事件数日前 到着と準備
あの輪をくぐった先は森ではあったが、今さっきまで居たところとは明らかに違った。花や草が生えており、膝まで伸びていた。
もー、俺は虫が嫌いなんだって。たがらこういう所には来たくないんだよ。
エリックはここに着いた途端に燃やし尽くしてやろうかと右手から炎を出した。
「いきなり何やってるのよ」
アリスが輪をくぐりながら呆れ顏で言った。
「ここには虫が多い。駆逐しとこうぜ」
「山火事になって目立っちゃうでしょ。そんなことしてないで、早く片付けましょう」
そう言ってアリスは浮いている輪の石を1つ手に取った。すると輪は光を失い、形を崩してバラバラに落ちた。アリスは少し躊躇したが屈んで石を拾い始めた。エリックも炎を消して石を拾い始めた。
石を拾い終わってアリスが口を開いた。
「さて、どうしましょうか」
「良い場所探しだろ?」
「そこが1番難しいのよねぇ」
「ほとんど決まってないしな。こっちの地図もないし、ふざけてる」
「仕方ないことだけどね。ならまずはここから移動しましょうか。虫も嫌でしょう?」
アリスは下の草を指さした。
「ああ、気持ち悪くてしょうがない」
あからさまに嫌な顔をしてみせた。
「アリスはちょっと待ってて」
と言うと浮き上がり木を軽々と超えた。くるくる回って周りを眺めた。
「こっちに来て」
アリスはエリックに向かって手招きをした。
「はいはい。」
エリックも浮き上がってアリスの元に向かった。
「もうあそこで良くない?」
アリスはここからそう離れていないところにある街を指さした。
「近いし良いんじゃない?指定もそう無かったわけだし」
「決まりね。さっさと向かいましょう」
「やる気まんまんだな」
笑顔で言ってやる。
「私も虫が嫌いなのよ」
アリスが不快そうな顔を地面に向けた。
やっぱりみんな嫌いだよな、あいつら。好きなやつの考えが分かんねえ。
アリスは周辺を見てまわり、また手招きをした。
アリスって有能だなぁ。ついて行くだけでいいわけだし。
「この道、あの街の方に続いてそうじゃない?」
草の間にできていた林道を指さしていた。
「なら、ここから行こうぜ」
エリックはさっさと道に降りた。それに続いてアリスも降りた。
2人は道に従って街を目指した。
街について2人は驚いた。
聞いてた通りだな。さすが先の技術はすごい。
エリックは周りをしげしげと見た。
突然アリスから背中を思いっきり叩かれた。
「そんなに見てたら変人扱いされちゃうから」
「あ、ああすまん」
と言うと平静を装った。が、目は色々なところを眺めてしまっていた。
「さて、この街のことしっかり理解しなきゃね」
あー、そうだった。
「そうだな、寝る場所の確保もな」
「そうね、しっかり準備できたら決行よ」
「おう、任せな」
弱々しい声が出てしまった。
あーもう、情けない。何なんだよ、ただ炎を出すだけじゃないか。
エリックは自分に対してイラついた。
それに気付いたアリスは優しい声で言葉をかけてくれた。
「大丈夫、私も居るから頼って」
「もう頼りきってる」
笑って返した。しかし表情は少し固かった。
アリスは微笑んだあと歩き始めた。エリックはそれについて行き、2人は人混みの中に消えていく。
方言とか混じってないかな。