ブラックサラリーマン(2/3)
どうやって第二話を書いて投稿するのか探すこと10分(笑)
苦戦中です(汗)
楽しい♪~(・ε・。)
「はぁっ、はぁっ……」
始発。駅のホームで、走りながら電車に滑り込む。
眠気と疲労で、足元がふらつく。
車内では、いつものようにスーツの男たちが無言でスマホを眺めている。
そのほとんどがブラック企業戦士なのだろう。
通勤電車の空気は、墓場の匂いがする。
午前5時02分。
始発の電車の揺れが、良之助の身体からわずかな体力を剥ぎ取っていく。
彼は、スマホを取り出すと、反射的にメールアプリを開いた。
未読 58件(深夜1時〜現在)
社内チャットには、昨日の深夜に部長から放たれた魔法の言葉が並んでいる。
「誰か至急対応できる?」
「佐々木くんならわかると思うんだけど」
「あと、これ今日の朝イチで欲しい」
……眠らせる気は一切ないらしい。
良之助は、深いため息を吐いた後、スマホを閉じた。
そしてリュックから 1冊の参考書 を取り出した。
《東京商工会議所 ビジネスマネジャー検定公式テキスト》
(……この資格を取って、ホワイトな大手に転職する)
彼の密かな希望だった。
たとえ睡眠が3時間でも、電車で座れた日には、こうして勉強した。
数分でも、ページが進めば希望があった。
(絶対に……ここを抜け出す)
電車の窓に映る自分の顔は、やつれ切っていた。
目の下のクマが、まるで鎖のようにぶら下がっている。
彼は去年、深夜に見たテレビCMを思い出した。
——転職エージェント「ピザリーチ(仮)」
疲れたビジネスマンが、スーツを脱ぎ捨てて笑顔で歩く。
そのコピーは「君のキャリアに、光を。」
(あのCM、まぶしすぎて腹立ったな……)
けれど、その夜。
彼はついに登録ボタンを押した。
⸻
■ 職務経歴書の地獄
書き始めて、地獄を見た。
「何をしてきましたか?」
——全部、だ。
営業、経理、総務、法務、労務、採用、
社長の無茶振り、得意先の炎上の火消しの手伝い、助成金の書類、部下の退職の引き止め。
やらされた仕事を思い出すたび、キーボードを叩く手が止まらない。
気づけば、12ページ。
(……俺、こんなにやってたのか)
見返した瞬間、少しだけ胸が熱くなった。
誰も見てくれない努力を、初めて自分で“見た”。
⸻
■ スカウト
登録から数日後。
メールの通知が鳴る。
「マルチタスクと管理能力を評価します」
「一度、面談しませんか?」
週に一度、スカウトが届く。
スマホの画面を開くたび、希望の光が差した。
(……俺、こんなにもどこかで必要とされてるのか)
しかし、面接に行く時間はない。
始発で出社、終電で帰宅。
面談時間を確保できたのは、わずか一社だけだった。
面接官は職務経歴書をめくりながら、感心したように眉を上げた。
「これ、全部お一人で?」
「はい」
「……幅広い経験は素晴らしい。ただ——中小企業の管理職は、スケール面が少々不安でして」
(……つまり、“小さい会社の人間”か)
胸の奥が、また沈んだ。
(スキルはある。でも、証明できない。
結局、俺はこの会社の“何でも屋”のままか……)
⸻
■ きっかけ
海外の申請書類でお世話になってる東京商工会議所の担当者が、何気なく言った。
「佐々木さん、助成金申請してみません?
今ならIT補助金の支援が出ますよ」
ちょうど社内では、古いPCが限界だった。
「社長、もうWindows8は無理ですよ。そろそろ更新を——」
「金がかかるだろ。やらない」
(いや、仕事止まるって……)
そこで、良之助は夜な夜な調べた。
国のサイト、自治体の支援ページ。
そして徹夜で書類を作った。
厚さ、3センチ。
もちろん、代行業者なんて使えない。
「そんなのに代行業者に金払えるか!」
と社長に怒鳴られたからだ。
⸻
■ 突破口
提出の翌日。
商工会議所の担当者が、書類を見て目を丸くした。
「……佐々木さん、これ、完璧ですよ。
単独でここまでやる人、滅多にいません」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥に“自分の存在”が灯った気がした。
帰り際、担当者が笑って言った。
「そうだ、うちがやってるビジネスマネジャー検定って知ってます?
あなたみたいな人が受けたら、きっと通りますよ」
(スケールが不安?小さい会社の人間?)
(……この資格なら、俺の経験を“証明”できる)
電車の中で、リュックからテキストを取り出した。
小さな蛍光灯の下で、ページをめくる。
—— 未来を変えるのは、行動だけだ。
参考書の横には、スマホのKindleアプリ。
そこには、読みかけのビジネス書が数十冊並んでいる。
•「伝え方が9割」
•「問題解決のためのロジカルシンキング」
•「1分で心をつかむ交渉術」
(……いつか、全部読む。読んで、ここを抜け出す。)
だが実際は、メールに追われ、どれも読み途中だった。
それでも、良之助は諦めなかった。
知識が、自分を救ってくれると信じていた。
電車が目的の駅に到着する。
ドアが開いた瞬間、スマホが震えた。
【部長】「佐々木くん、朝イチで打ち合わせお願い」
【部長】「あと、新規の案件任せた。外で交渉してきて」
【部長】「俺、午前中は在宅(事務処理)ね!」
【部長】「面白そうな海外案件手出してみた。英語のやり取りでお手上げ!
ここは一つ佐々木先生、あとよろしくお願い!!」
はっ?
はああぁ??
出たよ、さわりだけやって、最後にチームでやりました的に報告して部長の成果にしちゃう必勝パターン
これまで、中小企業だからこそ幅広く業務を任せてもらえると、自分を成長させられると頑張ってきたけど疑問に思ってきた‥
自分は課長だ。
だが、やっているのは部長以上の仕事。
社内調整、予算管理、新規案件、交渉、契約、トラブル対応。
部長が逃げれば逃げるほど、全てが良之助の肩に積み重なっていく。
社員は口をそろえて言う。
「佐々木さんがいなきゃ会社が回らないですよ!」
けれど社長は言う。
「会社は人を選ばない。代わりはいくらでもいる。」
(じゃあ……俺の人生は誰が守ってくれるんだろうな)
良之助は、ゆっくりと続きのページをめくった。
——この知識が、俺を連れ出してくれる。
そう、彼は まだ信じていた。
まさかこの本とKindleが、
数日後、転生のチートになることも知らずに。




