王女に応じた。
華やかなパレードの最中だが、シノブは先々のことを考えていた。
シャルロットと共に生き、そしてミュリエルを支えていく。まだ戦いの傷が残っているであろう、フライユ伯爵領で。やるべきことは無数にある。
フライユ伯爵となったとはいえ、まだ何もしていない。そしてシャルロットやミュリエルのためにも早くフライユ伯爵領に行き、今後のことを考えたい。それらの焦りにも似た思いがシノブの胸を満たしていた。
今は歓呼の声に包まれているが、期待が大きければ失策したときの反動も大きいだろう。
前伯爵クレメンの政策は、表面だけ見れば悪いものではなかった。彼は領内に新たな産業を興し、活性化させたからだ。しかし発展の陰には帝国の策謀があり、支援が打ち切られた今、消えていく可能性もある。
領地となったフライユ伯爵領を、自分はクレメンと異なる方法で豊かにしなくてはならない。その成果が出るまで、これらの人々は待ってくれるだろうか。大通りを満たす輝かんばかりの笑顔に囲まれながら、シノブは先を案じていた。
◆ ◆ ◆ ◆
パレードから戻ったシノブ達は、午餐会の開かれるアルフールの間へと移動した。大宮殿の右翼にあるこの広間では、昼食を兼ねたパーティーが開かれているのだ。
王女の成人式典で開かれた午餐会と同様に、新春を祝うこの場には、多くの貴族達が出席する。そして、パレードから戻った国王を始めとした王族は、彼らからの寿ぎを受ける。したがって、食事をする間もないほどの忙しさとなるのが通例である。
そんな王族への挨拶であるが、シノブは義父であるベルレアン伯爵に続く伯爵第二位となったため、早々に終えることができた。
ちなみに、公爵家筆頭のアシャール公爵はフライユ伯爵領に行ったままである。そのため挨拶は、その代理である嫡男アルベリクと他の二公爵そして六侯爵の順であるが、シノブ達は彼らに続く順位であった。
「疲れただろう、アミィが飲み物を持ってきてくれたよ」
シノブは、自分と一緒に国王達への挨拶を済ませたミュリエルに、優しく声をかけた。
「ミュリエル様、どうぞ」
アミィがテーブルから持ってきた冷たい飲み物をミュリエルに差し出した。リンゴの果汁を含んだジュースのようである。
シノブと共に王族への挨拶をしたミュリエルだが、彼女は少々緊張していたらしい。そして、初めての王宮に戸惑うミュリエルをアミィも注意深く見守っていたようだ。
「ありがとうございます、アミィさん」
ミュリエルは、薄めのアッシュブロンドの髪を微かに揺らし、アミィへと礼を言った。そして、彼女はグラスに入った飲み物を美味しそうに飲む。まだ、冬の寒い時期であるが、アルフールの間は人の熱気でむせ返るようである。それに、魔道具による暖房も入っているようだ。
王宮や大貴族では、暖房のために火属性の魔道具を使うことは珍しくない。火と分類されているが、熱だけを出す魔道具は、暖房のみではなく調理にも使われている。
この世界では、暖房や調理に魔道具を使えるため、薪などを使うことは少ないらしい。町や村に暮らす人々でも、両者を併用するのが一般的だし、魔道具中心の者もそれなりにいるようだ。
そして、ここは国の中枢が集う王宮である。当然、魔道具による暖房で快適な温度が保たれていた。
「……私、頑張ります」
ベルレアン伯爵や母ブリジット、そして姉のシャルロットが囲む中、ミュリエルはシノブを見上げ決然とした様子で宣言した。
「シノブお兄さまや、シャルロットお姉さまは、凄いです。あんな大勢の人々に褒め称えられて……私は、一緒の馬車にいたけど、誰も私のことなど見ていませんでした……」
緑色の瞳でシノブを見つめるミュリエルは、少し寂しそうな口調であった。だが、その表情は変わらず、ひたむきなままである。
「ミュリエル、それはまだ貴女が幼いからです。私だって、9歳の時には……」
妹が疎外感を覚えたのかと思ったのだろう、シャルロットは美しい眉を顰めながら彼女の肩に手を置いた。
「はい! シャルロットお姉さまの言うとおり、まだまだ私には時間があります。ですから、もっと頑張って、セレスティーヌ様の仰るように立派な淑女となります。
そして、いつかフライユ伯爵領の人達に認めてもらえるようになります!」
ミュリエルは、フライユ伯爵として歓迎されていたシノブに相応しくなりたい、と思ったのかもしれない。彼女は、姉の言葉に頷いてみせると、再びシノブを見上げている。
「ああ。俺だって、まだ領主として何をすれば良いかわかっていないんだ。
小さな頃からお父さん達の様子を見てきたミュリエルに、助けてもらうことも多いだろう。
だから、一緒に頑張ろう」
シノブも、ミュリエルに頷き返すと、彼女に微笑んで見せた。
「まずは、この午餐会を乗り切ろう。ほら、俺達に挨拶しにきた人達があんなにいるよ」
シノブは、彼らに近づいてきた人々へと視線を向けた。彼に釣られてミュリエルもそちらを見る。
「あっ、外国の方もいらっしゃいますね。あちらはガルゴン王国のお方ですね。それに、あのお服はカンビーニ王国の方です!」
シノブにはわからないが、ミュリエルは服装で判断がついたようである。
「ミュリエルは良くわかるね。俺には全くわからないけど」
シノブは、自分達に近づいてくる、大柄な獣人達を見つめなおした。
虎を思わせる金に黒い筋の入った髪の獣人。それに、獅子のようなふわりとした金髪の獣人。それぞれ、妻子を従えている。南方系らしく派手な色だが、どちらも似たような服装である。
「その……絵本で見ましたから」
ミュリエルは、薄い色の頬を染めて、シノブに答えた。そういえば、彼女は以前シノブの服を見て、王子様みたいだ、と喜んでいた。どうやら、外出できない代わりに、それらで知識を得たらしい。
「私にはわかりませんでしたよ。ミュリエル、貴女は早速シノブの役に立てましたね。この調子でシノブを支えていきなさい」
シャルロットは、妹を優しく褒め称える。彼女が、本当に他国の衣装を知らなかったのか。それはシノブにはわからない。もしかすると、妹を褒めたかっただけかもしれない。
だが、ミュリエルがシノブを助けた。それは事実であろう。小さな一歩だが、これが彼女のフライユ伯爵夫人としての第一歩なのかもしれない。
「そうだね。それじゃ、挨拶のときも一緒に頑張ろう」
「はい! シノブお兄さま!」
どうやら伯爵として最初の仕事は、異国の大使との歓談となりそうだ。シノブは、まだ足を運んだことのない二国に思いを馳せた。獣人達が多い両国。カンビーニ王国は、王家も獣人族であるという。そして、ソニアの叔父のように、傭兵として20年前の戦に加わった者もいる戦士の国らしい。
シノブは、新たなる国の使者達の訪れを、信頼する家族達と静かに待っていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
次回は、2015年1月25日17時の更新となります。
本作の設定資料にエウレア地方の地図を追加しました。今まで名前が出た国々を含む広域図です。
設定資料はシリーズ化しています。目次のリンクから辿っていただくようお願いします。