ブラックサラリーマン(1/3)
買うだけ、冒頭だけ読んで本棚とKindleに溜まっていくビジネス書たちのインプット、アウトプットも兼ねて大好きななろう小説を書きます。初めての書き物です。
大学入試の小論文以来です。
文章力ないオッサンですが最後まで走り切ります。
よろしくお願いします。
午前3時45分。
真っ暗な部屋に、スマホのアラームが震えるように鳴った。
枕元のスマホ画面には、赤い文字で「始発」と書かれている。
体は重く、頭は痛い。昨日寝たのは、午前1時。
睡眠時間、四捨五入で3時間と前向きに捉えよう。。。
平日の睡眠時は平均3時間を切らないよう心掛けている。
佐々木 良之助(42歳)は、始発に乗るために布団から起き上がる。
自分が止まったら、誰も家族を食わせられない。それだけだった。
台所の暗がりで電気をつけずに動く。妻と娘を起こしたくない。
洗濯機を干す。
昨夜の食器を洗う。
詰まれたゴミ袋をまとめる。
——これをやっておかないと、妻の機嫌が悪くなる。
ではない。
自分がやらないと、妻が壊れる。
共働きでフルタイム勤務の妻は料理をしてくれている。
家や子のことは全て一人で背負っている。
だから、良之助は夜遅く帰っても、家事を最優先する。
眠気ではなく、責任感だけで動く男だった。
洗濯物を干し終える頃、家の奥から小さな足音がした。
「げっ……パパ……?」
寝ぼけた声の主は、中学3年の娘。
父親である良之助は寝不足の暗いオーラを隠しきれないが、微笑みながらタオルで濡れた手を拭いて、いつ振りかの会話を試みる。
「起きたの?こんな朝早く珍しいな」
結愛は無言で冷蔵庫から麦茶を取り出しリビングへ向かう。
そして、振り向きざまに言った言葉が、心臓に突き刺さった。
「あのさ……来週の卒業式、来ないで。」
止まる。
息ができなくなる。
「え?」
「パパ、来ないで。
絶対に!
ママだけにして。」
その目は、敵を見るかのように冷たかった。
理由はわかっている。
——土日も仕事。
——家にいても電話が鳴り続ける。昼には緊急対応のため出社
——約束はほとんど守れなかった。
娘は椅子に座り、スマホを睨みつけるように触っている。
「……早く仕事行ってくれない?
10秒以上同じ空間にいたくないんだけど」
「な、な、何言ってるの……?」
「パパ、いつも暗く作り笑いしてて、なんか…こっちもテンション落ちる。。」
スマホ画面に視線を落としながら、彼女はとどめを刺す。
「友達の、“のんちゃんのパパって明るくて爽やかなのに面白いんだよね。
スマートでちょっとカッコイイし”
在宅って言うの?家で仕事してるみたいよ?
一軒家だし、車もワンちゃんもいるし、羨ましいわ〜
旅行の話とかされるとうちとの格差感じてキツいんだよね。
だからね、パパと朝からいると、格差思い出すの。
だから早く仕事行って」
ぐさり。
良之助は無理矢理笑った。
消え入りそうな乾いた「ハハ…」と
涙をこぼさないために、笑った。
「そっか。……わかった。」
声が震えた。椅子の背を握る手が、白くなる。
本当にわかっているのかと自分で思う。
彼は、血を吐く思いで働いた。ただ、それだけだったのに。
娘は椅子から立ち上がり、冷たい声で言った。
「お願いだから、卒業式、来ないで。
本当に来ないでよ。」
そして自室へ消えた。
リビングに残ったのは、湿った洗濯物と、沈黙だけ。
——どうして、こんなはずじゃなかった。
愛する家族のために働いたはずなのに。
気づけば、家族が一番遠い。
あんなにも愛おしかった娘が…
良之助は、洗濯物を干す手を止め、静かに涙を零した。




