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もうちょっと慌ててください。

 性転換ネタがやりたかった。後悔はしていない。相変わらず駄文しかも短い。それでもよろしければどうぞ。


 朝いつものように学校に行くと、いつも俺より先に来ている女子が居る。いつもそいつは一番乗りで読書をしている。それで俺は二番乗りだ。そう、いつもなら。

 

今日は違った。読書をしているのも長い髪を縛っているのもいつも通りだ。しかし、制服がスカートではなくスラックス…と言うより、男子の制服を着ていた。体格だって男のそれだったし。


「…いつまでじろじろ見ている気だ?」


「おまえ、男装趣味が「ある訳ねーだろボケ」…うそ」


 そう言われて思わず固まってしまった俺は普通だと思う。彼女は確かに昨日まで女子だったはずだ。若干セクハラになるかもしれないが、昨日までは確かに控えめにだけど胸もあったし。でも今は明らかにただの胸板だ。固まってしまった俺が気になったのか、彼女…は席を立って俺の前に立って手を振っていた。


 昨日までは若干俺の方が高かったのに、今じゃ少し負けている。…結構悔しい。ほんとはそれどころじゃないんだけど、混乱中ということで大目に見て欲しい。


「大丈夫か~。もしかしてショックで彼岸までぶっ飛んじまったか?」


「いやいやいや、おかしいよね。明らかにおかしいよね!!」


「それは俺も切実なまでに感じている感情だ。物語で読むと笑えるけど実際起きてみると笑えないもん

なのな」


「いや、そこを笑い飛ばそうとしている君はかなり逞しいよ…」


 彼女の話によると、確かに昨日寝るまでは女の体だったそうだ。しかし、今朝起きてトイレにいくと、ついていないはずの物がぶら下がっている事に気が付き驚いたらしい。(せめてもう少し恥じらってほしかった…)そして、閉じこもる訳にもいかないので弁当を作り、朝ごはんの用意もして、制服に着替えようとしたら女子の制服以外にちゃんと男子の制服も用意されていてらしい。本人は、サイズがちょうど自分好みのサイズだった事に驚いたらしい。(俺としてはもう少し別の事に驚くべきだと思う)そして、起き出してきた家族が彼女の異変に気付き大絶叫。でもすぐに慣れた家族はそのまま彼女を学校に送り出したとのことだ。


「…ねえ、君のその無駄に高い順応性は遺伝かい?」


「まあ、それもあるだろうけど。俺はその中でもぶっちぎりだぜ?」


 …男になった彼女は、とても男前だった。そう言えば、彼女は以前から男顔負けの男勝りだった。し

かし、それが男子の体になってしまうとここまでカッコ良く感じるのかと驚いた。


「ま、なんでこうなったかなんてわかんねえし、かといって戻るまで登校拒否なんてやってらんねえ。

性別が変わっただけで、それ以外はいたって健康なんだし」


「それで済ましていい問題じゃないと思うのは気のせいかな」


「多分それが普通だから気にすんな」


「お前ももう少し気にしろよぉ!!」


 それからは大混乱だった。いつも女子が座っているはずの席に結構良いガタイした男子が座ってるから、クラス間違えたんじゃないのか?いいや私はここのクラスで間違いないですみたいなやりとりで大混乱。


 彼女の友達である土御門も驚いてたし、クラス中が大パニックだ。けど、一足先に情報を知っていた俺は冷静でいられたし、当の本人はのんきに欠伸している。しかし、流石に気まずかったらしく、言い訳の様なものを口にした。


「あー、確かに混乱するかもしれませんが、私自身は何も変わっていません。強いて言うなら、男になった事により色々と動きが大胆になるかもしれないですけど」


 見事な敬語で話す彼女…香月は、本当に変わっていないという事が伝わってきた。けど、言い訳になってないよ、それ。むしろ混乱を招いただけだよ。むしろ大胆になるってなにする気なのお前。けれど、そんなツッコミは騒ぎの原因に笑い飛ばされた。




 それから香月は大人気だった。前からフェミニスト的なところはあったのだが、男になった事でなんかリミッターがブチギレたらしく今じゃかなりの紳士だ。そして、男子にはいくらか砕けた口調で、心を許している人間には乱暴だが気の良い感じで接している。


 例えば、女の子の荷物はさりげなく持つし、力仕事は率先してやる。誰かが困ってたら当たり前のように助けるし、足をくじいたり、怪我をして動けない奴とか、お姫様抱っこで保健室に運んでたから。ちなみにこれは男女問わず。男でお姫様抱っこされたやつはホントご愁傷さまってやつだ。


 髪は長いままだし、顔だってほとんど変わってない。しかし、男のになった香月はかなり人気者だった。香月自身も性別は気にしていないようだ。流石に、着替えるときは女子とは別で着替えてる。まあ、男子と一緒に着替えようとしたときは必死になって止めたけど。


「紳士で力持ちで気配りも上手で、今じゃラブレターだって貰ってるんでしょ?」


「うん。下駄箱の中にどっさりと。開けた瞬間雪崩を起こすなんて初めての体験だったよ」


「モテモテだな香月よ」


「男子からも女子からも来ればそんな事言えなくなるよ」


 そう言う香月は若干煤けて見えた。それもそうだろう。女子からも男子からも彼氏になって下さいやら大胆にも抱いて下さいと書かれたものもあったり、中にはヤンデレ系の手紙も来てるらしい。そんなんだったら俺でも悲鳴を上げるだろう。


「てか、ヤンデレ系は血文字とか当たり前だからな」


「ごめんリア充爆発しろとか思ったけど全然羨ましくなかった」


 暗くなりかけた雰囲気を払しょくするように、話題を変えてみた。


「ところで、なぜ性転換したか原因はつかめたか?」


「いや?今ん所はさっぱりだ。…そう言えば、夢ん中で言い争ってる自称神様とやらを殴り飛ばしたよ

うな気がするぞ?」


「「…原因、それじゃね?」」


「…え、マジ?」


 どうやら、彼が彼女に戻るのはまだまだ先のようだ。


 珍しく連投。なんとなく慣れてきた今日このごろ。

 最後まで読んでくれてありがとうございました。

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