進撃の幕
各世界の狭間にある暗黒空域。
ゴミや塵すら浮かばぬ真っ暗な空域のとある地点Xポイント。
そこに浮かぶ巨大な要塞。
ダークブレイカー帝国ジャミライアの本拠地であった。
要塞内部の暗い廊下を漆黒の鎧をまとった青年が歩く。
その横にピタリと張り付くマックとリリス。
しばらく歩いていくと大きな部屋にたどり着く。
シャンデリアとロウソクがてらす不気味な部屋の奥に巨大な石碑がある。
抽象的な形で何をかたどっているかはわからないがそれが放つオーラは数メートル離れていてもビリビリと感じられた。
その石碑に膝間づく青年。
「ハワードここに。」
『よくぞ参ったハワード。』
ハワード・・・・、本当のハインの姿。
『ハワード、どうじゃった。このゴルドランは。』
「豊かな資源と自然に覆われています。実に素晴らしい。一つを抜いて。」
『ほほぉ、言ってみろ。』
「それはどの世界も愚かな民主制とやらをとっていることです。
愚かなる愚民共に任せていてはいずれ私の世界のように地を殺す。
ここに必要なのは統治すべき支配者。」
笑い声を上げる不気味な声。
暗く静かなホールに響き渡る。
『さすがじゃ、ハワード。それでこそ攻撃指揮官。それじゃが次の作戦成功の暁にはお前に将軍の称号を与えよう。』
「ありがたきお言葉。」
すると目の前に立体映像が現れた。
そこに写っていたのはゴルドランの九つの世界。
『最初の作戦お前ならば何処から攻めよう。』
するとハワードは一点を指差した。
「資源、人材、全てにおいて優れた場所はここでしょう。」
指さされた場所は、ミレニアン。
『さすがだ。早速向かうのだ。』
ハワードは部屋を出た。
ゴルザサラマンデスに戻る前にハワードは武装開発研究室に向かった。
ゴルザサラマンデス
ハワードは戻ってくると艦長席に座った。
そして横にぴったりと張り付くマックとリリスの二人。
「休んだらどうだ?」
「私たちの仕事はあなたの補佐です。」
「何なりとご命令を。」
するとハワードはパチンと指を一回鳴らす。
それに反応するようにおくから戦闘員が何かを運んできた。
そこにあったのは二台のワイドブレイカー。
「お前達の新しいマシンだ。リリス、君にはカースメデューサ、バランス型だ。
マック、おまえにはメガグリフォン、パワータイプだ。」
すると二人はハワードの前に跪く。
「ありがたき幸せでございます。」
「私たちにはもったいない。」
「早速試して見たらどうだ。」
すると二人は自分たちの元々のマシンを放り投げる。
そしてそれに向かって試し撃ちをした。
どちらも粉々に砕けてちりとなった。
「これで全てのピースは揃った。全艦、ミレニアンに向けて全速発艦せよ。
目標は制圧だ!!」
真っ赤な戦艦を先頭に漆黒の艦隊が次々とワープを始めた。
その頃ミレニアン
部屋に漂う暗くて重い空気。
誰一人として声を上げるものはいなかった。
ハインは裏切り者。
ハインが敵。
どれもこれも信じられなかった。
隣の会議室からは神々の怒鳴り合う声が漏れる。
あとはマシンをそれぞれが整備するカチャカチャと言う規則的な金属音。
数分ほど経った後会議室から神達が戻ってきた。
「こんな時になにしてんだよ神さんがたは。」
城介が聞こえるか聞こえないかのトーンでわざとらしくつぶやく。
「残念だが、ハインの処分が決定した。皆ハインをいや・・・ハワード・ノア・シュタインを見つけ次第拘束してくれ。」
バンッ!!
机を叩く大きな音。
発生源はアーウィンだった。
「僕らが聞きたいのはそんなことじゃない。ハインを・・・何故読んだんですか。」
するとフレアドラゴンとゴルタウラスが睨みつける。
「誰に口聞いてんだガキ。」
「こちらの考えも知らずに。」
するとセインキャリバーが間に入る。
「全て私の責任だ。私が・・・・甘かった・・・・・。」
セインキャリバーを静かにネプチューンソリアがなだめる。
「あなただけのせいじゃない。」
「じゃあ話してください。」
するとツインセイバーが華音の肩をつかんだ。
「それは拙者が話そう。・・・・・、
機構達は自分たちの愛機が我々と名前や姿まで同じなことに疑問を持ったことはあるか?」
全員が頷いた。
多分、・・・いや確実に全員がこの世界に来た時に疑問に思ったであろう。
「それは運命だ。
機構達がこの世に生誕した時に全て運命付けられていた。
この先、機構達は純粋な少年時代に壮絶な体験をする。それは機構達の試練なのだ。
そうであろう。」
確かにそうだ。
華音の母は有名な大女優で同性からはいつも陰湿な嫌がらせを受けた。
アーウィンの母は彼を有無と同時に亡くなり父も彼が小学生の時に事故で死んでいる。
レイはその目のせいで親に捨てられて孤児院育ち。
メイの実家は有名な霊媒師一族で学校では君悪がられ友人はできたことがない。
幸三郎のうちはシングルマザーで兄二人は高校に行かずに幸三郎を大学にいかせるために働いている。
大介、城介兄弟はコインロッカーベイビーの双子だった。
「だがハインに下された試練はそれよりもはるかに辛かった。
裏切り続けられ利用され正義も踏みにじられた。
そんな彼にはもはや絶望しか残っていない。
「彼に残されたのは悪だけだった。だがセインキャリバーはこの世界で仲間達と触れ合うことで闇から抜け出せると信じていた。
だが・・・・・。」
ハインに植え付けられたのはジャミの強大な悪。
手遅れであった。
その時!!
警報が響き渡る。
「大変です!!艦隊が攻めてきました。」
窓を開けて空を見る。
そこには空を隠すほどの大量のサラマンデスがあった。
一斉に攻撃をしかける艦隊。
所々で爆発が起こり次々と戦闘員が降りてくる。
「いくぞみんな!!」
七人は街に向かって走り出した。
攻めてくるワイドブレイカー部隊を次々と打ち倒して行く。
しかしどんなに倒してもみるみる戦闘員は湧いてきた。
「もう弾がきれそうです!!」
「頑張るんだ!!」
しかし敵は休むことはない。
その時!!
彼らに賛同する一般市民もワイドブレイカーで応戦しだした。
彼らの協力でなんとか蹴散らすことに成功して行った。
だが、前方のビルが崩れ出した。
そこから何かがこちらに向かって飛んでくる。
「あれは・・・まさか・・・。」
空を飛んでいたのは巨大なロストナイト。
飛んできたロストナイトが彼らの目の前で着地する。
その全長は6mほどあった。
するとハッチがあく。
「どうやらがんばっているようだね、哀れな奴らだ」
「ハイン・・・・。」
飛び降りて着地するハワード。
「今の僕はハワード、支配するために選ばれた男だ。」
すると幸三郎とメイが構える。
「僕たちが戦います。」
「みんなは街の人を守って。」
「愚かだね・・・実力はわかってるのに僕に挑むなんて・・・・。」
ハワードは手を掲げた。
するとリリスとマックが現れた。
「君たちの相手はこいつらで十分だ。ニューマシンの性能を見せてやれ。」
「ははっ!!」「了解。」
リリスvsメイ、マックvs幸三郎の戦いが始まった。
つづく




