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ネスタ

挿絵(By みてみん)


ネスタには1時間半くらいで着いた。


舗装されてもいない道なのでもっと時間がかかるかと思っていたが…

案外早く着いた。


だが

(…腰が痛い…)

と思った。


ガタガタの悪路をマウンテンバイクで進むのは

馬に乗るのと同様に腰に衝撃が来る。


(そう言えば湿布とかもリサイクルカタログに載ってたな…)

と思い出し、多少は気分的に痛みも治った気がした…。


宿代でカネを使うのは勿体ないし、この町にも教会はあるだろうし墓地もある筈。

なので墓地近くの林の中にログハウスを出して寝泊まりするつもりだ。


ネスタは俺が育ったヴァロブラと町の規模やら造りやらも似てる点が多い。

教会を探して大通りをウロウロしてたら簡単に見つかった。


教会は被災時の避難所、つまりは公民館的な役割を担っている国営機関だ。

なので各町に設置されている。


領主や町長が管理する公共の場。

集会場なども教会同様に公共の場だ。

管理・維持にカネを出す大元に「国」「領」と違いがある。


権力の全てが国に回帰され中央集権体制になると、判りにくく回りくどい攻撃や干渉を受けた時に国防面で大きく後手に回る事になる。

かといって国という総体が無ければ各領が単独で敵国と対峙しなければならなくなる。


「戦力分散・リスク分散」

の意味もあって権力が国にも領にも委ねられているのだ。


国も領も健全であれば問題無いが

中央も地方自治体も双方が

「敵国人による乗っ取りに遭っている」

ような状態もあり得る。


ヴァロブラの場合は普通に異邦人は疎外されていて

「異邦人は異邦人であるが故に信用されず宿にも泊まれず土地も建物も買えない」

という実態があり、乗っ取り工作は表面的には見られない状態だったが…

他の町もそうだとは限らない。


逆に、異邦人じゃなくても

「よそもの」

というだけで疎外される事もある。


政治にせよ商業活動にせよ

欺瞞に耽らず

バランスを理解する

高度な知性が

社会内の影響力に一定量以上必要なのだ。


地元以外で商売をするなら

「決して損はさせない、搾取する気もない、騙す気もない、ただフェアトレードで商売したいだけだ」

という意向を表明しつつ信頼されるように振る舞い続けて警戒を解いてもらわなければならない。


ヴァロブラとよく似た町なみを見ながら

(…紙、売れると良いな…)

と思った…。



********************



変なスキル名のスキルを授かったヤツは俺以外にも居たし、それはヴァロブラ以外の町でも同じなのだろう。


俺の【廃品回収】スキルは、他人のスキル、魔物のスキルを死体に残る魔石から抽出して自分のスキルにできてしまう最恐スキルだし…

変なスキル名のスキルを授かった連中が頭を使ってスキルを悪用しまくれば、かなり卑怯にトンデモナイ事をしでかしてしまえる可能性がある。


俺はその事をボンヤリとではあるが潜在的に理解していた。

だがそういった脅威を明確に意識はしていなかった。


「見てはいけないモノ」

を見てしまい

「その惨劇が普通じゃないスキルによるモノ」

だと気が付いた時に初めて

「潜在的に漠然と認識していただけの脅威を具体的に顕在化して認識できた」

のだった…。



********************



日が暮れる前にネスタの教会の裏手にある墓地の側の林に結界魔道具を稼働させた状態でログハウスをストレージから出した。


そしてログハウス内でリサイクルポイントで出した食い物を食い

(尻と腰が痛かった…)

と思いつつ、寛いでいた。


外は暗くなっていた。


墓地の方で不審な音がした…。

(音がすると途端に墓地って物騒なイメージの場所に感じられる…)


「結界魔道具の効果のお陰でログハウスも俺の姿も見えない筈だ」

という精神保全効果もあり、静かにドアを開けて外を見てみたら…


奇妙な光景が広がっていた。


双子なのか…

ソックリな男が二人居て

一人が攻撃して

もう一人が攻撃されている。


空間自体が捻じ曲がっているのか…

一方的に攻撃されている側の男の背後には

「そこだけ石造りの強固な壁がある」

ように見える。


壁に固定されている拘束用の鎖が攻撃されている男の肉体を縛り動けなくしている。


攻撃はまるで拷問だ。

ジワジワと苦しめるように肉を削ぎ

皮を剥いで

指を落としていく…。


不思議な事に

拷問されている側の男の身体は

傷付けられる側から回復しているので

拷問は何度も何度も繰り返されている…。


拷問してる男も

拷問されてる男も

顔も背格好も髪型も服装すらも同じだ。


双子にしか見えない…。

血肉と分けた一卵性双生児だろうに、そんな風に拷問を楽しめるモノなのかと…

見てるこちらもゾッとした…。


だが

(血縁だからこそ、憎い、という事なのだろうか…?)

という考えも脳裏を過った…。


こちらの存在に気付かれていないにしても

「すぐ近くに凶悪犯罪者がいて、犠牲者を拷問している」

という状況は恐ろしいものである…。


(…うん。俺は何も見てない)


そう思う事にして

音を立てぬようにドアを閉め鍵を掛けてログハウスに引き篭もる事に決めた…。


双子らしき男達の側には全身黒ずくめの人間が立っている。


三角型の目出し帽を被っているのが怖い。

まるで黒魔術か何かで生贄を殺すような雰囲気だ。


(…あっ!)

と少しその状況に関して思い至る事があったが


(ともかく気付かれないようにドアを閉めて引き篭もるに限る)

という決意を強めてソロリソロリとドアを閉めた…。


それこそこの墓場で儀式殺人が行われているのだとしたら…

黒づくめの人間は儀式施行者

生贄の双子の兄弟は殺人執行者

という位置関係なのだろう。


ネスタは魔物が少ない分、盗賊出現率が高くて

「人が人を殺す」

というハードルがヴァロブラよりも低いのだろう…。


(墓場で儀式殺人が行われている町なんて…かなりトンデモナイ町だよな…)

と痛感してしまった…。




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