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「捨てたもんじゃない美点」

挿絵(By みてみん)


3009ものポイント…。


5ポイントの景品とか10ポイントの景品が地球世界の日本で100円前後で売られてたものが多い。


つまり1ポイントが10円か20円くらい?

3000ポイントを60000円くらいと見積もるなら、結構な額だ。


しかも、この金額は「裏通りで午後から4時間ほど野糞回収し続けた」収穫。

毎日裏通りで4時間野糞回収して毎日300個近く拾えば

「日給60000円」

生活をしばらく続けられるという事か…。


自転車マウンテンバイクを景品引き換えして

背負い袋に結界魔道具入れて

自転車移動すれば…

街道を伝って、別の町へ移動も可能。


町から町へと

「野糞回収」

をハシゴし続ければ


延々とリサイクルポイントを大量ゲットし続けられる…。


(…うわぁ〜。俺、もう今までみたいに真面目に冒険者用の雑用する気なんて、無くなっちゃったよ…)

と、自分でも自分の心境が分かる…。


景品カタログを確認すると

丁度3000ポイントでマウンテンバイクがある。


(欲しいなぁ…。どうせいずれ景品交換するんだし、今日ゲットしちゃおうかなぁ…)

とか思ってしまう…。


結界魔道具が結界内の人間を不可視化してくれる魔道具だという事は分かったが、ニオイや音まで遮ってくれるのかは分からない。


マウンテンバイクでの移動中に魔物に襲われる可能性を考えると、他にも色々必要になるだろう。


(自転車用ヘルメットは必要だよな…)


(バイク用のプロテクターも欲しいところだ…)


自転車用ヘルメット200

インナープロテクター(上)750

インナープロテクター(下)500

ボディープロテクター250

計1700ポイント。


うん。

明日も野糞回収して回れば充分稼げるポイントだ。


(…それなら…)

と思い、俺はマウンテンバイクを景品交換した。


それから紙ナプキンをリサイクルに出して1ポイントゲット。

残りポイントが10になったので5ポイント景品の食品を二つ引き換えして、ポイントを使い切った。


5ポイントの食品…。

納豆と煎餅だ。


不思議な事にパッケージこそ違えど、商品の見た目も味も俺が前世で食べていたものにそっくりだ…。


某メーカーの納豆…。

タレは既に掛かっている。


某メーカーの煎餅。

おにぎりの形を模した緩いカーブの三角形で味もそのまま。


俺の記憶から引き出された商品が景品カタログに載ってるという事なのか…。


250ポイントコーナーにある浄水器は前世で我が家の台所の蛇口に取り付けられてたものにソックリでありながら、何故かこの世界の魔道具の給水口に取り付ける取り付け専用パーツもセットになっていた。


(ホントに「俺専用」って感じなんだな…)

と感じた。


前世で使って事がある物、使ってた物、見た事がある物。

家電品はこの世界に電気が無い事もありカタログに載って無いが…

それ以外の物は食品日用雑貨家具寝具まで載ってる。


コンテナ倉庫やコンテナハウスみたいなものまである…。


だがガソリン、ガソリン車が載ってるので、車内でちょっとした家電品は使えるのだろう。

DVDデッキDVDディスクがガソリン車内仕様オプション品としてガソリン車の近くに載ってる。


DVDは幸運の名を持つ白黒ネコが主人公の某海外アニメ。

前世の俺が何故か繰り返し見続けたアニメだ。


俺としては自家用発電機と電子レンジが載っててくれると有り難かったのだが…流石にこのエコロジーな世界には、そこまで便利な物は持ち込めないのかも知れない。


電子レンジと湯沸かしポットと炊飯ジャーは日本家庭における食品加工の三種の神器だった。

母はガスコンロで調理してたが、父や弟は滅多に火を使う事は無かった。


電子レンジで冷凍食品をチンする。

湯沸かしポットの湯を注いでカップ麺やコーヒーを作る。

炊飯ジャーで白米や雑穀米を炊く。

火を使わずとも食を賄えてしまえる。


そんな便利過ぎる電子レンジ、湯沸かしポット、炊飯ジャー。

それらは家事の心得がない人間にとって必須の家電品であった。


だが便利で楽な生活に慣れると

その代償のように

人間の心は眺望固定病に罹患していった気がするので…

まぁ、あまり便利になり過ぎるのも良くないのかも知れない。


医療が発達して

生活も便利になったことで

人間は際限なく甘ったれて

情緒主義に耽り

「好き=善、嫌い=悪」

という基準による依怙贔屓やネグレクトを普通に行い出した。


その結果としてーー


前世で俺と俺の家族が地域ぐるみでやられていた

「周り全員がグルのイジメ・嫌がらせ」

が社会内に蔓延していた。


今こうしてあの世界の製品を景品として取り寄せできる事から

「あんな世界であんなクソ人生を送った事の全てが無駄だったという訳じゃない」

という事も分かる。


だが

「完全に無駄だったという訳じゃない」

というのは…


現時点まで来たから言える

「結果論」

でしかない。


未だあのクソ世界に囚われていたら

「弱者を巨悪に見立て、反撃されるリスク無しで皆でイジメを楽しみ、正義を詐称しながら、イジメを楽しむ仲間同士で仲良しこよしごっこ」

に耽るキチガイ達に延々と標的にされ続けてた可能性が高い。


本当に悪質なクソ世界だった…。

それでいて便利な物や美味しい物も沢山あった。


勿論、カネが無ければ買えなかったので…

「社会内に物が溢れていても意味はない」

だろうと思う。


俺の祖父母世代は戦後間もない頃の子供時代の思い出として

「何も(物が)無かった」

と物資不足を挙げていて

「物が溢れている社会は恵まれている」

と思い込んでいたが…


「社会内にどれだけ物が溢れていても、カネが無ければ買えない」

のだ。


「社会内にどれだけ豊かさが溢れていても、自分が貧乏なら豊かな社会など意味がない」

のだ。


医療がどれだけ発展しても

医療費にかけられるだけのカネの余裕がないなら

やはり意味がない。


諸々の理由で社会の恩恵に浴せない事もある。

社会の恩恵に浴せない人間にとっては社会は存在価値がない。


それこそ「要らないもの」だ。


あんな社会の真の姿など

何も気付かずにいられたなら良かっただろうに


「知らぬが仏」

ではいられない程に

「もっと絶望しろ」

と言うかのように現実を見せつけられた…。


本当に嫌な世界だった。


だけどあの世界の全員がクズだらけだったとは言い切れないのだ。


「良いところもあったんだぞ」

と言う意味もあって


俺のスキルの景品カタログには、地球世界の、日本で買えた便利商品が掲載されてるのかも知れない…。


あの世界の中にあった「捨てたもんじゃない美点」。


安くて良い商品を国民皆が使えるようにと

薄利多売で製造販売してた良心的な企業もあっただろう。


「二度と飢えたくない、飢え死にする者を出したくない」

という思いから

「日本の食品は消費期限の長い食品添加物塗れになってた」

のかも知れない。


善意で

優しさで

安価で手軽な食べ物が溢れてたのかも知れない。


悪意が溢れ

敵意が溢れ

弱い者イジメが溢れていた

最低な社会の中に


コッソリと回りくどく

善意と優しさが存在していたのかも知れない。


(…この世界の神様は、本当に粋な事をしてくれるよ…)

と、しみじみ思う。


もしも今、鏡で自分の顔を見たなら、俺は

「泣き笑い」

しそうな複雑な表情の自分を目にした事だろう…。




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