反撃の艦隊
中心世界ミレニアン
高層ビルや巨大な建物が立ち並ぶ未来都市は静かな風が流れていた。
昼間の戦闘でほとんどの住人は世界を離れていたからだ。
よも更けた深夜 、満月てらすミレニアンを暗雲が包み込んで行った。
汚れたものを浄化し洗い流すかのように大雨が降り出した。
次第にゴロゴロといななくような轟音がなり出すと不規則な雷鳴の光が荒れ果てた都心部を不気味に照らして行く。
その都心部中央にそびえる巨大な建物があった。
どのビルよりも高い漆黒の巨塔は雷鳴が光るたびに不気味にその表面を光らせて行く。
ジャミライアが創り出したゴルドラン攻撃司令基地だ。
その最上階の部屋、司令官専用室の寝室でハワードは静かに眠っていた。
昼間の戦闘等の疲れもあったが一番の原因を言えばそれは激変した彼の環境であろう。
仲間を裏切り、街を破壊し、悪の限りを尽くしている。
心には覚悟はあるがやはりそれでも身体や精神には多少負担はかかるようだった。
疲れた時には人は夢を見ないと言うがそれは本当だった。
夢さえ見ずに静かに吐息をたてるハワード、その顔はまるで赤子のようだった。
真っ暗なハワードの脳内、夢すら見ない状態の脳内に突然謎の情景が現れた。
広大な砂漠・・・・・・、砂嵐が吹き荒れる砂漠に佇む身あげるほど巨大な大樹があった。
その大樹のおおきさはゆうに5000mを超えるほどのもので謎の神秘さがあった。
するとその大樹から光り輝く何かが自分に向かって飛んできた。
その何かが身体を包むととあるビジョンが何度も投写される。
泣き崩れる華音・・・・・、その口は何度も何度もハインと口ずさんでいる。
胸が苦しくなった、何かわからない感情が、言葉で表現できないものが胸をえぐるような感覚だった。
たまらず飛び起きる。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・、くっそ。」
安眠妨害と言うのは無性に腹が立つものだった。
滝のように流れる汗、焦点が合わない視線、早くなる呼吸と心拍。
しばらくすると鈴の音のような一定音が部屋に鳴り響いた。
通信機のコールサインだった。
『ハワード様、ドクターをお連れしました。』
リリスであった。
「わかった、すぐ向かう。応接室に連れてきておけ。」
『かしこまりました。それでは。』
通信が切れるのを確認するとハワードは着替え始めた。
するとハワードは急に壁を思い切り殴った。
鈍い低音が鳴り響く。
着替え終わるとハワードは指を一回ならした。
30秒も立たないうちに執事姿のマックがやってきた。
「お呼びでしょうか。」
「紅茶を運んできてくれ。」
「はっ、かしこまりました。」
マックが部屋を出るとハワードも応接室に向かった。
応接室のソファーには大柄の獣人が不機嫌そうに座っていた。
「ようこそ、居心地はどうかな?」
「てめぇ、何のつもりだ。」
ソファーに座るハワード、その顔は笑っていた。
「まぁそんなに怒るな。」
マックが部屋に入ってくる。
紅茶を注ぐと二人の前に置いた。
「やはりお前の紅茶は最高だな。」
「ありがとうございます。」
しばらく紅茶を見つめるとドクターは角砂糖を四つほど入れてティーカップを手にとった。
「ズズッ、あっち。で、お前の目的はなんなんだ。」
ハワードはティーカップをを持ちながら歩き出す。
「このゴルドランには多くの資源、人材がある。それなのに各世界は愚かな民主制をとっている。これでは僕の世界のようにいつかは欲にまみれた愚民共が戦を起こし全てを台無しにするであろう。
だからこそ必要なんだ、統治者が。」
「平和を管理すると・・・。」
睨みつけるドクター。
「その通りだ。」
ハワードはまだ笑っていた。
しかし、その眼光は本気であった。
曇りのないまっすぐな眼光がドクターの視線をそらさせた。
「だからこそ協力してもらいたい。レイ!!」
レイがジャミライアの制服を持って入ってくる。
「軍医として活躍してくれ。」
ドクターは制服を羽織るとハワードに膝間づいた。
「わかった・・・・ハワード・・・・様。」
ドクターは応接室を出て医務室にレイに案内された。
部屋に残ったハワードは紅茶を飲み干すとティーカップを投げ捨てた。
「・・・・・ちっ、手間をとらせやがって。」
ハワードは部屋に戻ると鎧と服を脱ぎ捨て浴室に入った。
部屋からはシャワーの音と不気味な笑い声だけが聞こえた。
翌朝のナイトリアスの世界
カーテンの隙間からこぼれる朝日で華音は目が覚めた。
「眩しい、もう・・・朝か。」
全く眠れなかった。
眠れなかったと言うよりは泣いていて眠るのを忘れていたと言うのが正しいかもしれない。
鏡の前に座ると自分の顔の酷さに驚いた。
目の下の大きなくまと涙焼けで晴れた目。
とりあえず化粧でそれを隠すことにした。
準備をする間も心の中はハインのことでいっぱいだった。
ずっと響き続けるハインの言葉。
“君も・・・そうだったのか・・・・。”
自分がハインの心の傷をまた広げてしまったのだ。
悲しむハインをまた暗黒面に突き落としてしまったのだ。
でも、あそこでついて行ったとして本当にハインは破壊をやめたのか・・・・。
正解の無い二択問題・・・・・。
不正解しかない現実に絶望した。
昨日指定された通り大使館の作戦室に向かった。
すでに仲間たちは集まっていて話を聞いていた。
自分も話を聞こうと近づくが体がふらついてきた。
昨晩の眠気と疲れが今来たようだ。
「酷い顔・・・・大丈夫?」
メイが心配そうに顔を除く。
するとそれに気づいたのか全員が心配そうに近づいてきた。
「待ってろ、今毛布と枕持ってくるから。」
大介が部屋を出る。
すかさず城介も水を持ってきた。
華音はそれを受け取るとありがとうとつぶやいて飲み干した。
しばらくしてデモリアスの神ファントムペローネが入ってきた。
「平気か・・・。」
そう言って何かを出した。
それは華音の身体を浮かせる。
「楽にしていて良い。さあ、セインキャリバーが呼んでいる。ついて来い。」
6人はファントムペローネに案内されるまま大使館の地下へと歩いていく。
5分ほど歩いた後とある部屋に入った。
真っ暗な部屋の中、6人は焦った。
その時、明かりがつく。
そこはまるで戦艦のブリッジのような場所であった。
すると真ん中にセインキャリバーが立っていた。
「ようこそ、超多目的戦略艦ギャラクシアへ。」
超多目的戦略艦ギャラクシア
ナイトリアスを中心にジャミ復活に備えて作られた戦艦である。
「ジャミ復活に備えてって、復活のことを知ってたんですか?」
アーウィンが聴く。
「そうだ、もともとワールドミレニアムウォーズは君達の特訓のために開かれた大会だ。」
「まあある意味世界の滅亡の危機は本気らしいですね。」
二人を尻目に興奮する城介。
「かっこいい、艦長席だろ!!
俺艦長な。」
艦長席に座ってはしゃぐ城介。
「おい、壊すなよ。」
「全く子供ですね。」
呆れるアーウィンと幸三郎。
その時、警報が鳴り響いた。
「通信入れろ!!」
『セインキャリバー様、ドラゴヌアスの世界が襲われています。
艦隊数は17、ゴルザサラマンデスも確認されました。』
セインキャリバーが振り向いた。
「諸君、急で済まないが発進だ!!」
すると6人はそれぞれが近くの席についた。
遅れて入ってくる大介。
「あれ、何これ。そうだ、はいこれ毛布と枕。」
華音に手渡して席に着く大介。
「目標はドラゴヌアス世界上空!!
艦長を任せていいかな?」
セインキャリバーが城介の肩を叩く。
「え、自身ないけど・・・・全艦発進!!」
黄金色に輝く巨大戦艦がナイトリアス上空を発進する。
その数は現段階で十機ほど。
一斉にワープを始める。
「医務室で休むといい。」
そう言って華音を抱きかかえるとセインキャリバーは部屋を出た。
「ハインの事は私の責任だ・・・・、恨むなら私を恨んでくれ。」
そう言って廊下を歩くセインキャリバー。
しかし華音は首を振った。
「ハインは・・・・戻ってきます。」
「そう・・・・・だな。」
ついに始まった全面戦。
ドラゴヌアスの世界を彼らは救えるのか・・・・。
つづく




