表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉に婚約者を奪われた令嬢、辺境伯の最愛の妻になって王都を見返す  作者: 影道AIKA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/192

第118話 ー用意された席ー

おかえりなさいませ。

本日は、静かに用意された“場”の輪郭をお届けいたします。

その“場”は、特別なものではなかった。


 王都では、季節ごとにいくつもの催しが開かれる。

 夜会、茶会、寄付の集い、学術の報告会。

 名目は違えど、貴族が顔を揃える理由はいくらでもある。


 だからこそ、今回もまた、違和感は薄かった。


 「……慈善名義、か」


 アルフレッドは、届けられた予定表に目を落とした。

 王都北区の公的施設。

 主催は中立寄りの貴族家。

 後援に、王妃派の名がいくつか連なっている。


 露骨ではない。

 だが、偶然とも言い切れない。


 「孤児院への寄付と、運営報告。

  それに合わせた、小規模な社交の場……」


 マティアスが淡々と補足する。


 「表向きは善行。

  しかし、出席者の顔触れは、慎重に選ばれております」


 アルフレッドは、ゆっくりと頷いた。


 「噂を広げる場ではない。

  “確認する場”だな」


 誰がどう振る舞うか。

 誰が誰に声をかけるか。

 そして――誰が、どの位置に立つか。


 それを見せるための席。



 ◆



 一方、その話は、セレナの耳にも届いていた。


 「……孤児院、ですって?」


 意外そうな声を出しながら、彼女は内心で納得する。


 夜会ではない。

 華やかさもない。

 だからこそ、警戒されにくい。


 (上手いわね……)


 公の場でありながら、感情を表に出しにくい。

 同情と評価が同時に生まれる。

 しかも――


 「辺境伯夫人も、出席予定だそうです」


 その一言で、セレナの指先が止まった。


 (……やっぱり)


 用意された席。

 だが、立つ位置までは指定されていない。


 ならば、自分がどう映るかは、まだ決まっていない。


 (同じ場にいれば……比較される)


 それが、狙いだとわかっていても、

 乗らずにはいられなかった。



 ◆



 リリアナは、その招待状を静かに眺めていた。


 慈善。孤児院。

 王都で過ごした頃、何度も足を運んだ場所だ。


 「……行くべき、ですよね」


 確認するような声。


 アルフレッドは、即座に答えなかった。

 彼女を見る。

 迷いではなく、覚悟を測る視線。


 「無理に、とは言わない」


 それでも、逃げ道を塞がない。


 リリアナは、少し考えてから、顔を上げた。


 「……逃げたくはありません」


 昔の自分なら、そう言えなかった。

 だが今は違う。


 「ただ、静かに。

  必要以上に、前へ出ずに」


 アルフレッドは、その言葉に、わずかに頷く。


 「それでいい。気負いするな。」


 守る、と言わない。

 だが、支える意思は、はっきりとそこにあった。



 ◆



 王都では、すでに噂が一歩だけ進んでいた。


 「次は、あの席で分かるでしょう」

 「何が、ですの?」

 「……どちらが“相応しいか”」


 誰も断定しない。

 だが、誰もが期待している。


 用意された席で、

 何かが“見える”ことを。


 その期待こそが、

 この場の正体だった。


 そしてアルフレッドは、

 そのすべてを把握した上で、

 静かに時計を進めていた。


 席は用意された。


 あとは――

 誰が、どう立つか、だ。

最後までお付き合いくださり、誠に光栄にございます。

席が整った時、人は自らの立ち位置を試されるもの。

次の刻では、その場で交わる視線が描かれてまいります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ