護衛
「・・・ところで、本当に彼は仕事する気があるのでしょうか?」
「・・・どうだろう?」
万年空席を見つめる俺。
ネームプレートには咲良鏡水とある。
「本気で最近は夜中の仕事しか来ないし、昼間の仕事を依頼しても姿を見せないんだよね。」
「さようで。」
一体昼間は何処で何をしているのだろうか?
「・・・って言うか、この世界って何なんですか?」
やけに人外が多い。
人間で言う人外は魔術師とか超能力者とか・・・取り敢えず一般人より多いのは確実だ。
人間じゃない文字通り人外というと・・・俺が会ったのは、吸血鬼、悪魔、神様とか?
「だって此処は戦争中だから。元から色々いたんだけど増えちまってな。」
類は友を呼ぶてきな感じなのだろう。
「・・・そうそう、護衛任務がきてるぞ。」
「護衛・・・ですか?」
「魔術医師の知り合いがさ、ちと危険なところに行くらしい。だからだと。」
「自己防衛手段はないんですか?」
「あいつはあれと契約するのに力の全部を使ったと言っていた。
だけどあいつの力はそんなモンじゃない。つまり、今の以外と契約したくないってことだろな。」
「何の話ですか?つか契約って悪魔ですか?」
「ちげぇよ。あいつは・・・って会えば分かるか。まぁ行って来い。」
「分かりましたよ。」
「最近は物騒なのが多いからなぁ、気をつけろよ?
お前と同じ加速能力者とか片翼の吸血鬼とか。わけの分からないのも沢山居るからな。」
「了解です。」
吸血鬼はともかく加速能力者なら何とかなるだろう。
「そういえば誰か借りてっていいですか?」
「弥生連れてけ。ついでに明日香と・・・香苗だな。吹雪はダメで、直夜は用事だしそんな感じで。」
「OKです。言って来ます。」
そうして4人で出かけることになった。
「で、護衛対象って誰なの?」
「狭衣尋杜という人らしい。」
「あぁ・・・あの人か。」
弥生は心当たりが会ったらしい。
「どんな人?」
「魔術医師・・・とは少し違うね。彼は契約してるのね。」
「悪魔じゃないって言ってたけど?」
「うん。神様と。」
神と契約?
「そんなことできるのか?」
「うん。物凄く力を持っている人だとね。あとは血筋とか・・・そんな感じね。」
「ふ~ん。」
ともかく凄いらしい。
「でも彼はもっと色々な神々と契約できるらしいね。でもしなかったとか。」
「?・・・何でだよ。」
「本人から聞いてね。」
つまり知らないのか?
「知ってるよ。でも・・・ちょっとプライバシーがね。」
「わかった。」
暫く歩いてから弥生が思い出したように言う。
「私の能力使えば歩かなくていいじゃん。」
全くそのとおりだ。
彼女は虚数少女と呼ばれている。
その能力は空間を切断することと接続すること。
これは多世界的にできるらしい。
だから彼女は色々な世界にいけるらしい。
「じゃぁいくよ?」
弥生は人差し指と中指を揃えて縦に切る。
そして・・・黒い裂け目ができる。
次元の裂け目ってやつか。
「入って、ちょっと歩いたら出られるから。」
「安全なのか?」
「何時も私はやってる。」
中は真っ暗だった。
すぐに出られたけど。
「って家の中じゃん!!」
「うん。お~い、尋杜!」
「やっと来ましたか。すぐ大丈夫です?」
「うん。」
弥生は親しげに話している。
「この人が?」
「誰ですか?この人は。」
正しい反応だろう。
「俺は飛島飛鳥。鋏嘩さんのところで働いている。」
「了解。自分は狭衣です。よろしく。怪我をしたらボクのところまで。」
「わかった。んで?今日は何処まで?」
「今日もまた出たらしいんで、彼。」
「誰だ?」
「加速男。何でも狙われるのは捌坂の末っ子の不良グループの連中とその場に居合わせたやつらしい。」
捌坂・・・数符の連中か。
一之瀬、二ノ城、三野宮、四月一日、五藤、六道寺、七七五分、捌坂、西玖条、十寸見。
数字のつく10家+その分家の一番本家に近い10家のことを数符と呼ぶ。
これらはこの国、いやこの世界で多大な権力を持っている。
特に一之瀬、二ノ城、三野宮、六道寺は世界を四分割しているといってもいいくらいだ。
「捌坂の末っ子ね。確かにいい噂は聞かないね。」
俺も聞いたことがある。
力にものを言わせて、欲しいものを奪い取る。
金だろうが、女だろうが。
「それって恨みとかじゃないのか?」
「そうだろうね。あいつらのせいで死んだやつらなんて沢山いるね、きっと。」
「それだけなら問題はない。この世界は弱いやつから死んでくのだから仕方ない。
だけど・・・だけどあいつは・・・あいつを見た人間まで殺しちまうんだよ。」
「・・・そうか。」
その加速野郎がどんな恨みを持っているのかなんか分からない。
ただ・・・罪のない人間だけは殺したくない。
「ま・・・これも都合のいい考えだけど。」
「行きますよ。今日も奴にやられた一般人の手当てです。」
「了解。」
弥生が開けた裂け目へと入る。
「此処か・・・。」
酷い。
暗い路地裏全てが赤く染められている。
よく見てみると一般人と思しき人間は手加減されている。
それでも・・・
「嫌なやり方だな・・・。」
これはかなりの恨みを持っている。
「いくらなんでもやりすぎじゃないのか?」
「ボクもそう思います。でも・・・彼の心の闇はそれほどだってことでしょう。」
「・・・出て来いよ。」
我慢できない、俺には・・・
「俺に姿を見せろ!!」
居るはずのない男に向かって叫ぶ。
なのに・・・
「お前に分かるはずがない・・・。」
冷たい囁きが聞こえてきた。
「お前みたいな奴に俺の苦しみは分からない・・・!」
何だ・・・この殺気は・・・!
「誰だ!?」
体の震えが止まらない。
「見逃してやろうと思ったが・・・止めだ。」
そして・・・音もなく目の前に男が立っていた・・・。
かなり文書がガタガタ。
その辺は多めに(ry