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女神に誘われ異世界へ  作者: 新垣すぎ太(sugi)
第7章 疑惑の伯爵
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07.13 北へ 前編

 シノブ達は、街道を北へ北へと急いでいた。


 王都メリエから北方の領都セリュジエールまで、400km弱である。この世界の軍馬は基礎身体強化により、地球の馬とは比較にならない速度で走ることができる。領都から北方100kmに位置するヴァルゲン砦まで、休憩などを含めても、4時間もあれば替え馬なしで到達可能である。

 もっとも、通常の農耕馬は地球の馬より多少能力が高いだけである。人間もそうだが、魔力を有効活用出来るか否かで大きく能力が異なるという、典型的な事例であった。


 そのため軍馬に騎乗してであれば、二日で王都から北方の領都というのは替え馬を使わなくても充分可能である。ただし、今回は馬車も含んだ一行であるため、そこまで速度を出すわけにはいかない。

 通常であれば、王都から領都まで荷馬車なら八日程度かかる。荷馬車の馬と伯爵家の馬やボドワンが大金を積んで用意した馬は全く能力が異なるとはいえ、二日で領都までというのは限界に近い速度であった。

 シノブ達が乗る伯爵家の馬車も、普段なら振動を殆ど感じない快適さであるが、今回ばかりは乗り心地を犠牲にして先を急いでいた。


「義父上、アデラールでは代官に指示をしていくのでしたね?」


 伯爵家の馬車の中で、シノブは将来の義父であるベルレアン伯爵コルネーユに今後の予定を確認した。

 彼らは、前日伯爵領の南端、カルリエの町に泊まった。カルリエは王都と領都のほぼ中間に位置するし、軍の駐屯地もあるので、大勢で押しかけても対応可能であるからだ。

 伯爵はそこでも町長ロイム・ピオシュや駐屯所の軍人アメイデ・ジロードなどにフライユ伯爵領や王都の情勢を伝え、指示をしていた。

 既に伯爵領の主要な町では、シノブの発案が元となった『アマノ式伝達法』、モールス信号のような音や光の長短による伝達方法が実験的に使用されているという。まだ軍や領政関連の伝達にしか使われていないそうだが、到着した夜には、領都セリュジエールまで発光信号による伝達が届いているはずである。

 したがって、アデラールの代官ブレソール・モデューも当然事件の概要は把握しているはずだ。だが、通り道でもあることだし、伯爵は念のため直接指示をする予定であった。


「その通りだが、どうかしたかね?」


 伯爵は、シノブが出立前に告げた予定を再確認したのを、怪訝に思ったようだ。

 彼は、緑の瞳に訝しげな光を宿しながら、シノブを見つめた。


「いえ、例の流通改革の話を聞ければと思ったもので……ですが、今回はそれどころではありませんね」


 シノブは僅かに苦笑しながら、伯爵へと返事を返す。

 行きに都市アデラールに宿泊したとき、シノブの思いつきを元に一種の物流改革案が持ち上がっていた。

 その案では、都市の郊外に商品を格納する大規模な倉庫を用意し、『アマノ式伝達法』で本店と倉庫がやり取りしながら都市の商店への補充や都市間での在庫の融通を行う。

 軍が維持する通信設備を民間にも活用させることで維持費の捻出も出来るし、商人は都市の倉庫に高い賃料を払う必要も無い。また、倉庫ができれば周辺の町村に対しての雇用創出にもなる。

 代官のモデューも乗り気であったし、シノブも自身の思い付きが発端であったため、帰路の際は是非その後の状況を聞き、問題があれば協力したいと思っていたのだ。


「そうだね。私も進捗を確認したかったが……だが、シノブの言うとおり、仕方が無い。

でも、とりあえず報告書を(まと)めておくように指示しておいた。だから、それだけでも受け取っていこう」


 ベルレアン伯爵に抜かりはないようで、既に『アマノ式伝達法』で指示済みであったようだ。本来、領都への帰還は王都の新年の行事に参加してからであった。予定より一月近く早い帰還であるが、それでも行きに通過したときから一月以上経っている。伯爵としては中間報告だけでも受け取りたかったのだろう。


「そうでしたか。それでは、私も報告書で確認することにします」


 シノブは、今頃モデューが慌ただしく報告書を作成しているかもしれない、と少々気の毒に思った。彼が、裕福な商人のような押し出しの良い体を丸めながら、大急ぎで報告書を作成している姿を思い浮かべたシノブは、迫り来る困難を一瞬忘れ、どことなく温かな気持ちになった。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「閣下、シノブ様、シャルロット様! 無事なお戻り安心しました!

さあ、僅かな間ですが、こちらでお休みください」


 シノブ達は、都市アデラールの代官ブレソール・モデューに先導され、公館の左翼二階にある大広間へと向かった。そして、用意してある昼食を取るために大テーブルを囲む。五十代の彼は、でっぷりと太った体で小走りに伯爵達を案内したせいか、額に汗を滲ませていた。

 シノブ達は、昨日と同様に、昼食兼の僅かな休憩を取ったら領都セリュジエールに向けて出発する。そのためモデューが急ぐのは当然ではあったが、中年も後半に差し掛かった彼には少々きつかったらしい。


 護衛の騎士達は公館の脇にある軍の駐屯所で休憩しているため、大広間には伯爵やシノブの従者など主だった者のみが案内されている。本来であれば、伯爵家の者と家臣のみが同席すべきであるが、伯爵の計らいでボドワン商会の主ファブリ・ボドワンや、ドワーフの武器職人トイヴァの一家も末席に着いていた。


「ありがとう。準備万端で助かるよ。それでは、食べながら簡単に情報交換しよう。

『全ての命を造りし大神アムテリア様に感謝を』」


 伯爵はモデューに(ねぎら)いの言葉を掛けると、食事の作法であるアムテリアへの祈りを捧げた。


「『全ての命を造りし大神アムテリア様に感謝を』」


 そして、伯爵に続きシノブ達もそれに唱和する。

 家族のみでの食事などはともかく、正式な場や初対面の者を含む会食などでは、簡潔にでも神々への感謝を口にするのが一般的な慣わしである。伯爵は、ボドワンやトイヴァなども同席しているため、敢えて作法通りにしたのであろう。


「それで、早速ですがフライユ伯爵領はどのような状況なのですか?」


 代官のモデューは、伯爵達に問いかける。

 『アマノ式伝達法』で伝達済みとはいえ、発光信号での簡単な文面しか伝わっていないのであろう。彼は、心配そうな表情をしている。

 それに、彼の隣に座っている夫人のポーラ・モデューも不安げな表情でシノブ達を見つめていた。狐の獣人である彼女は、頭上の狐耳を僅かに伏せて表情を曇らせていた。


「うむ。ジェルヴェ、ラシュレー、頼むよ」


 ベルレアン伯爵は、家令のジェルヴェと、軍人で先代伯爵の腹心でもあるラシュレー中隊長に、事態を説明するよう指示した。

 伯爵の命を受け、ジェルヴェが主に王都の状況について、そしてラシュレーが国境の戦況について語っていく。モデューには、アドリアンの事件やフライユ伯爵の査問あたりまでの情報は伝わっているようで、そこまでは驚く様子も無かった。だが、その後の帝国の侵攻について聞いた彼の表情は、青ざめていた。


「……現在は膠着(こうちゃく)状態となり、国境では両軍が(にら)みあいを続けているようです」


 ラシュレー中隊長は、戦況についてを締めくくる。

 シノブ達が知っている情報は、舞踏会後に開かれた会議のものと大差ない。何しろ、その翌朝には王都を出発したのだ。伯爵家の別邸を立つ直前に王宮からの使者が最新情報を伝えてきたが、前線に大きな変化は無いようである。

 前線は王都から1000km以上離れた東の国境である。軍の伝令が交代しながら基礎身体強化に長けた名馬を飛ばしても、二日はかかる。それに王都を旅立って一日経つ。現在わかっているのは、あくまで三日以上前の戦況でしかない。


「フライユからは、セリュジエールにも援軍要請の早馬が来るはずだ。王都行きほど優先されてはいないが、領都にもそろそろ第一報は届いているだろう。新たな情報が入れば、領都からも伝えるよ。

……大丈夫だ。王都からはアシャール公爵やテオドール殿下も出陣されるし、我々だって軍を(まと)め次第、出発する。

それに『竜の友』シノブが参戦してくれるんだ。それこそ竜が相手でも蹴散らしてくれるさ」


 蒼白な顔のモデュー夫妻を安心させるように、伯爵は明るい声で語りかけた。


「ええ、奴隷を使う帝国軍など許しておけません。私が一人でも多くの奴隷を解放してみせます」


 シノブも、代官夫妻に快活な笑顔と共に自信ありげに保証して見せた。

 彼は、地球にいた時はただの大学生であったし、こちらの世界に来てからも戦争に遭遇したことは無い。もちろん、魔獣や小集団相手の戦いを何度か経験した。だが、シノブは自身が軍隊相手にどこまで対応できるか、まだわからなかった。

 だが、そんなことよりもシャルロットと共に守ると誓った領地や家臣、ひいては領民を安堵させることが大切だとシノブは思ったのだ。

 戦については、伯爵やシャルロットなど専門知識を持った者がいる。それにジェルヴェやラシュレー中隊長、そして従者となったアルノーのように過去の戦に従軍した者達だって、支えてくれるだろう。そういった人々と手を(たずさ)えつつ、シノブは帝国の侵攻を阻むつもりであった。


「ありがとうございます。私もアデラールを守り、後方から支援させていただきます」


 代官のモデューは伯爵とシノブの言葉に安心したようで、少し照れたような笑顔を見せた。そして彼は額の汗を拭うような仕草をしつつ、伯爵達に頭を下げる。

 おそらく、慌てた様子を晒したのが恥ずかしかったのだろう。


「よろしく頼むよ。そうだ、例の物流改革についての報告書はできているかね?」


「はい、こちらに用意しております」


 話題を変えようとしたのか伯爵が切り出した質問に、代官モデューは、脇においていた大きな封筒を手に取り、伯爵の下へと届けた。


「さすがだね。残念ながらこの状況だ。領都への道でじっくり読ませてもらうよ。

……領都には遠征軍を編成する間、僅かだが滞在するし、何かあれば連絡する。私は従軍するが、内政官達にも見せておくから留守の間は彼らと相談して進めてほしい」


 伯爵は分厚い封筒を受け取りながら、モデューを賞賛した。

 分量からすると一晩で書き上げたものではないのだろう。元々、王都に長期滞在する予定であったから、中間報告でも送るつもりだったのかもしれないと、シノブは思った。



 ◆ ◆ ◆ ◆



 報告書を渡す代官モデューとそれを受け取る伯爵。そんな主従を横目に見ているシノブは、自席に残ったままのモデュー夫人の様子が気にかかっていた。


 代官の妻ポーラ・モデューは、(いま)だ蒼白な顔をしたままであった。

 帝国の侵攻は重大事件だが、10年から20年に一度はこういった大きな戦いがあるらしい。しかし、そのとき戦地となるのはフライユ伯爵領でも東の国境地帯と近郊の一部のみである。

 つまりベルレアン伯爵領に居る限り安全なはずで、このように激しい動揺を示さなくとも良いだろうとシノブは怪訝に思ったのだ。


「モデュー夫人。帝国は我々が押し返す。だから安心してほしい。それとも、他に何か案ずることがあるのかな?」


 シノブはモデュー夫人に、やんわりと話しかけた。

 夫人はアミィと同じ狐の獣人だが年の頃は四十代半ばらしく、随分落ち着いた雰囲気である。シノブは、ジェルヴェの妻で伯爵家の侍女長ロジーヌ・アングベールが、こんな感じだったな、と思いながら彼女の返事を待った。


「……あの、アルノー様にお尋ねしてよろしいでしょうか?」


 モデュー夫人は遠慮がちに口を開いた。彼女は非常に緊張しているのか、肩が微かに震えている。


「ああ、構わないよ。アルノー、モデュー夫人の質問に答えてくれ」


 シノブは、なんだろう、と思いながらも、すぐ近くの席に控えていた狼の獣人アルノー・ラヴランに声をかけた。

 アルノーは、アミィ、イヴァールに続いて従者の中では三番目という位置付けであり、席順もその通りであった。イヴァールが客将扱いだから、純粋な家臣としてはアミィに続いて二番目である。

 39歳のアルノーは、年相応の落ち着きもあり従士としての訓練も積んでいる。それに、伯爵家の家臣についても当然詳しい。家臣となってまだ二日目だが、シノブは彼が加わってくれたことに非常に感謝していた。


「……ポーラ殿。もしやビエリック殿のことでは?」


 アルノーには思い当たることがあるようだ。彼は何かを(こら)えるような表情で、代官の妻ポーラ・モデューに言葉をかけた。


「はい……未練とは思いますが、彼がどうなったかご存知ではないでしょうか?」


 モデュー夫人は、アルノーの問いに微かに頷きつつ、か細い声を絞り出した。彼女の濃い青の瞳は、微かに潤んでいる。その様子を見たシノブは、家族が帝国との戦争に参加していたのだろうか、と想像した。


「ビエリック殿は……従士ビエリック・ベルショー殿は、私と同じく帝国に捕まりました。

そして……死亡しました!」


 アルノーは言い淀みながらも、ポーラの顔をしっかり見つつ、従士ビエリック・ベルショーの死を彼女へと告げた。


「ああっ! やっぱりあの人は……」


 アルノーの言葉を聞いたポーラは、そのまま両手で顔を覆い泣き崩れる。

 そんな彼女を、いつの間にか側に戻っていた代官のモデューが、優しく抱きしめて慰めていた。


「ポーラ。私が側にいるよ。ビエリック殿は帝国と勇敢に戦ったんだ。そして、君を守るために散っていった。君が泣いたら、彼が悲しむよ」


 代官モデューは、伯爵やシノブと話しているときの陽気で大仰な様子とは違う、妻を(いたわ)る優しげな姿を見せていた。


「はい……あの人のことは諦め、貴方に拾っていただいたはずなのに……。すみません、アルノー様のお顔を見たら、どうしても……」


 壊れ物を扱うようにそっと抱きしめる夫の胸に、ポーラはその身を預けていた。


「いいんだよ。婚約者のことだから当然だよ。ビエリック殿は、二人で弔おう。それが私達に出来る最善のことだと思うよ」


 代官モデューは歔欷(きょき)する妻の背中を撫で(さす)りながら、慈しむような(なぐさ)めるような、様々な感情が混じった声音(こわね)で話しかけている。そして、夫の言葉を聞いたポーラは、その腕の中で微かに頷いていた。



 ◆ ◆ ◆ ◆



「ビエリック・ベルショーは、ポーラ殿の婚約者でした。従士は、ある程度の収入が確保できてから結婚します。二十代半ばの彼は、あの戦さえなければ1年か2年でポーラ殿と結婚していたでしょう」


 都市アデラールを出立したシノブ達。伯爵家の馬車の中で、ジェルヴェは悲しげな表情をみせつつシノブへとポーラ達の過去を語っていた。

 シノブやアミィ、そして若いシャルロットやシメオンは、彼の話に黙って聞き入っていた。


「ですが、ビエリックは帝国との戦いに出たまま帰ってこなかった。未帰還兵となった彼を、ポーラ殿は何年も待ちました。それこそ、婚期を逸するくらい何年も」


 ジェルヴェは同じ狐の獣人であるためか、ポーラの事情にも詳しいようだ。もしかすると、彼かその妻ロジーヌなどの親族なのかもしれない。


「それで、モデュー殿が?」


 シノブは、悄然とした様子を隠しきれないジェルヴェを気遣いつつも、その先を尋ねる。


「ええ、彼は長い間独身でして。仕事熱心が行き過ぎたのか、それともポーラ殿が気にかかったのか……。

いずれにしても、彼は10年ほど前にポーラ殿を娶りました。

モデュー殿は騎士階級。種族も違うし、しかも代官を務めるほどの重臣です。反対する声もあったとは聞いていましたが……」


 ジェルヴェは、モデュー夫妻の結婚の経緯をシノブ達に教える。

 種族間の結婚は禁忌ではないし、子供も出来る。子供はどちらかの種族となり、異種族婚による子供への弊害もない。ただし、同じ特徴を持つもの同士のほうが共感しやすいようで、多くは同族と結婚するらしい。

 そういった種族の問題に加え、騎士階級と従士階級という差もある。モデューとポーラの結婚には障害も多かったのではないかとシノブは思った。


「従軍中にビエリック殿から聞いたことがあります。モデュー殿とポーラ殿を合わせた三人は幼馴染だったようです。モデュー殿は騎士階級だが家柄に関係なく仲良くしてくれた、と言っていました。

それに、戦から戻ったら仲人をしてくれるのだ、とも。独身のモデュー殿が、と疑問に思ったので、よく覚えています」


 アルノーもジェルヴェに続き、三人の過去をシノブ達に伝えていた。彼もビエリックとの事を思い出したのか、(つら)そうな様子を隠さなかった。


「……そんな悲しい事情があったのですね」


 アミィは、同じ狐の獣人の女性が背負った過去を聞き、その薄紫色の瞳を潤ませていた。彼女と同様に、シャルロットも涙を(こら)えきれないようで、その手を顔へと当てている。


「シノブ様……私は帝国が憎い。奴隷制度が憎い。

私を長年拘束し、ビエリック殿や多くの仲間を死に追いやり、今また我が国へと侵攻する帝国に、なんとか一矢報いたい。そんな思いを(いだ)いています。

シノブ様の家臣となったのも、シノブ様達への恩返し以外に、帝国に復讐したいという気持ちがある、それは否定しません。

そんな私ですが、シノブ様の為に命を捨てる覚悟はできています。

……なにしろ、私の人生は20年前に終わったも同然だったのですから。一度は捨てた命、惜しくはありません」


 アルノーは、体の奥から搾り出すような低い声で、シノブへと自身の思いを告げていた。

 彼は、その手を白くなるまで握り締め、体を震わせている。


「憎しみを(かて)にして戦う、人々の為になるならそれでいいじゃないか。

それに、それぞれ思うところがあるのは当然だ。そして、そんな思いを一つに合わせて頑張る。それで良いと思う。

私は若くて頼りないところも多いだろう。だから、アルノーが支えてくれると嬉しいよ」


 シノブは、そんなアルノーを勇気付けるように彼に手を差し伸べた。


「ありがとうございます! ビエリック殿やポーラ殿のためにも、頑張ります!」


 アルノーは、決意のこもった眼差しでシノブを見つめ、その手を握り返す。

 シノブは、力強く握り締めるアルノーの手を、同じくらいしっかりと握り返した。過去の悲劇を悔やんでも仕方が無い。それに、ポーラは夫に支えられて新たな人生を歩んでいる。シノブは、新たな悲劇を一つでも減らしたいと思いながら、領都へ、そしてその先に続く戦地へと思いを馳せた。


 お読みいただき、ありがとうございます。

 次回は、2014年11月22日17時の更新となります。


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― 新着の感想 ―
[一言] 9割以上の人は戦争大好きよな(笑)
2020/01/11 20:43 退会済み
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