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イゾラ

挿絵(By みてみん)


マンナからイゾラへ向かう道の途中ーー。


マンナもイゾラも海辺なので、おかを根城にしている盗賊よりも、海賊が出そうだ…と思っていたが、案の定だった。


悪党集団が馬車を襲撃した後らしき現場にゆきあった。


男達は殺されている。


「女どもは船に連行しろ!」

だのと言ってるので、海賊。

おそらく楽しんだ後で別の国の港で奴隷として売るつもりなのだろう。


鑑定してみると名前からしてヘッグ人風。


(…ヘッグ人て「凶暴な略奪者」ってイメージだけど、考えてみたらラクロ人みたいな陰湿な工作で騙してやろうとする謀略性が低そうな分、そこまで脅威度の高い人種ではないのかも知れないな…)

と思いつつも


鑑定結果の犯罪指数は皆が皆、犯罪指数150超え…。


紛うことなき犯罪者集団なので

「このまま見てみぬフリをしてやる義理もないな」

と思い


「【廃品回収】スキル起動」

で心臓抜き取り処分した…。


本当は死体も堆肥として回収してリサイクルポイントに変えてやりたい所だが、攫われそうな女性達は気を失ってる訳じゃない。


突然海賊どもが心臓を押さえて倒れただけでも不自然なのに、この上、肉体まで消えたら超常現象として語り継がれかねない。


「たまたま海賊が変な病気に罹ってて、たまたま一斉に発病した」

という筋書きを女性達の方で創造して広めて欲しいところだ。


しかし、よくよく見ると女性達は奴隷用の首輪を嵌められている。

(…奴隷商人の馬車だったのか…)


ーーいや、奴隷用の首輪をされてる女性達の容姿はポラーノ人っぽくない。


まさか…

「ポラーノ人が外国人を奴隷にしてる所をヘッグ人海賊達が救助しようとしてた」

とかじゃないだろうな?


とか不安になって奴隷商人の死体を鑑定すると

「アラゴン人」

だと判った。

犯罪指数は133…。

充分悪党だ。


襲われても同情したらいけないヤツ…。


問題はヘッグ人にしてみれば

「この奴隷商人はポラーノ人ではなくて、実はアラゴン人ですよ」

ってのが分からないんじゃないかって事だ。


ヘッグ人はポラーノ人とは骨格から違って、やたらゴツくてデカい。金髪や赤毛も多い。


アラゴン人やポラーノ人は背が低めで顔立ちが整ってる者も多い。

茶髪や暗褐色の髪色が多い。

アラゴン人はポラーノ人と人種的に似ている。


まさか、コイツもあれか?

わざとポラーノ人のフリして近隣国の女性をさらって来て奴隷にしてたりするのか?


もはや

「犯罪者に対する刑罰が国外追放」

というのは

「犯罪するなら他所の国の国民に成りすまして、在住国を壊すつもりで思いきりやれ」

「他国の足を引っ張る工作員を量産してる」

行為に成り下がってるのでは?


実は地球世界でもそういうものだったのか?


疑問なのは

「そういう悪行を実行してた実行犯が自分達がやってる事が人間として絶対に許されない外道行為だと自覚できていたのかどうか」

だ。


全く何の罪悪感もなく

反省もせず

自分達が呪われ祟られるべき存在だと理解もせず

伸び伸びと在住国民の人権を蹂躙しながら

人生を楽しんでたのかも知れない…。


まぁ、冤罪とかで身分剥奪されて温情で殺されずに済んで追放されるような人達もいるのだろうし、「全員が」ではないのだろうが…


考えてみれば

「犯罪やりたきゃ他所でやれ」

と追い出されたクズをなすりつけられる側は災難だ。


(よく権力者の皆様は近隣国で追放された犯罪者を国内に受け入れたりできるよな…。懐が深いフリをして、本当は自国民が憎いのか?実は他所の国のルーツの貴族とかがルーツ国にアイデンティティを置いた状態で国政に関わってるとかなのか?)

と疑いたくなる…。


ともかく、イゾラには無事到着した。


イゾラの人達は南方の人達との混血が進んでいて肌の色が濃い人が多い、というのが特徴だった。


道具屋の主人も色黒。

(外国人か?)

と思いきや、ちゃんとポラーノ人だ。


このオヤジ、俺と同じで【鑑定】が使えた。


「先ずはお前さんを鑑定させてくれな?犯罪指数が高いヤツとは取引しない主義なんで、それは納得してくれ」

と初っ端に言い渡された。


俺は自分自身でもほぼ毎日自分の犯罪指数をチェックしてるので

「どうぞ」

と自信満々に返事をした。


道具屋のオヤジ、チェッキーニは

「おおっ!善良そうな見た目通りに犯罪指数が低いな!よしよし」

と満足そうに頷いて取引を快諾してくれた。


悪いヤツらにとっては【鑑定】スキル持ちは邪魔な存在なのだろう。

チェッキーニも狙われやすいとかで、店に用心棒を雇っている。


「用心棒を雇う余裕があるなんて、儲かってるんですね?」

と訊いたところ


「町のお偉いさんに呼ばれて鑑定しに行く時があるからな。そのツテで用心棒を付けてもらえてるんだよ。

俺が鑑定するお陰で贋作や盗品を売り付けられる事がなくなってるから今後も末長く世話になりたいんだってさ。

まぁ、それだけ『金持ちを騙して身を立てる』ようなヤツらからは逆恨みされてるだろうな」

との事。


「【鑑定】ってスゴイですね」


「1000人中2、3人の確率らしいから、そこまで珍しくはないスキルだが、悪人を見分けるのに役立つよな。この国の仕様だと」


「?他所の国だと悪人を見分ける事はそれほどいう意味がないって事ですか?」


「ん?あ、いや。そういう事じゃなくてだな。どこの国でも犯罪指数が見える【鑑定】は需要があるが、どこの国民か、どんな血を引いているのか?によって【鑑定】スキルは鑑定結果として反映する情報が微妙に異なるんだ。

つまりはポラーノ人の【鑑定】スキル持ちは、鑑定した相手の名前・年齢・エクストラスキル・犯罪指数が見える。

これがラクロ人の【鑑定】スキル持ちだと、鑑定した相手の名前・年齢・エクストラスキル・知能指数が見える。

アラゴン人なら鑑定した相手の名前・偽名で暮らしてる奴の場合には本名も出るし、年齢も詐称してる場合には実年齢が出る。エクストラスキル名も【偽装】スキルで偽装されてても本当のスキル名が見えるらしいな」


「…そういう言い方だとポラーノ人やラクロ人は偽名で暮らしてて年齢を偽ってる人が居たとしても鑑定で判らないって風に聞こえますが」


「ああ、そう聞こえる筈だ。そう言ってるんだからな」


「もしかして『社会的に通用している名前や年齢』が鑑定結果に反映してるって事ですか?」


「そうだ。要はアラゴン人の【鑑定】は嘘を暴く仕様。ラクロ人の【鑑定】は知能の高さ低さを暴く仕様。ポラーノ人の【鑑定】は善人か悪人か暴く仕様、という訳だ」


「そういう人種ごとの仕様の違いって【鑑定】スキルだけですか?」


「いいや、【鑑定】スキル以外でも人種ごとの仕様の違いはある。民族性が反映してるんだろうな?

ポラーノ人は基本的に『悪人の発見・排除』を念頭におく民族性らしいから武技系スキルなんかも国内で犯罪指数が高い敵を相手どる時は強化補正値が高くなり、国外に出たり、犯罪指数が低い者を相手どると覿面に弱くなる」


「へぇ〜。それは知らなかった。犯罪指数が高い相手か低い相手かで強さが変わるんですね?でも国外に出ると弱くなるのはどうしてでしょう?」


「どの国でも外国人が首を突っ込むべきではない問題があるって事なんじゃないか?その国その国に公的な治安維持組織があるんだから、外国の悪はその土地の者達の裁量権に任せるべきって事だろうなぁ」


「外国人がポラーノ王国の問題に嘴を突っ込む場合も弱くなってくれると良いんですけどね」


「外国人の場合は、やはりその人種ごとの仕様の条件で強くなったり弱くなったりする。そういった情報は国の方で収集して有事の際に役立てる算段を付けてくれてるんじゃないか?」


「だと良いですね」


「俺の【鑑定】スキルでそういうのまで判るようになれば嬉しいんだがな」


気持ちはわかる。

俺としても武技系スキルが条件次第で強くなったり弱くなったりする情報が判れば何をしてくるか分からない外国人悪党相手にも無駄に怯えずに済む。


(そう言えば、俺が人間の心臓から獲得したスキルって、最初の【鑑定】スキル以外は殆どが外国人犯罪者達からだった気がする…)


国外に出ると弱くなる

犯罪指数が低い者を相手どると弱くなる

そういった仕様はポラーノ人のもの。


【剣術】【弓術】も条件次第で強くなったり弱くなったりするという事か…。

(情報収集しとかないと足元を掬われることになるかも知れないな…)


野糞回収の際も聞き耳立てながら作業するように癖をつけた方が良さそうだ…。




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