まおうは、こいにおちた!
勇者らしくない女勇者に魔王がほれたら面白いだろうなと思って書いてみた。
駄文だけど書いてて結構楽しかったです。よろしかったらどぞ。
side:勇者
代々続く勇者と魔王の戦いに、最近変化が現れ出した。大抵事の発端は大国の姫様が魔王にさらわれる事なのだが、いい加減誘拐対策をしても良いと勇者クラウンは思っている。
大体おかしいんだよ。前の姫様が魔王に連れ去られたんだったら、もう少し警戒しても良いと思うんだけど、警備レベルは昔から全く変わらないらしい。正直それ聞いた時はあまりのバカさ加減に呆れてものが言えなかったよ。
それと王様の勇者の選び方にも驚きだったよ。家系じゃなかったんだね勇者って。てか各地の闘技場で一番強くて見た目が良い奴を選んで、そんで試験みたいなのを受けさせて学力を図って、最後は王様の直感で選ばれる。バカだと思う。
しかも、拒否権は全くないから私にとってかなり迷惑だ。ただ闘技場で荒稼ぎしてたらあっという間に勇者様だよ。乾いた笑いしか出てこない。
仲間は誰でも良いけど6人までって決まってるし、勇者に選ばれたら適当に金を渡して、その後は一切関わろうとしないし、その癖無事に魔王を倒して姫を連れ帰ったら姫様の婚約者にしてやると言われた。嬉しくねーよそんなもん。これでも私女だし、ソッチの趣味ないし。見た目で選ぶなってーの。
でも断れないから、仕方ないからここ――魔王城までやってきてしまった。仲間は皆気心の知れた傭兵仲間三人だけ。金は払ってるけど。
「どうする?ここで帰ってもらっても良いよ?って言うか、魔王戦になってから逃げられるとなんかヤ
だし?こんなところで死ぬのは僕一人で十分だし。でもまあ、死んでやる気は全くないけどね」
そう言うと、案の定三人とも帰っていった。薄情なのではない。これは勝ち目のない闘いには手を出そうとしない傭兵の生き方だからだ。むしろ私の方が異常なんだ。
「俺達は逃げるが、お前はやはり行くのか?ここで死んだ事にして逃げる事も可能だろ」
僕達の中で一番年上の傭兵の先輩が心配して言ってくれたけど今の私には無理だ。
「無駄ですよ先輩。私は選ばれた時からこの空想みたいで呪いのような使命から逃れる術は無いんです。それに、私が傭兵になった経緯…先輩は知ってるでしょ?」
「ああ、お前はただ強い奴と戦いたいんだよな。…だったら止めても無駄だな。精々頑張れや」
「言われるまでも無い」
他の二人は不思議そうな顔をして僕達のやり取りを見ていたけど、私と先輩は挨拶をした後、私は一人で魔王城へと足を踏み出した。この先私を待っているのは、生きて理不尽な目に会うか死ぬかの二択しかない。まあ、死ぬ気はさらさらないし姫の婚約者なんてまっぴらごめんだ。
SAID魔王
「私を早く解放しなさい!!」
鳥籠のような檻の中で叫ぶ姫に、正直溜息が絶えない。確かに姫は美人の部類に入るだろうが、高飛車な口調と高慢な性格のせいでマイナスだ。むしろ伝統とかじゃなかったら絶対手ぇ出したくないタイプだ。
それにしても、勇者も哀れだ。こんな高飛車女助ける為に命がけな事しなきゃいけないし、負けたら死、勝ったら高飛車女の婚約者にされちまうんだもんなー。俺の方は死んだふりとかでごまかせるけど、勇者は誤魔化せないもんな。まあ、同情したところで何もするつもりないけど。
扉が静かに開けられ、そこから勇者が現れた。…てか、勇者で合ってるよね、このタイミングで来るのは勇者しか居ないし。
俺が疑ってしまったのも仕方ないと思う。だって、普通勇者と言ったら白とかを基調にした明るい色合いの服を着て、ついでにピカピカの鎧とか身につけて、そんで聖剣とかもってるイメージあるじゃん。
けど、目の前の奴は違った。服装は黒づくめだし、鎧は使い古した感じだし、青い輝きを放つ剣(あれって魔剣だよな)を持っていた。正直、一瞬闇が人の形をとって現れたのかと思った。どっちかって言うと勇者じゃ無くて魔王とかって方があってる気がする。てか勇者らしさが欠片も無い。とりあえず、気を取り直してセリフを口にした。
「よく来たな勇者よお!?」
そして、俺の口上を遮っていきなり鞘を投げつけてきた。なんちゅうやっちゃ。人の話はちゃんと最後まで聞きましょうって母ちゃんに教えられなかったのか、コラ。
「いきなり何すんだよ!普通口上述べてからバトルだろ!?」
「そんなめんどくさい事知るか。私はアンタと戦いたいだけなんだから」
そう言った勇者はようやく俺に顔を見せた。そして、その顔を見た瞬間、俺の頭の中で鐘が鳴った。…メッチャストライク。
身体は猫のように引き締まってて、それでいて出る所はそれなりに出てる。いままでうつむきがちで分からなかったけど、色白の整った顔立ちよりが、強い意志を感じさせる輝きを秘めた黒曜石のような瞳が、俺を捕らえる。正直、ゾクリとする。
何か側近たちが「あれヤバイですよ!!」「勇者違うじゃん!!あれただの狂戦士にしか見えないんですけど!!」とか騒いでたけど、無視した。
「なあ、お前は何で闘うんだ?姫を取り戻すためか?それとも世界を救うためか?」
俺が思わず口に出した問いに、勇者はキョトンとした後呆れたようにいった。
「囚われの姫を救うとか、世界を救うとかそんな事どうだっていいんだ。私はただ、強い奴と戦いたい
だけさ」
それに、私に拒否権は無いしねと言った勇者を、俺は思わず抱きしめて叫んでいた。どうやったかっ
て?そんなの愛の力でに決ってるだろ!!
「勇者!!お前に惚れた!!結婚してくれ!!」
「「はあぁ!?」」
「お前の顔も雰囲気もサイズも何もかもドストライクってか俺お前に運命感じたってか一目惚れし
た!!」
「何を言ってんの!?さっきまでのシリアス何処に落としてきたのさ!?」
「と言うより貴方ホントに魔王かどうか怪しくなっていますわよ!?」
「いいのそんなの恋に関係ないから!あ、姫は責任もって城に送り返すから安心して勇者はここにい
て!!むしろ俺と一緒にここに永住してよ勇者!!てか勇者の名前教えてくれ俺はカルマってんだ!」
手下の魔物に姫を無事に城まで送るように指示を出し、あの手この手で抜け出そうとしている勇者を抑える。抱きしめてみると良く分かるんだけど、こいつ女なのに適度に筋肉ついてるし見た目よりかなり強い。多分、俺じゃなかったら今頃腕千切れてるかも…。
「離せ!私を離せ!でないと私が闘えないじゃないか!!」
「ヤダよー。だってお前抱き心地良いし、離したらお前絶対攻撃してくるだろー」
「当たり前だ。私は闘いたいからここに来たんだ」
闘う事こそ己の存在意義とでも言わんばかりに闘志をむき出しにしてる。凄い痛い。これぞ命がけの
恋って奴か?…洒落にならねえ。けど、この恋にだったらこの命、賭けたって後悔はしない。
「俺はお前と恋したいってか結婚したいんだ!…でも、名前教えてくれたら闘ってやるよ」
「私はクラウンだ」
即答したから、仕方なく離してやる。すると、クラウンは足を一閃させてきた。顔が赤いから、多分
照れ隠しだ。可愛い。例えそれが、普通だったら首がちぎれ飛んでる威力だとしても気にしない。断固照れ隠しだと言い張る。思わず顔がニヤける。
※この魔王、MじゃなくてSです。一応。
「私をからかって何が楽しい!!」
「イヤ?けどメッチャカワイイ」
「なっ!!」
俺の言葉にさらに顔を赤くする。どうやらストレートな愛情表現に慣れていないのか、先程までの刺すような殺気は無く、戸惑って怯えてる猫の様な感じだ。まさに子猫ちゃん。
今まで女の子を何人も惚れさせた事はあるけど、それは遊びだった。つまり、これが初恋になる。
「勝負は簡単。クラウンが俺に惚れるか、俺が死ぬかだ」
覚悟しろよ?俺の可愛い勇者様。必ずお前を俺に惚れさせてみせる。
その瞬間、勇者は今まで感じた事のない悪寒とともに何か危険を感じたそうです。
ほんと駄文。でも自己満足だから気にしないことにした。
ここまで読んでくれてありがとうございました!!