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マンナ仕様?

挿絵(By みてみん)


(俺、警備隊員とかじゃないし、そもそもこの町の人間じゃないし…)


殺さずに無力化し、悪事を強制的に中止させるような能力が有ればな、と思う。

悪人が悪事を為そうとした時に強制的に眠らせる精神干渉魔法みたいなスキルが有れば良いのに…。


基本的に人間には魔法みたいなスキルはなく

高ランクダンジョンの高ランク魔物らが魔法みたいなスキルを持ってるらしい。

人間は魔物より実は弱いのだ。


だからダンジョンからドロップする魔道具に頼って戦う。

この世界の魔道具は大雑把に分けて二種類ある。

一つはダンジョンから出た魔道具。

もう一つはダンジョンから出た魔道具を分解して、構造や素材や魔法陣を理解した錬金術師作の魔道具。


ダンジョンが生み出す魔道具はダンジョン内に包括する魔物のスキルやダンジョン自身が持っている能力が付与されているものらしい。


「ダンジョンは空間属性魔物だ」

と言われている。

そうーーダンジョン自身が魔物なのだ。


なのでダンジョンが出す魔道具の最高峰は理論上

「ダンジョン創造ツール」

だという話だ。


勿論、理論上の話。

誰もダンジョン創造ツールなど持ってない。

ドロップしたと聞いた事もない。


ーーだが

「もしも俺が高ランク冒険者で、ダンジョン創造ツールを手にいてたとして、それをわざわざ他人に公表するだろうか?」

と考えれば、間違いなく

「否」

である。


秘匿して自分のために使うだろうと思う。


(俺がダンジョン創造者で、ここがダンジョンなら、悪人を眠らせて悪事を止めるのも自由自在なのにな?)

とも思う。


墓荒らしどもは

「それにしても臭えな…。俺、本当にこういう仕事、嫌いなんだわ」

「しょうがないだろう?上からのお達しだ」

「しかし何考えて『墓場の死体の心臓から魔石を採取しておけ』とかいう指令が入ってるんだ?」

とブツブツ文句を言っている。


コイツらは下っ端の実行犯のようだ。


「しょうがないだろう?俺達はこの町ではブルフォード人って事になってるんだ。

ブルフォード人らのやる悪行の一つが『人間から魔石を奪る』って鬼畜行為なんだ。

それっぽく死体の心臓から魔石を抜いて、ポラーノ人達の敵意がブルフォード人どもに向くように工作しておかないと、俺達の方が上から粛正されるぞ」


…意味が分からない。


コイツらはラクロ人なのに、この町ではブルフォード人と自称していて、尚且つブルフォード人へのヘイトを生み出すために墓荒らしして死者の体から魔石を奪取している?という事か?


(というか、人間の心臓からも魔石が採れるって、コイツら知ってるんだな…)


しかしーー

何故、そんなことをする?

何故、国籍詐称して近隣国のヘイトを操作しようとする?


(…コイツら、いわゆる「工作員」なのか?)

と思ったら、ストンと腑に落ちた…。


小悪党っぽい感じで、せこい悪事には慣れてる風だが、殺しには慣れてなさそうな下っ端工作員…。


(…こういうのを野放しにしてたら、もしもラクロ王国とブルフォード王国が戦争になった時、我が国はまんまとラクロ王国に騙されて「共にブルフォードをやっつけよう!」とか誘導されてしまうんじゃないのか?…ヤバい、あり得る…。ムカつく…)


本来なら工作員など国軍兵士が狩っていくべき敵だ。


なのに海兵団のお膝元でこういう連中がのさばってる…。


(もしかして、ラクロ人て、敵対国の人間のフリして近隣国で犯罪しまくり「敵対国へのヘイトを人工的に煽る」ような陰湿な工作をしまくってるクズ国家だったりするんじゃないのか?…)


「ない」とは言い切れない…。


悪玉化標的にされた国は欺かれ操られた国々から憎まれる。


この場合、ポラーノ王国は騙され欺かれる側で陥れられる側ではないが…

もしかしたら近隣国で

「ポラーノ人のフリをしたラクロ人が犯罪しまくってポラーノ人へのヘイトを増産してる可能性がある」

訳だ。


最悪な場合はラクロ人だけでなく、他の近隣国の連中も

「ポラーノ人のフリをして他国で犯罪しまくってポラーノ人へのヘイトを増産してる」

可能性すらある。


クズ過ぎる。


国籍詐称の工作員

アイデンティティの在処を詐称した工作員


その手の人間は世界を嘘で覆い尽くす。


(多分、こういうヤツら自身は深く物事を考えてなくて、自分達がトンデモナイ事をしてる悪質な工作員だという自覚もなくて、単に仲間同士癒着しながら言われた事を楽しく実行してるだけなんだよな…)

とは思うものの


野放しにしておくと国際関係が嘘塗れに堕ちて

濡れ衣を着せられた冤罪被害者を皆で憎悪し

冤罪被害者と戦わせられる流れに巻き込まれる。


(コイツら自身に恨みは無いが…)


殺しておこう…。


そう決意して【廃品回収】スキルを使う事にした…。


(…心臓抜き取りの即死攻撃は苦しむ時間が極端に短いし、悪党どもの死に方としてはかなり楽な死に方だろうと思う…)



********************



翌朝は元気に野糞回収に精を出した。


目の前で盗賊が商人や護衛を殺そうとしてるのを止めるため

盗賊の心臓を抜き取って一方的に殺すのは

全く悩まなかったが…


目の前で誰かが殺されそうになってる訳ではないのに

犯罪者を止めるために殺すのには迷いが生じるものだ。


「工作員の作り出す嘘がどれだけの被害をこの国にもたらすのか」

は未知数ではあったが…

それでも軽く考えて放置してて

「それで俺達が幸せになれる」

などとは俺には思えなかった…。


前世の地球世界ではその辺はどういう判断だったのだろう?


日本では

「軍事費を上げろ!」

という声に対して

「戦争しようとしてるな!戦争反対!」

という連中が湧いていたが


本当に戦争をしたくないと思うなら

本当に戦争をしたくないと思うから


嘘を創り出してネガキャンしてヘイトを人工的に作り煽る工作員を牽制・抑圧するべく、場合によっては「国との関連が辿られないように事故や自殺に見せかけて工作員を処分する」なり「死にたくないならカタギになれと暗に仄めかして誘導する」なりの行為が必要なんじゃないのか?


そのための人材を育てて文明の利器である機材を仕入れるもしくは開発するのにカネがかかるなら、それが

「軍事費拡大で戦争回避、軍事費拡大で平和創造」

に繋がるのではないのか?


こういう認識はかなりシンプルな認識だと思うのだが…

何故たったそれだけの事を納得しない人が多かったのだろう?

(今思い返してみてもやっぱりあの世界は色々、オカシイ…)



結界魔道具を稼働させながらの野糞回収なので

町の人達の声に聞き耳を立てていれば情報収集もバッチリ。


この町の海兵団や警備隊が腑抜けで機能麻痺してる原因が

「西区にできた歓楽街のせいだ」

と明らかになった。


んで

「歓楽街を仕切ってるのはブルフォード人だ」

という事になっている。


ブルフォードはポラーノ王国と隣接してる訳じゃないし…

そもそも国交もないので見かける事もない。


なのでラクロ人がブルフォード人だと詐称しても俺達は嘘を見破れない。

そのせいでまんまとラクロ王国の術中に嵌められているようだ。


(この国の偉い人達…。ちゃんと、こういう事実を把握しててくれると良いんだけど…)


「俺、墓場でラクロ人達が『ブルフォード人のフリしてる』って仲間内の会話で言ってるの聞いちゃったんですよ」

とか証言しようものなら


「…お前は墓場で何してたんだ?」

と逆に不審者尋問されて捕まり拷問される可能性もある。


うん。

この国の偉い人達はちゃんと賢い筈だ。


日本人みたいな黄色い猿と違って白人様だぞ?

偉いんだぞ?


よし。

俺にできることはこれ以上はない。

そう決めた。


ハッキリ言って国際問題なんて

庶民の俺には背負いきれない。


なので

「たまたま外国人工作員の悪事に行き合ったら処分しておく」

という程度の対処でいい筈。



頑張りましょう。

ポラーノ王国の王侯貴族の方々。


俺は知らん。

アンタ達で何とかしろ。


というわけでーー

俺は俺ができる事を頑張った。


冒険者活動として公衆トイレの掃除の依頼を一回受けたし

野糞回収で町中の衛生面に貢献したし

安値で美味しいハンバーガーを町人達に提供した。


そして俺は人々から

「また来いよ!」

と言われて、意気揚々とマンナを発った…。




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