気配察知スキル・聴覚上昇スキル
給水魔道具は「水が出る」という目に見える現象でも動作確認できるが、結界魔道具の方は鑑定して「［動力ON稼働中］」の文字を見ても「本当に効果が出てるの？」と、イマイチ結界効果を認識しにくい。
(魔石は20個もあるし、稼働しっぱなしにして魔石消費率を確かめてみよう…)
と思った。
「［動力ON稼働中］」のまま背負い鞄に結界魔道具を入れて、再び西門近くの草を「回収・交換」する作業に戻った。
毒草が多数混じっていたらしく
幾つかの毒が出てきたが…
勿論、リサイクルに出すに決まっている…。
意外に毒をリサイクルに出して得られるポイントは高い…。
不用品が交換品として出てくる事にガッカリするどころか、逆に嬉しくなる…。
ひたすら草むらを範囲指定して「回収・交換」していて、思わずギョッとする文字を目にした。
イネ科茎・葉→綱orゴザ
イネ科実→雑穀or雑穀粉
キンポウゲ科→毒
ユキノシタ科→風邪薬
ゴブリンの心臓→魔石orスキル
心臓部以外のゴブリン→堆肥
コレを見て思わず目を疑ったのは
「ゴブリン」が「死体」ではなく、ただの「ゴブリン」だという点だ。
【廃品回収】スキル…。
恐るべし。
背丈の高い草むらに隠れているゴブリンすら察知して
心臓をピンポイントで魔石化・スキル化してしまおうというのだから…。
今、生きてるゴブリンが本当に、今、死んで、俺は不意打ちで襲われる事もなく、ゴブリンのスキルを得られるのなら…
【廃品回収】スキルは心臓抜き取りピンポイント攻撃も出来るスキルだという事になる。
ゴクリ…と俺自身の唾を飲み込む音が俺自身の耳に届く。
(ゴブリンに襲われる前にゴブリンから心臓を抜き取って殺す…)
そう決意して
ゴブリンの心臓→魔石orスキル
という選択肢の「スキル」ボタンをタップしようとした…。
ガサッと草むらが割れてゴブリンが出てきた。
不思議な事にゴブリンはキョロキョロしている。
俺が目の前にいるのに見えてないみたいだ。
武器も構えていない。
それでいてクンクンと鼻を鳴らしてニオイを嗅いでいる様子…。
俺は迷わず
「スキル」
を選択。
ボタンをタップしたーー。
目の前でゴブリンが目を見開いて心臓を押さえながら倒れた。
俺の目の前に薄緑色の光の玉が現れて、それがスーッと俺の胸のところに吸い込まれて消えた…。
心臓部以外のゴブリン→堆肥
という選択肢の「堆肥」ボタンをタップすると
ゴブリンの死骸が急速に腐食し、腐臭すら生じさせずに、堆肥化した…。
目の前で生き物だったものが土に還ったのだ…。
死骸すらあっという間に自然に還してしまえるスキル…。
【廃品回収】などというトボけたスキル名の割りに…
(凶悪過ぎるだろう…)
と流石に自分でもドン退きした…。
(ともかく草を回収してゴザ、雑穀粉、毒、風邪薬へと交換しておこう)
と気を取り直して「回収・交換」を終えたものの…
不思議と楽しい気分は何処かに吹き飛んでしまっていた…。
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【廃品回収】スキルの初期ページを見てみると
「回収対象選択」
「選択項目一覧表示」
「範囲指定表示」
「鑑定スキル」
「気配察知スキル」
と表示されていた。
どうやらゴブリンは【気配察知】スキルを持っていたようだった。
タップしてみると
「ON/OFF」
と選択肢が出たので当然
「ON」
を選んだ。
すると
「範囲・詳細度設定」
「範囲:大・中・小」
「詳細度:大・中・小」
と出た。
まぁ普通に考えて範囲も詳細度も「中」を選ぶだろうと思い、双方「中」を選択して、設定保存した。
ーー途端に【廃品回収】用の半透明タブレットとは違う別ウィンドウが目の前に現れた。
自分自身の居場所を中心とした円形の地図。
地形、現在地、周囲の生物の分布。
それらが表示されていた。
「中」だと、自分の周り、半径500メートルくらいが表示されている感じか…。
索敵に丁度良さそうだと思う。
だけど町中で半径500メートル以内に居る人達がいちいち地図表示されてても、それはそれでウザい気がする…。
範囲を「小」にすると100メートル以内の生物が表示された。
どうやら地下のモグラ型魔物や穴ネズミ型魔物、遥か上空の鳥も表示してるらしいが…
詳細度を「小」にすると地下の生物と飛行中の鳥の表示が消えた。
町中では双方「小」で設定していた方が良さそうだ。
そして本気の索敵をする時には双方の設定を「大」にしてみると良いかも知れない。
試しに「大」にしてみると、半径1キロメートルの範囲の生物を地下も地表も上空も表示。尚且つ魔力量で色付けした状態の点滅表示で出てきた。
寝てる生き物は点滅がゆっくり。
起きて活動してる生き物は点滅ペースが速い。
地下のモグラやネズミは夜行性らしく今の時間は寝てる様子。
(…何気にさっきのゴブリンはハイスペックだったんだな…)
と判った…。
気配察知で俺の存在を察知してたのに、結界魔道具の効果で認識できないようにされていたのだろう。
クンクンと鼻を鳴らしてニオイを嗅いでいたのは、結界魔道具がニオイまでは誤魔化せないという事なのか…
或いはニオイですら誤魔化せていたが、ゴブリン自身の癖として気配察知とニオイ嗅ぎ取りを組み合わせて索敵してたという事なのか…
まぁ謎ではある。
俺が手に入れた結界魔道具が敵の目を欺く性質の結界を張る魔道具だという事は分かった。
今のところ結界魔道具がニオイまで誤魔化せるかどうかは判っていない。
それなら…
(毎日身体を洗い、服も洗濯する、事にして極力体臭を消した方が結界魔道具を張る事による認識阻害防衛が効果的になるだろう…)
と思った。
(もっと草を刈って交換品をゲットしよう…。リサイクルしてポイントを貯めれば無香料石鹸とタライくらいもらえるだろうから…)
今日の目的を無香料石鹸とタライに絞って、町を囲う外壁周りの草をひたすら「回収・交換」した…。
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その後も草刈りを続けた所。
ウサギ型魔物がこれまた
「回収・交換」
の範囲内に入ってきた。
素早く
「ホーンラビットの心臓→魔石orスキル」
を選択
「スキル」
をタップ。
ガサッと草むらの中で何かが倒れた音がした。
薄緑色の光の玉がまたも俺の胸のところに吸い込まれて消えた。
【廃品回収】の初期ページを見てみると
「回収対象選択」
「選択項目一覧表示」
「範囲指定表示」
「鑑定スキル」
「気配察知スキル」
「聴覚向上(中)スキル」
と表示されていた。
ホーンラビットは聴覚向上スキルを持っていたらしい。
「ON/OFF」
の選択肢では当然
「ON」
「上昇値:大・中・小」
はとりあえずは「大」を選択。
町へ戻った後は「小」にするようにしよう。
魔物の出る郊外で独りで活動する分には気配察知も聴覚上昇も助かるが、町中ではウザくて苦痛に感じるのかも知れない…。
こうしてスキルを手にしてみると…
こまめに切り替えが必要なんだな、と感じる。
それでも「独りで生き抜いていく」のに必要なスキルが、こうして濡れ手で粟状態で次々ゲットできたのは有り難い事だと思う。
ゴブリンは普通は複数で行動する筈なのに、俺が心臓をスキルごと奪った個体は1匹で行動していた。
気配察知の切り替えが出来ずに、仲間の気配がウザく感じられ、上手く付き合いが出来なかったのかも知れない。
「独りだと標的にされやすい」
という法則がある以上
「仲間に嫌われずに済むように」
ウザいと感じても態度に出さないようにするか
ウザいと感じる感性を鈍化させるか
いずれかの対策を取って
「嫌われる原因を作らない」
気遣いはしておくべきだ。
他人に対してウザいと感じる感性を鈍化させる
という気遣いは
魔物に体臭を嗅ぎつけられないように清潔を保つ
という気遣い同様に大切だと思う。
人間の本性の中には魔物と同様の弱肉強食心理も混じっている。
「餌だ」
などとナメられないためにも
社会的後ろ盾の無い貧乏・嫌われ弱者は隙を見せずにおくに限る。
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頑張って草刈りしまくったせいか…
かなり疲れた。
草刈り鎌を振るったわけでもなく
しゃがんだ体制で前進したわけでもなく
単に歩き回ってスキルを使いまくっただけなのだが…
もしかして
(…スキルを使うのには「魔力」に該当するようなエネルギーを消費している？)
のだろうか？と疑問が湧いた…。
