神意
「ステータスオープン!」
と一応言ってみた…。
ーーうん。
そういう仕様ではない気はしていた…。
何も出ない…。
なので気を取り直して
「[自分自身を鑑定]」
と言ってみたところーー
名前:イリシオ
年齢:15
HP 14/15
MP 02/15
STR 25
DEF 20
AGI 15
DEX 15
INT 15
LUC 45
スキル:【廃品回収】
と出た。
どうやらステータスは
「自分自身を鑑定する事でしか見れない」
仕様のようだ。
HP=体力
MP=魔力
STR=攻撃力
DEF=防御力
AGI=敏捷度
DEX=器用度
INT=知力
LUC=幸運度
という解釈でいい筈。
どうやら今世の俺は随分と運が良いらしい。
ーーが。
それよりもやっぱり魔力が切れかけてる状態…。
さっさと町へ戻ろう…。
魔力切れとかになると急に【廃品回収】が使えなくなってたのかも知れないし…。
今後は「疲れを感じたら鑑定して魔力残量を確認する」ように気をつけよう。
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散々ウロつき回った割にはHPがほぼ減ってないので
HPは攻撃されて怪我をするとかじゃない限り
余り気にしなくても良いのかも知れない。
それよりもスキルを使うのにMPを消費するのなら
四つもスキルを持ってしまった俺は今後気を抜くと簡単にMP枯渇状態に陥るのかも知れない…。
この世界、MPとか全く誰も意識してない気がする。
というか、そもそも
「スキル=魔法の一種」
という認識も無いのかも知れない…。
「スキルを連発して使ってたら、急にスキルが使えなくなって、しばらくしたらまた使えるようになる」
という話は耳にした事がある。
そういう話を耳にした時点で地球出身者らは普通に
「スキル=魔法の一種」
「魔力が無くなると魔力が回復するまでスキルが使えなくなる」
という事情を予想できる。
「何故かスキルが使えなくなる時がある」
という謎を解くには
「スキル稼働に魔力を消費している」
という事実を知っておく必要があったのだ。
(…スキルによる魔力消費はちゃんと消費量と回復量を把握して管理するようにしないとな…)
と、思った。
ともかく結界魔道具が稼働してるのを確認してから
未だ日も暮れてないが柳林にログハウスを出してみた。
教会の人達が籠を編むのに、柳の枝を回収して回ってるのに…
結界魔道具の作用なのだろうが
誰も俺の方を見ない。
まるで存在してないみたいに完全無視して通り過ぎる。
しかも進路を塞ぐように立っても
「見えてないみたいなのに自然に避けて通り過ぎてくれる」
のだから…
結界魔道具の万能ぶりに寒気を感じた…。
お陰で
(結界魔道具を稼働してれば昼間でも林の中にログハウスを出して中で休憩していられる)
のだと気が付いた。
ちょっとした透明人間生活。
結界魔道具万歳!
そんな訳でログハウスの中で休憩。
ストレージから給水魔道具を出して水を出しカップに注いでから飲んだ。
(…美味い…)
清潔な水がいつでも飲めるという生活は良いものだ。
この世界では
「井戸水または川の水を煮沸して飲む」
「井戸水を汲み置いて、上澄みを飲む」
「水売りから水を買う」
の三択。
低ランク冒険者は
「公共井戸から汲んだ水の上澄みを水筒に入れて飲む」
しかない。
井戸に訳の分からないバイ菌が湧いたら真っ先に腹を壊して病気になる。
そんな心配から解放された事が嬉しい…。
一息ついたところで、【廃品回収】スキルを起動して草の回収・交換でゲットした薬・調味料・植物油などなどを全てリサイクルへ回す事にした。
有り難い事に草から得られた交換品はそれなりに価値があったらしく
ポイントは一気に529にまで跳ね上がった。
「………」
嬉しい。
嬉しいのだが…。
景品に対してものすごく欲が募る…。
(…もっと沢山リサイクルポイントが貯まったら、カセットコンロにカセットボンベ、電池、鍋一式が手に入って、ログハウスの中で簡単な煮炊きぐらいなら出来るようになるのかも知れない…)
という大それた欲…。
今までだったら想像すらしてなかった欲だ。
孤児院を出て以来、二度と温かい飲食物を飲食できないと思ってたので…
(手に入るなら、絶対手に入れたい…)
と思ってしまった…。
ともかく景品選択は慎重に
「本当に必要なものだけ」
を選ぶようにしたい。
先ずは無香料石鹸とタライ。
身体を洗うのにも服を洗濯するのにも使える。
今は春なのでこの世界の服でも乾きには問題ないが、そのうち景品で速乾性のインナーとかをゲットしたいところではある。
なので無香料石鹸とプラスチック製のタライ(白色)を選んだ。
ポイントは容赦なく引かれた…。
無香料石鹸は1個で5ポイント。
タライは50ポイント。
計55ポイントが引かれて残り474ポイントになった。
(残り474か…)
と思うと、余り試したくはないのだが…
それでも10ポイント使ってプラスチック製洗面器をゲットした。
(残り464)
タライが有るので不要だろうと思わないでもないが…
一応、この洗面器は「オマル」の代わりに仕入れたのだ。
この世界、野糞、立ちションは当たり前。
公衆便所もあるし、間に合えば公衆便所で用を足すが
まぁ普通に公衆便所は汚いし
その辺の道端にも普通に野糞が転がってる。
だがゴブリンの死骸、ホーンラビットの死骸をシレッと堆肥化して、しかもそれをリサイクルで引き取ってくれる【廃品回収】スキルなら…
自分の排泄物のみならず
その辺の野糞でさえも
「リサイクルポイントに出来る」
可能性があるのである。
(コレは試すしかないよな…)
そう決意して洗面器に排泄。
排泄物を「回収・交換」で「堆肥」化した。
それを更に「回収・交換」しようとするとーー
期待通りリサイクルの選択肢が出たのでリサイクルに出す事にした。
すると、リサイクルポイント…
「10」が加算された。
(リサイクルポイント474になった)
小便も一緒に出たが…
大便1回分の堆肥がリサイクルポイント10というのは…
(…物凄く割りの良いポイント加算なんじゃないのか?)
という気がする。
魔物の死骸からできた堆肥も1匹分が10ポイントだった。
それに対して、1回分の排泄物など、量としてはほんのちょびっとだ。
なのに魔物1匹分と同じ10ポイント…。
コレはもう
「排泄物の堆肥化にはポイントをサービス加算するから、じゃんじゃんリサイクルしてね!」
という
「排泄物の堆肥化推奨の意志」
が、この世界の神様の側に有るとしか思えない状況だ。
…どうやら
この世界の神様は
「テメエら!糞はキッチリ堆肥化しろ!」
と仰っているのだ…。
(マジか…。マジなのか…)
俺は冗談としか思えないエコロジカル推奨神意を神妙に悟った…。
色々とツッコミ所がある気はするものの
(今はとにかく魔力を回復させたい…)
と思い
早目に黒パンとサプリメントで夕食を摂り
早目に寝る事にした…。