第六話 着きました、新天地
久しぶりの投稿です。
新生活が一段落しましたのでこれからはちょくちょく書いていこうと思います。
どうかお付き合いください。
スカーウェンさん達と一日を掛けて森を歩き街道にたどり着いた。
その間の情報収集ももちろん忘れない。
森を出るまでにパーティーのそれぞれと話していろいろなことがわかった。
どうやらこの世界は本当に『Babel―神々の塔』に近いだけの世界のようだった。
地名や国名なんかは聞いたことがないものばかりでゲームのあらすじみたいな歴史もなかった。
だが地理や種族、モンスターなど人(エルフなどを含む)が関わっていないところはゲームと同じようだった。
聞いただけでは大陸の形、気候、地形などである。
まあ、一番近いと思わせる物は大陸のどこにいても見渡せる塔【Babel】だった。
この異世界に来てから気づいていなかったが確かめてみればゲームとまったく同じように遥か遠くにその姿が天にまでつながっていたのだ。
現実においてバベルの塔は旧約聖書に登場する巨大な塔であり、人類が無謀にも神へと近づき挑戦しようと天を目指し建てられたとされ神により目的半ばで崩された塔ではあるがここやゲームの世界では本当に天に届いている。
まるで空を支えているように聳え立つその塔をクリアすることがゲームの目的であった。
塔の中はフロアごとに分かれていて十層に一度フロアボスが現れ、それを倒すことを繰り返し塔を上っていく。
向こうの世界にいた時の最高記録は400階で僕がその記録保持者だった。
噂では1000階がゴールだとかひょっとしたらそもそもゴールが設定されてないんじゃないかとも言われたが運営側もこれらに対して塔のクリアは存在しますという回答のみで何の確証は得られなかった。
憶測が飛び交いまくり実際どうなのかはわからなかった。
「え、30階ですか?」
「はい、すごいですよねー。あの塔に辿り着くだけでもすごいのに30階までいってしまうなんて。」
弓持ちのロストクさんは違う意味で取られたようだが低すぎるだろと言うのが僕の感想だ。
確かにあの塔は周りが森と山に囲まれ、高レベルのモンスターがうようよしてはいるが森を超えることができれば少なくとも50階までは問題なくいけるはずだ。
これは塔の中についてもゲームと違うものだと認識したほうがいいのだろうか。
「あの塔に行くにはBクラス以上が条件だしBクラスと言うのも塔にたどり着かなくても生きて帰って来れる実力があるってだけで実際はAクラスのパーティーがなんとかたどり着けて、色付き(ファルブ)―Farbeがいるパーティーでないと塔の攻略もままならないけどね」
「色付き(ファルブ)?」
「ああ、ウイさんはあまり外のことを知らないでしたね。ギルドの最高戦力のことです。色付きからわかるかもしれませんがそれぞれ色を冠した称号を与えられたAクラス以上の冒険者たち。」
「今から行く交易都市ザイークはその色付きの一人“青”の称号を持つ方の拠点で、もしギルドに入るならいいところだ。“青”の方は穏やかな方で喧嘩やいざこざが絶えないギルドの中でもザイーク支部は特に落ち着いた場所だからウイさんにはちょうどいいかもしれない。」
これもゲームにはなかった設定だ。
確かにゲームではクエストや仲間探しのためにギルドというのは存在していたが色付きと言うような特別な階級はなかった。
この世界ではその色付きがギルドではかなりの権力を持ち、それぞれが一流の冒険者らしい。
僕はそのザイークにつくまで有益になりそうな話を聞いていた。
「ウイさん、見えてきました。」
カルマーレさんが示した指の先、交易都市ザイークが草原の真ん中に鎮座している。
四方に伸びる道には商人や平民が多く行き来し想像していたよりも大きな街であった。
「あれがザイーク・・・。」
「ヘドニクス王国交易都市ザイーク。この王国じゃ二番目の大きさを誇ります。」
「私たちの拠点のある場所でもあります。」
キルケネスさんとロストクさんの言葉にうんうんとうなずく。
「そういえば、ウイはこのあとどうするんだ?」
あまり話していなかったアレンダールさんの声に私は振り返り
「そうですね、とりあえず街を探索しようと思っています。」
「む、一緒にギルドへ行くものだと思っていたのだが」
「いえいえ、ここまで連れてくださっただけでもすごく感謝してます。」
「しかし、私たちはまだあなたに命の礼をしていない。」
「十分に返してもらいましたよ。」
むうと唸るスカーウェンさん。
カルマーレたちもどうやら納得していないようだ。
「しばらくはこの街にいるつもりですのでお礼はまた次の機会ということで。」
「・・・わかった。」
「つ、次は必ずちゃんとお礼しますから。」
懸命に話すカルマーレさんを微笑ましく見て
「はい、必ず。」
そう力強く頷いて僕はスカーウェンさんたちと別れることになった。