後悔と優しさの道
あたしは多くの人間を殺した。
お父さんとお母さんを殺した人間を憎んだ。
だから、あたしは感情の赴くままに人間を殺した。
手にあるものは、あたしが創造した、血まみれの憎悪の剣。
あたしが正気に戻ったときにはもう、全ての人間の兵士が死体と化していた。
髪に紅い紅い血がベットリと付いていて、見るもの全てが怖くなった。
全部、あたしがやったんだ・・・
倒れている死体、血まみれの体、血の沼。
体の振るえが止まらなくなった。
あたしは人殺し、あたしは悪い子。
「フレア!」
バッと現れたのは、群青色のマントを羽織った、神様がいた。
「これは・・・全て、お前が・・・!」
神様があたしに向かって歩き出した・・・!
「こないで!!」
震える声で叫んだ。
「なぜだ?なぜ来てはいけないのだ?」
「こないで!!また・・・人、殺しちゃうよ・・・!」
そうだ、また殺してしまうに違いない。
神様はこのことに無関係だ。
無関係な神様を殺したくはない。
「大丈夫だ。私は時の神。お前が殺そうとしても、私が時を止めて、お前を助ける」
助ける。
なら、助けてよ。
この血の沼に沈んだ、あたしの心を。
ドクン
胸が苦しい。
また・・・殺してしまうのか・・・?
ドクン!
・・・
「んっ・・・!!!」
正気に戻ったとき、ビシャッと顔に何かが付いた。
自分の顔を触り、手を見ると、それは神様の血だった。
目の前にいるのは、憎悪の剣が胸に刺さった神様。
「・・・あぁ!」
ついにやってしまった・・・!
あたしは、神様を刺してしまった・・・!
あたしのせいだ。
感情のコントロールができなかった、あたしのせいだ・・・!
「な・・・?私が、その憎しみを受け止める。それでお前を助けられるなら・・・死んでもかまわない・・・!」
死ぬ?
嫌だ・・・
一人は嫌だ!!
「嫌!私はもう、人を殺したくない!!私のために死ななくていい・・!!」
殺したくない!
もう嫌だ!
もう・・・人殺しなんて・・・!
「・・・そうか」
神様はこんなあたしを抱きしめた。
神様の腕は、優しくて、強くて、暖かくて。
それはまるで、あたしの魔王の腕みたいで。
ぽろりと、透明な雫が落ちた。
ぽろり、またぽろりと落ちていく。
「・・・アァ」
「ウァァァアアアッ!!!」
泣いた。
声が嗄れるまで泣いた。
ごめんなさい。
あたしは間違ったことをした。
人を殺したって、良いことなんて一つも無いんだ。
ごめんなさい。
あたしは、心の中で何度も言った。
・・・
そして9年が経ち、あたしは人を助ける仕事を経営していた。
最初は、あたしと弟しかいなかったけど、いつの間にか仲間は増えていた。
あたしは、仲間と一緒に事件を解決していった。
一人ではできないこともみんなでやれば何とかなる。
それが仲間というものなのだ
・・・
ふと、後ろを向くと、仲間や親友やライバルや最愛の人がいるものだ。
あたしはそれで幸せだ。
もう、あの夜みたいに両親や家臣を殺されたくは無い。
これからは、仲間を、親友を、ライバルを守る。
一人ではない、みんなで守るんだ。
今、あたしは優しさに包まれている。
そして、確かに奇跡の道を進んでいる。
後悔と優しさの道~END~