騎士の誇り
ハイン
記憶を失った17歳の少年。
曲がったことの嫌いな性格で正々堂々を重んずる。
まさに騎士道の少年である。
しかしどこか抜けた一面もある。
愛機はセインキャリバー
目が覚めた。
幼き日の思い出がなく・・・いや、全て忘れていた時。
あの時のように、ふと意識があるとそこに意識があった。
名前、記憶、出生、家、友人、全てが忘れられていた。
ただ一つ覚えているのは名前・・・と言うよりあだ名。
ハインそう呼ばれていた気がする。
そして歳、今年で17だった気がする。
頭が痛い。
強く打ち付けたのか、それともすごい遠心力で振り回されたのか、ぐるぐると回っていた。
真っ暗な部屋、どこだかわからない。
手がかりは、服の中を、ポケットの中を探す。
するとホルスターがあった。
銃?いや未成年がそんな物を・・・・・。
恐る恐るホルスターのボタンを外す。
「これは・・・・・。」
小型のロボット。
いや、ロボット型の銃と言った方がいいのか?
高速で小型の円盤型の弾丸を発射する世界的ホビー型の競技・・・・・ワイドブレイカー。
これは俺の愛機・・・・思い出した、
白騎士をモチーフにしたこいつの名は・・・・・・。
「セインキャリバー・・・・・・。」
すると部屋の明かりがついた。
西洋風の城のホールみたいだ・・・・。
すると声が聞こえる。
頭上?見上げる。
「うおっ。」
思わず声が出てしまった。
そこにいたのは巨大な騎士だった。
「我らナイトリアスの代表者は君か。」
すると騎士の体が小さくなった。
「すまない、代表会議の大きさで驚かせた。私はセインキャリバー。」
また驚いた、自分の愛機と同じ名前だなんて・・・・一体なんの偶然なんだ。
そういえばどことなく似ている。
「俺・・・・記憶がなくて。」
「わかっている私もある程度は察している。」
彼は話出した。
この現状を、この世界の危機を。
神々と精霊の住む世界「ゴルドラン」そこには9つの世界と8つの種族がいた。
騎士道を重んずるナイトリアス。
破壊を楽しむ悪魔族デモリアン。
己の強さを追求する熱種族、ガルビースト。
長けき天空一族バーディス。
大自然の守護者バグラー。
クールな水の守護者である魚人族フィンドル。
誇り高き龍の一族ドラゴヌアス。
鉄壁を誇るロボット族ゴーレムン。
全ての種族が共存する世界ミレニアンを中心に8つの世界があった。
しかし今9つの世界が崩壊しようとしていた。
それぞれの世界の代表者は世界を一つにし共通競技である「ワイドブレイカー」の大会を開き優勝した一族を全ての種族を統治する代表とすることにした。
しかしこの世界のブレイカー達は世界の命運のために躍起になり何をしでかすかわからない興奮状態の物が多かった。
「そこで別世界の種族である人間達を集めて代表者にすることにしたのだ。」
「んな勝手な。」
納得いかない。異世界の争い沙汰に巻き込まれるなんてハインはまっぴらであった。
「一応は承諾はとったんだが。何故か君だけは思い出せないみたいだな。まあいい。君にナイトリアスの代表服を与えよう。」
するとハインの服がセインキャリバーのような白い鎧とマントに包まれた。
「君の愛機は私の魂から作られた物だ。大切にしてくれ。そろそろ一回戦が始まる。」
すると二人はワープを始めた。
着いた場所は選手の控え室のような場所だった。
「まずはこの世界のバトルに慣れてもらう。」
すると白騎士は謎のインカムのようなグラスのような物を渡して来た。
「バトルスコープだ。対戦相手はデモリアンのバット。ルールはヒットポイントバトルだ。」
ヒットポイントバトル
互いにHPを3持ちお互いのアタックポイントを狙って円盤を打つと言う物だ。
アタックポイント以外の場所に当てても特典にはならない。
《出場者、バトルステージへ。》
ハインは謎の機械の上に乗った。
その機械は前方へと動き出す。
ワアアアアアアアアアアアアアアアア!!
すごい歓声だった。
まるでスタジアムは東京ドーム・・・いやそれ以上、オリンポスコロシアムのようだった。
『レディイイイイイイイスエエエエエエンドゥジェントルメエエエエエエエン!!
さぁ、遂に遅れてナイトリアスにも代表者が決まりました。
さぁ対戦相手のワイドブレイカーを見てみよう。』
スタジアムの上部や観客席の前には立体映写機のような物があった。
そこにハインの画像とセインキャリバーの映像が映った。
『ナイトリアス代表ハイン!!
愛機はセインキャリバー!!
シールドを背負うことによりそれがマガジンになる万能型だあああああ。
対戦相手はデモリアンのブレイカー、バット!!
愛機はコウモリ男型のドラキュネッサ!!
左右の翼を開くと弾丸の爪が深く締め付けられさらに強烈な締め撃ちを可能だああああ!!』
するとハインとバットの乗った機械がステージ真ん中で変形しバトルフィールドに変形!!
『3、2、1 Go ブレイク!!』
試合が始まった。
「行くぞ。」
ハインは開始と同時に5発の弾を並列に連射する。
逃げ場のない状況にバットは早速ヒット!!
「ぎゃあああああああああ!!
ハァハァ・・・・・やるな。次はこっちからだ!!」
するとバットの強烈な締め撃ちが炸裂。
間一髪よけるがその弾はセインキャリバーの足にヒット。
その時、
「だあああああああああああああ!!」
右足に激痛が走った。
そうか、この世界のバトルに慣れろ、
この世界のバトルはワイドブレイカーの受けるダメージが直接プレイヤーにも来るのか。
ひるんだその時、バットの弾がハインのアタックポイントにヒット。
次のダメージは全身を揺るがす。
「っっっっっっっっ、面白い。」
何が何だかわからない。
俺は記憶がないはずだった。
記憶がないのに、なんでこんなプレーがこんなテクニックが使える・・・・。
そうか・・・これが俺とセインキャリバーの絆なのか、どんなに頭の中の記憶が消えても、体と心はしっかり覚えている。
これだ、・・・・・・これなんだ。
そうこう考えているうちにもう一点先取。
悶えるバット。
そのバットが構えるのを見るとハインは球を一発だけ補充し残りの弾を捨てた。
「何のつもりだ?」
バットが尋ねる。
そして会場中が騒ぎ出す。
「当てろ。」
わざと相手に得点を与えたハイン。
『これはどう言うことだ?ハイン選手痛みでおかしくなったか?』
するとバットは弾を補充した。
「俺はよけない立った一発だ。これで決める。これが騎士道だ。」
「後悔するなよなああああああ。」
バットが最後の一発を撃った。
その瞬間ハインの身体がセインキャリバーが黄金に輝き出す。
「行くぜええええええ、パラディーンフォース!!」
弾が猛スピードで風を帯び始めた。
その形が光を帯びて剣のようになった。
その剣はバットのアタックポイントを撃ち抜いた。
会場が静寂に包まれた。
『試合終了です。これぞ騎士道!!ハイン選手にバット選手に盛大な拍手をおおおお!!』
「いい勝負だった。」
「こちらこそ。」
握手を交える二人。
これが伝説の始まりだ。
ゴルドランを揺るがす伝説の、英雄達の熱き戦いが!!
つづく
セインキャリバー
ナイト型ワイドブレイカー。
連射、パワーともに長けていて装備しているシールドを弾の挿入口にセットすればマガジンにもなる。
必殺技:パラディーンフォース、セイントホライゾン