表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/58

行方不明疑惑

挿絵(By みてみん)


町の西側の裏通りの野糞を4日がかりで回収した。


細い裏路地とかはまだ手付かずだが

裏路地以外の裏通りは

「3歩あるけば野糞に当たる」

状態から改善された。


と言っても町の西側だけだが。


今後は北側、東側、南側も回収していきたいと思う。


今日は郊外の雑木林で小枝を拾って「回収・交換」でノートとチリ紙を量産しておきたい。

古道具屋へ行って、必要分を納品するつもりだ。


古道具屋のオッサンは俺のスキルを

「串や爪楊枝・小枝からチリ紙・ノートを生み出す能力」

と思ってる。


木・植物紙限定の変換能力だと勘違いしてくれてるようなので、その勘違いはそのまま放置しておくに限る。


変なスキル持ちが社会の裏側で悪い事をしてのさばる事も稀にあるらしく、正体不明のスキル持ちだと、妙に警戒される事もあるのだ。


「イリシオ=紙製品生産者」

という印象を広めてくれた方が有り難い。


なので今回は結界魔道具は使わず

自分の姿をそのまま晒した状態で小枝広いして

古道具屋へノートとチリ紙を持っていく予定。


それにしても野糞の数が凄まじかった…。

1日約300個が4日間。

つまり1200個。

あの塊が町の西側だけで1200個も転がってたという事だ…。


「3年間も」町長が「通り清掃」の依頼を出さずに、その分の公金を別の用途に使ってるせいで…

町はとんでもなく不衛生になっていた訳である。


一旦は全て使い切って0になったポイントは

その後の3日で9120ポイントにまで貯まった。


予定通り

自転車用ヘルメット200

インナープロテクター(上)750

インナープロテクター(下)500

ボディープロテクター250

を景品引き換えしたので1700ポイント使用。

差し引き7420ポイント。


身体拭き用ウェットティッシュ20

顔拭き用ウェットティッシュ20

手拭き用ウェットティッシュ5×2

計50ポイント使用。

差し引き7370ポイント。


町の西側だけで1200個、なら、町全体なら4800個。

48000ポイント。


16日程度の短期間でバカみたいに稼げる。


ログハウスで寝泊まりすれば宿代も掛からず

服も食べ物もポイントで出せる。


種の出る果物や野菜は種を本体に変えられるし、本当に

「衣食住が満たされてる状態」

になってる。

嬉しい。


前世を思い出し、【廃品回収】スキルをもらって、俺の人生は劇的に変わったと思う。


ただまぁ岩田家流「人生の真理」における幸せの条件には

他人から親切にされる

他人に親切にできる

といった親切の相互的キャッチボールが言及される。


町の衛生化に貢献して俺もポイント稼いで楽々景品生活できたとしても…

それだけじゃ

「誰にも親切にしてない」

「誰からも親切にされてない」…。


親切にしても搾取されない

親切にされても搾取しない

そんな人間関係が必要だ。


「親切な人間を餌だと認識する寄生搾取欲」

を持ち込ませない人間関係が。


(頑張ろう…)


「親切な人間を餌だと認識する寄生搾取欲」

を持ち込ませない人間関係。

それを作り出すべきだというのなら

それを作り出してやる。


(「幸せ」になるんだ…)


そう決意した。



********************



久々に結界魔道具を使わずに自分の姿を晒したからか…


俺の姿を見かけた知人らが

「えっ、お前、生きてたの?」

「幽霊じゃないよな?」

などと失礼な事を訊いてきた。


仲が良い訳じゃないが、同じ町で暮らしてるので自然と互いに顔見知りにはなる。


「生きてたに決まってるだろ?」

俺が答えると


「お前、宿に戻ってないんだろう?ロッカが『イリシオが戻って来ない!どっかでのたれ死んだかも知れない!』ってギャン泣きして騒いでたんだぞ?ちゃんと顔見せて安心させてやれよ?」

と意外な事を言われた。


「えっ?ロッカが心配して泣いてたの?…嘘だぁ〜」


「んな事でいちいち嘘つくかよ。とにかく今日は宿に戻るなりして、ちゃんと顔見せとけ」


「…分かった」


「あと、サンティもお前の事探してたぜ?…まぁサンティのヤツはお前が死んだとは思ってなくて、金持ちのジジイとかババアに囲われて性的搾取されてるんじゃないかとか不審がってただけだがな。

…お前がみなしごでもお前の事を気にかけてる奴らもいるって事だ。あんまり心配かけるんじゃねぇぞ」


「………」


(…俺が金持ちのジジババに性的搾取されるって、一体何処からそういう発想が出てくるんだろうな…)

と腑に落ちないものを感じながらも


「…分かった」

と再び了承の返事をした。



結界魔道具を稼働させてログハウスで寝れば宿代が浮くので、ついつい世間との繋がりを絶ったような状態になってしまったが…

やっぱり行方不明疑惑が湧くのはマズイ…。


ロッカとサンティが心配してたというのが意外ではあったが、アイツらは歳も近いし、一応俺を「友達」と思ってくれてるのかも知れない。


今後は収入を宿代に充てて、それ以外の飯代その他をリサイクルポイントの景品で補おうと思う。


(じゃねえと「親切にされる」「親切にする」っていう部分が実現できないからな!)



ともかく所持金を増やすべく小枝拾い、ノート・チリ紙への交換に精を出す事にした。


午前中は雑木林で頑張ってノートとチリ紙をゲットしたので

昼食は雑木林の中で人目を気にせず摂りたい。


流石に納豆やラーメンを他人に見られる訳にはいかないので

【気配察知】スキルと【聴覚上昇】スキルを使い

誰も近くに居ないのを確認してから、結界魔道具を稼働。


ポイント引き換えして納豆と即席ラーメンを出し、ラーメンを作って食べた。

5ポイント景品2つで合計10ポイント。


「ニオイのしない夕食用の食料」

も出しておこうと思い、景品カタログを見ていくと…

アンパンやチョコパンのような菓子パンもあった。


(久々にコーヒー牛乳が飲みたいな…)

と思ったのでコーヒー牛乳も。


15ポイント景品の食品になるとショートケーキも載っている。

イチゴのショートケーキは前世でも好きだったので、コレも引き換え。


夕食分のポイントは計30ポイントになったが、極力食べ物のニオイを抑えて味的にも満足のいくものを、と思うと…

ポイントをケチることまで気を使うと何気にストレスになる気がする。


他人と仲良く

他人に心配かけず

無難に社会生活を送る為には何気に気を使う…。


なのでせめて

(食い物を引き換えるのにはポイントをケチらずにおこう)

と思ったのだった…。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ