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パーチ仕様?

挿絵(By みてみん)


墓場は教会の裏手にあるので

「悪党は寄り付かない筈」

という先入観が俺の中にあったようだ。


「人目がない」

という利点のお陰で、実は不信心な悪党が逆に寄りつく場合もあるのかも知れない。


深夜にザッザッと土にシャベルを突き立てる音がしてきた。


(こんな夜中に墓穴掘りか?)

と不審に思った。


コッソリとログハウスのドアを開けて外を覗いてみると…

中年の女と若い男が穴を掘っていた。

側には死体らしき男が横たわっている。


(…あのオバサン、宿屋の前を掃除してなかったか?…宿屋の女将とか従業員なのかと思ったんだけど…)


…まさか


(いや、まさかな。「この町では流れ者の泊まり客を殺して身包み剥いで埋めてる」とか、そんな嫌な想像。…俺の妄想だよな?)

と思う事にした。


…ともかく

今は埋められる死体に

「まだ心臓があるかどうか」

が問題だ。


だが穴掘りしてる連中の側で声を出すのは危険だろう。

ここから連中を鑑定できないか試す事にした。


小声で

「[鑑定]」

と日本語で言うと


「[名前:ベッタ:年齢:45:スキル:【脚力向上(微)】:犯罪指数:123]」

「[名前:ピッポ:年齢:28:スキル:【骨密度向上(微)】:犯罪指数:134]」

と出てくれた。


どうやら生きてる人間だと視野に入るものならある程度距離が離れていても鑑定できるようだ。


問題は生き物ではないものの場合、そこかしこに溢れているからなのだろうが、どんなにここから死体を凝視して

「[鑑定]」

と呟いても鑑定できない。


生きてないものはある程度近づいて指定しなければ鑑定できないようだ。


(仕方ないな…)


俺はいったんログハウスへ引っ込んだ。

【気配隠蔽】スキルを起動。


どうせ心臓抜き取りしてスキルを頂くにしても範囲指定できる距離まで近づかなければならない。

(心臓抜き取りは画面操作のみでできるのが有り難い)


あとは実行あるのみ。

ソロリソロリと死体に近づく…。


穴掘り人達はおそらく死体を拵えた殺人者だ。

気づかれるとマズイ。

結界魔道具をリュックに入れて背負って移動してるので

俺の姿は消えてるがログハウスが代わりに姿を現す可能性も高い。


(コイツらが穴掘りに一生懸命になってるうちに済ませよう…)

と思い、慎重に死体の傍らまで行って小声で

「[鑑定]」

した。


「[人間の死体:心臓からGランク魔石が採れる:ラクロ人]」

という鑑定結果が出たので


画面の下のほうの

「詳細情報表示」

とをクリックした所

「[人間の死体:心臓からGランク魔石が採れる:ラクロ人][名前:フロラン:年齢:26:スキル:【暗視力向上(微)】:犯罪指数:154]」

と出た。


(うん。犯罪者だ。しかも外国人。コイツのスキルなら盗っても全く罪悪感を感じずに済む…)


次はすかさず廃品回収。

俺の目には心臓から光が浮き上がって見えるが、他人には見えないのがバディオリのおかげで分かった。

夜の暗闇を照らすスキルの光がつつがなく俺の中に吸い込まれた…。



********************



翌日から裏通りの野糞拾いを始める予定だったが…

この町の裏通りは人が多い…。


というか、家のない人達が宿も借りずにその辺で転がって寝てたりする。

(宿屋に泊まると、宿屋の人間に殺されて身包み剥がれるような町だと、逆に野宿の方が安全だとも言える…)


ヴァロブラもネスタも裏通りは寂れていて人目が無かった。

そんなお陰もあり皆も平気で裏通りで野糞をしてたが、この町の裏通りの場合は野糞が少ない。


裏通りから更に離れた町の隅。

町を囲う柵の近くまで来た辺りに野糞がゴロゴロ転がっていた…。

ゴミ集積所も近い。

どうやら町の端っこに臭い物を追いやっている様子。


町の端っこをグルッと回りながら野糞回収する事になった。


この町の裏通りの家々では

「家内にトイレが無い(?)」

という事なのか…

近隣の人達が普通に野糞しに現れた。次々と。


俺が拾ってる間にも普通にその辺で用を足し出した。


野糞がある程度乾燥すると、乾燥したものを柵の向こうへ捨てる作業も行われている。

この町の排泄物事情が

「そういうものだ」

という事なのだろう。


色々ツッコミたい気持ちもあるが、俺は結界魔道具で絶賛隠遁中。

姿を現す気もないし、ひたすらスルーしながら野糞回収した。


この町の良いところは、俺が野糞回収しても

「誰か柵の向こうへ押しやったんだろう」

と思う程度。

誰も

「野糞まみれの場所から野糞が消えてても不審に思わない」

点だ。

(図太すぎる…)


10日ほどかかって町の端っこをグルッと一周したが、また新たに野糞が増えていた。

流石に二周目は遠慮して

「次の町へ」

向かう事にしたが、少し名残惜しく感じた…。




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