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姉に婚約者を奪われた令嬢、辺境伯の最愛の妻になって王都を見返す  作者: 影道AIKA


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第078話 ー春道の影ー

おかえりなさいませ。

本日は、閣下と共に向かう“二度目の王都”へ、

静かな覚悟が満ちていく道中をお届けいたします。

馬車の窓から流れる景色は、

 春の匂いを薄く含んでいた。

 雪の解けた山道に陽が差し、

 柔らかな光が道筋を照らしている。


 リリアナは静かに外を見つめていた。

 胸の奥にあるのは、懐かしさではない。

 王都は“かつて暮らした街”であっても、

 今向かっているのは——別の場所だった。


 前に閣下と訪れたとき、

 茶会の空気や、ひそやかな視線の棘が心に残った。

 今回は、その“続きを見届ける”旅だ。


 「……緊張しているようだな」


 穏やかな声に気づき、

 リリアナは向かいのアルフレッドを見た。

 夜明けの光を受けた閣下の瞳は、

 いつもより少しだけ柔らかく見えた。


 「王都へ向かうのは、二度目ですから」

 「そうだ。君と共に行く二度目だ」


 アルフレッドは窓の外へ視線を移し、

 静かに言葉を続けた。


 「前の訪問で、君はよく耐えた。

  今回は……耐えるだけではなく、進む側だ」


 その言葉が胸に落ちて、

 春の光のようにじんわり広がっていく。


 「逃げる気はありません」

 「知っている。

  君は一度覚悟を決めたら、揺らがない」


 馬車が小さく揺れ、

 リリアナの肩がふわりと傾く。


 支える手が伸びた。

 自然で、迷いのない動き。


 触れた指先の温度に、

 リリアナは少しだけ頬を染めた。


 「……すみません」

 「謝るな。

  こうして支えることに、理由はいらない」


 短い言葉ほど、胸に残った。


 道が開け、

 遠くに街道が現れる。

 霧の向こうで、影がわずかに揺れた。


 ローレンスが馬を寄せる。

 「閣下。街道に王都巡回の影を確認」

 「こちらを見たか」

「はい。距離は保っています」


 アルフレッドは淡く目を細めた。

 「牽制だ。

  王都は“来る者”に必ず目を向ける」


 リリアナは静かに息を吸う。

 胸の奥には、前回とは違う“重さ”があった。

 それは恐れではなく、

 ——向き合うための重さ。


 「王都は変わりませんね」

 「変わらない。

  だが、君は変わった。

  そして今回は私がいる」


 その短い言葉に、

 リリアナの心が静かに温まった。


 馬車は霧の中へ進む。

 王都の影が、ゆっくりとその輪郭を見せ始めていた。

最後までお付き合いくださり、誠に光栄にございます。

次の刻では、道中でふと立ち寄る休息地にて、

前回とは違う“二人としての時間”を描いてまいります。

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