依頼
立て続けに銃弾を撃ち込む。
ちらりと後方を確認してパーティーの香苗の作戦を聞く。
瞬きの回数とハンドシグナルで実行までの時間と内容を伝えられるのだ。
俺は敵のほうに向き直り後ろ手にシグナルを送る。
内容は勿論、了解、だけだ。
「行くよ!」
香苗の声とともに銃弾を撃ち込む。
敵の弱点を正確に射抜き、尚且つ秒間の連射数によって敵はスタン状態になる。
これは俺が見つけたもので、双銃の俺独特の撃ち方だと言われた。
スタン時間は1秒半。
その間に香苗はパチン!と指を鳴らして魔法陣を構成し放つ。
ドーンと音がして、敵はポリゴンの欠片になって消える。
「大丈夫?」
「勿論。」
俺は振り返ってそういう。
南 香苗。
17で天才ハッカーと呼ばれていた少女だ。
それに比べて俺は化け物と呼ばれていた18歳だ。
まぁ、どちらも元そう呼ばれていた・・・だが。
それはもう過去の話だ。
大事なことはただ一つ。
この世界に来て一年。
まだ戦争は終らない・・・。
世界は無数に存在する。
昔流行った漫画にあった一文、
「世界はそれを知る人には一つじゃない。」
うろ覚えだがそんな感じだっただろう。
俺は幼い頃にもうその存在を知っていた。
飛島 飛鳥、それが俺の名前。
両親はそういう研究をしていたらしい。。
2025年。
突如現れたコンピューター、初世代。
前時代にあった小説のものを実際に作り上げたものだったらしい。
首に嵌めるタイプのコンピューター。
機能もその小説のものと同じだったらしい。
そし2105年。
第三世代として開発されたのが今、俺たちの中にあるVAだ。
脳内に埋め込まれたマイクロチップが自己成長をし、その結果脳を核とした量子コンピューターとなる。
なぜベガ・アルタイルなんて名前かと言うと、ネットワークを支えている量子コンピューターの名前が冬の大六角形の星々なの名前だからだそうだ。
俺たちがこの世界に来たのもこのVAというののせい。
もっと言うとこのVAでやっていたVRBと言うMMORPGのせいだ。
俺の目的は、俺が7歳の時に失踪した親父を探すこと。
高校生になった俺は手がかりを探すため親父のPCの中を漁っていたのだが、その中で見つけたのがVRBだった。
VRB、正式名称『Virtual Reappearance for Battle』。
これの意味を正確に理解できなかった俺の落ち度ってのもあるだろう。
だがこれが危険な物だって分かると思うか?
このソフトはフリーで公開されていて、俺の周りじゃ大半がやっていたゲームなわけだ。
しかも親父が開発したとそのとき分かったのだから、もしかしたらとおもってやっていたわけだ。
妹の明日香と一緒に、色々なダンジョンに潜り込んでやっていたときは良かったのだ。
香苗と出会って一緒にやり始めたあたりの良かった。
なのに・・・どうしてこうなった?
いきなり親父を名乗る人物からこのソフトの本当の意味と謎のソフトを送りつけられ、それを起動したらなんか人が来てこの世界に連れて来られた。
戦争のために創られた『戦闘用仮想再現ソフト』それがVRBだという。
その機能を解放した場合、戦争に参加しなければならないらしい。
その代わりその途中で親父に会えるかも知れないといわれ、俺はその機能を解放した。
なぜか、香苗も明日香もだ。
で、それから一年、俺は此処『企業国家・皐月』で戦争に参加している。
絶対あんたたちは驚く。
だってこの戦争は、一企業の跡取り争いだからだ。
この国で一番権力を持つ企業・二ノ城グループ。
当主は暗殺され、娘二人が跡取り争いをしているのだ。
「本当にくだらないですよね。」
「本当にそのとおりだと思う。思うのだがなぁ・・・」
今、俺たちを泊めてくれている私立軍の一つ、Cradleの一室で6人ほどでお茶会をしている。
面子は俺、香苗、明日香、リーダー、リーダーの妹、何でも屋の男、その男の未来のお嫁さんとか言っている少女、そしてお嬢様と従者。
って、全然六人じゃなかった。
まぁどうでもいいけど。
その中で俺は呆れ返っている。
「思うのだが、あんたがそれを言ってどうする。」
俺はお嬢様に向かって言う。
何を隠そうこのお嬢様こそ件の娘・二ノ城 姫。
下の娘だ。
「いいんじゃないですか?私は別に自分からしたくて戦争を起こしたわけじゃないのです。」
「止めとけ、姫。それは一緒に戦ってくれているこいつらに失礼だ。」
そう言ったのは従者・姫川真拆。
執事のくせにタメで話す人間だ。
何か、それでいいらしい。
前当主も公認の仲だったとか。
「まぁそうですね。でもこの戦争を仕組んだのはお父さんですし、お姉ちゃんのほうには取られたくないものが沢山ありますから。」
静かに紅茶を飲む姫はとても中学生には見えない。
やはり本物は本物ということか。
「それで?次の仕事は?」
俺が切り出すより早く、リーダー・鋏嘩が言う。
「今回は、面倒ですよ?」
カップを持ち上げて裏側を覗いてみたりと若干遊びながら答える姫。
「へぇ~・・・姫ちゃんが面倒って言うってことは相当なんだね。」
そういったのはリーダーの妹の弥生。
何でも弥生と姫は同じ中学校のクラスメイトらしい。
「いや、俺たちまで呼ばれちゃってるしなぁ、亜弥?」
「そうだね、お兄ちゃん。」
何でも屋の男、夕霧直夜と自称その男の未来のお嫁さん、宇奈月亜弥。
ついでの亜弥も中学生、姫たちとクラスメイトである。
未来のお嫁さんって・・・どうしてこうなったのか・・・。
「今回の依頼は一冊の本です。」
「・・・本?」
「はい。名を悪魔の書と言います。」
「居縄、検索。」
「はい。」
いつの間にか直夜の後ろに立っていた女の人が答える。
確かあの人は直夜の店の地下の図書館で司書をやってる居縄夢幻さんだ。
居縄さんは何処からともなく一冊の本を出す。
きっとそういう能力なのだろう。
「こちらです」
「絶対に読まないでくださいね?これ以上面倒は御免です。」
「・・・禁書か。ありがとう、居縄。」
「いえ。」
そして一瞬目を離した隙に消えた。
いや、気配を消しただけか。
それにしても禁書か・・・。
「しかし、禁書ってことは厳重管理されてるんだろ?」
「はい。しかし今回、盗まれてその上売られてしまいました。」
いや、そっちの事件のほうじゃなくて、何で居縄さんが持ってたのかって事だよ。
「居縄は本の管理もできるS級ライセンス持ちの司書なんだ。それにあれは複製だ。」
まぁ危険だけど、複製でもと付け加える直夜。
さようですか。
「で、悪魔の書って何なんなんだ?」
「魔導書・・・ってとこかなぁ。」
そういったのは香苗だった。
「知ってるのか?」
「まぁね。何でも悪魔召喚の為の本だとか。」
確かに怖いなぁ、悪魔とか。
「で、悪用されると?」
「いえ、多分ないでしょう。」
「ほう?その根拠は?」
「それを買った人間は唯のランクIです。」
ランクIとはIncompetentのIで無能力者を指す。
「魔術師でもなく能力者でもない。ましてや人外でもない・・・か。」
「でも何故か召喚に成功しちゃってるらしいんですよねぇ・・・」
姫は指でカップの淵をなぞりながらいう。
「特異点?」
「そのようです。」
魔導書一冊につき一人は居ると言われる特異点。
読めさえすれば開くだけで魔導書を発動できると言う人のことだ。
「悪魔の書の特異点ねぇ。で、どうすればいいの?」
「その人をこちらの陣営に引き込んでください。」
「勿論向こうも狙ってるよね?」
弥生の言うことはそのとおりだと思う。
「えぇ、まぁ。でもお願いします。盗まれた本は大体こちらの陣営のものなので。向こうには渡したくない。」
「でもなんで俺たちに?無限幸福とかに頼めばいいだろ?」
「いえ、彼はあなたたちの旧友です。えっと確か・・・」
「吹雪。九十九吹雪だ。」
姫川が横から言う。
つかこいつほとんど喋らないよな・・・。
「九十九・・・あぁ、あいつか。納得だ。」
「納得?」
「あいつ、ランクIのくせにありえない気の流れをしていたからなぁ・・・。」
でもまさか悪魔の書とは、と呟く鋏嘩。
「だが理解した。行ってこよう。」
鋏嘩と直夜が立ち上がる。
「俺もか?」
「いい実習になるかも知れんしな。」
「分かった。」
「あとは・・・鏡水か。」
咲良鏡水、最近来てたっけ?
夜中に会った覚えしかない。
鋏嘩は電話をかけてすぐに出るぞと言った。
「香苗は?」
「私は今日食事番だから。」
「明日香は?」
「私は行く。」
「そうか」
かなり大所帯になりそうだ・・・。
がんばってみましたがどうも上手くかけない弥生です。
次こそはもっと面白く書けたらいいなと想います。