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婚約破棄の王国

作者: 男爵平野

某王国の漫画読んでてなんとなく思いつきました。

「レイフィリア・ストーンコールド! 俺はお前との婚約を破棄し、この愛らしいアティナ・ステフと婚約を結び直す!」

「……お戯れを、殿下」

「戯れなどであるものか! お前は誰でもできるような簡単な仕事をさも苦労であるかのように装って自分の能力をひけらかし、なおかつアティナに対して陰湿な嫌がらせを繰り返した! お前のような女は国母どころかこの国の臣民にすら値しない! 国外追放を命ずるゆえ、即刻退去せよ!」

「本当は処刑の予定だったんですけど、私がサンマルティ殿下にお願いして追放に減刑したんです。感謝してくださいね、レイフィリア様?」

「……」


 貴族学校の卒業パーティーで唐突に始まった、どこかで見たようなやりとり。

 それを会場の隅で友人達と見ていたキーア・シュゲールは、陽の光に弱い両目を保護する、色つき眼鏡の奥にある瞳を戦慄かせてこう呟いた。


「え……えらいことや……せ、戦争じゃ……!」





 貴族の子弟ならば誰もが入学できる学院が平民に門戸を開いたのは今から二十年ほど前の話だ。

 当時の国王の「平民の中にも学びを得るべき人材はいる」という思想の元それは施策され、卒業した平民は政財界でそれなりに成功していた。彼らは自分を引き上げてくれた国の施策に感謝し、還元もしてくれているので国王の判断は正しかったと言えるだろう。

 とはいえ、貴族籍があれば無試験での入学だが、平民は学業、マナー、知識、生活態度など諸々を厳しく審査され、その上で年間十人ほどしか入学が認められない。

 これはあたら数を増やして学院自体の品位、格が落ちるのを防ぐためと、平民が知らず無礼をしてもめ事になるのを防ぐためだった。

 キーア・シュゲールはそんな平民入学者の一人である。シュゲール商会の息子として生まれた彼は生来の学力が高く、また機転も利く。生まれつき光に弱い目をしているため、色つき眼鏡で保護しているが、目利きもできる。

 それを理解した親が入学を勧め、キーアもそれに応えた。


 学院では商人の息子らしく、同学年や同級生の貴族と繋がりを作り、また商機に結びつきそうな知識を積極的に学んだ。個人的な知識欲として、外国語も好んで学び、剣技や魔術などの実技を別にすれば成績は上位を保つ模範的な優等生だった。

 もっとも、この辺りは成績不振や素行不良などで退学になれば平民はこれまでの学費、寮費、制服代、教科書代などの全てを弁済せねばならないという規約があるためだが。

 如才ない話と振る舞いでそうと思われないことが多いが、成績優秀者である最高クラスの中でも上位の成績なのがキーアだった。

 とはいえ、それをひけらかすことはしなかったし、前述の実技のせいで平均的な成績はやや低くなっているということで、そこまで目立つ存在というわけでもない。

 あくまで一般的な平民入学者の枠を出ない。それがキーア・シュゲールの学園生活だった。

 ともあれ、そんな彼の呟きを聞いて、同じくそれまでは卒業パーティーを楽しんでいたアンテル・ウェルチが落としそうになったグラスを持ち直して口を開く。


「い……いやいや、キーア。戦争って……」


 友人の言葉にキーアは思わず出てしまった地方の訛りを誤魔化すように咳払いをする。入学してからは極力抑えていたが、動揺するとまだ故郷であるカンセー地方独特の訛りが顔を出してしまう。


「いや……なるよ、戦争。ストーンコールド令嬢がどれだけ献身的にあの殿下を支えていたのは誰もが知ってることだよ。それに、あの方が嫌がらせをするなんてあり得ない。殿下を支え、政務すら一部を担い、それでいて成績は常に一位。それに令嬢の性格からして、そんなことをする人柄でもない。皆も、身分を気にせず助けてもらったことがあるだろう?」


 父親であるストーンコールド宰相は政で情を斬れるような人柄だが、その娘である令嬢はおしなべて優しい。相談されれば、忙しい時間を縫って手助けをし、困っていると聞けばわずかな助言であっても残していく。そんな彼女だから、信頼している生徒は多い。

 現に、キーアの言葉に周りの皆は頷いていた。


「であるなら、あれは冤罪だ。自身の貢献を足蹴にされて、挙げ句謂れのない罪で国外追放? そんなことされたら、たとえ令嬢が黙っていても、彼女の父親が黙っていないだろう」

「それは……しかし、さすがに……」


 ストーンコールドの父親はその家名である石のような冷たさを持った貴族だ。とはいえ、情がないわけでもない。娘のことは愛しているし、だからこそ厳しく育ててきた。同級の繋がりで二度ほど家に招かれてカンセー地方の商品について商談――とも言えない雑談に近いものをかわした(残念ながらその取引は形になる前に立ち消えになった)が、それだけでもその人間性ははっきりと理解できた。

 そんな父親が、娘をここまで侮辱されて黙っているわけはない。宰相と言えど武力も有している。それもストーンコールドの騎士は精鋭で鳴らしている。今回の件を知れば、宰相は憤怒を持ってその騎士団の出動を命じるだろう。

 それはなにより騎士であるアンテルが良く知っていることだ。


「でも宰相様が国を乱すことをするだろうか? あの方が規律に厳しいのは俺でも知ってる話だぜ?」


 なんとかひねり出されたようなアンテルの言葉に、キーアはどうしたものかと思案する。戦争は起こる。必ず。それをどう説明したものか。

 そうして、気づく。


「アンテル。君は卒業したら騎士になる。僕は商人だから、直接の繋がりは少し薄れるかも知れない。でも、君が学園で僕と育んでくれた関係は消えないと思っている。僕は見ての通り、実技が酷いからね。迷宮探索の実技試験では君や皆がいなければ見られた成績にならなかっただろう。退学はないだろうけど、クラスを落とされるぐらいはあったかもしれない。だから、それも含めて感謝してる」

「お、おう。どうした、急に……なんか面映ゆいな」


 実技の成績が低いキーアは自身の身を守るぐらいはできるが、魔物退治などは苦手だ。貴族は国に蔓延る魔物の退治が義務になっているので、学院の生徒にもそれが課される。

 その一つが魔物が出現する迷宮探索の試験で、学院の近くにある迷宮を練習用として一定の探索を試験内容として実施されていた。

 そこでどうすべきか悩んでいたキーアに、アンテルと友人達が自らの仲間に誘い、キーアは道具や薬を用意し、地図作成などの後方支援で貢献したのだ。

 もしかすれば、キーアだけでもなんとかなったかもしれない。だが、アンテルたちのおかげで良好な成績を保てたのは確実だった。


「それだけ感謝してるってことさ。卒業した後に君がなにか危機に陥ったのなら、連絡してくれ。僕にできることなら、助けになるよ。アンテルだけじゃない、皆も。僕は全員に感謝している」

「……ん、分かった」


 多くは語らない、その返事だけでアンテルや周りはキーアが真実そうするだろうと理解していた。

 そして、ここからが本題とばかりにキーアは指を一本立てる。


「さて……そんな風に皆に助けられた僕がだよ。たとえば……今このパーティーでアンテルの後頭部を不意打ちでぶん殴って昏倒させ、倒れた彼に対して「騎士アンテルなどなんのことはあらん。どうせ僕を助けたのも親から譲られた武具のおかげで誰でもできるような事だった。それを恩着せがましくして、もう二度と顔も見たくないからこの国から出て行ってくれ!」なんて放言したら、どうなると思う?」


 そこまで言って、アンテルはようやく顔を青ざめさせてキーアのことをじっと見た。


「せ……戦争じゃ……」


 なぜかカンセー地方の訛りで言ったアンテルに頷く。彼だけではなく、キーアと親交を深めていた友人達も同じように顔を青ざめさせていた。


「で、でも、今ならまだ、殿下が謝罪すれば戦争は回避できるんじゃないかしら?」


 アンテルの代わりに言ったのはシエラ・マックーマだ。魔術師の女生徒であり、アンテルと同じくキーアを助けてくれた一人でもある。休日にはアンテルと連れだって街に出ているようであるし、家格も釣り合う貴族同士なので卒業したら婚約して結婚の準備に入るのではないかとキーアは見ている。

 そんな彼女の言葉に、キーアは首を振る。


「残念ながら、その可能性も消えたね。最初にストーンコールド令嬢は「お戯れを」って言っただろう? あれは「今ならおふざけで済みます」って意味があった。あるいは「とりあえず場所を移しましょう、お話があるならそこで聞きます」って意味もあったかもね。あの令嬢の聡明さと優しさならそれぐらい含んでいてもおかしくない。けれど、殿下はなんて返事した?」

「戯れなどであるものか……」

「そう。他ならぬ殿下がそれを否定した。だからその目もなくなった。そもそも、謝罪したところで、あんな風に公衆の面前で淑女の頭を踏みつけるような宣言をされて許すと思う? それも、国外追放なんて言われてるんだぜ。殿下は勘違いしてるけど、王族が独断でそんなことを決める権利はないし、冤罪をふっかけられて自国から出て行けって言われたら、シエラさんはどうする?」

「せ……戦争じゃ……」


 これもなぜかカンセー地方の訛りに頷く。ここに至ってその言葉に現実味が増してきたのか、彼らの周りにいた人々も固唾を呑んでその会話を聞いていた。


「ていうか……だとしたらこれヤバくないか? 呑気にパーティーしてる場合じゃなさそうなんだが」


 戦争、内乱ともなれば国が荒れる。こんな風に談笑している場合ではないだろう。どちらの勢力につくのかも含めて、すぐに動かなければならない。

 だが、そんなアンテルに対してキーアはひらひらと手を振った。


「ああ、大丈夫。戦争って言ってもすぐ終わるから」

「終わるって……本当かよ」

「まず第一に、今は国王陛下と王妃様が外遊で隣国に行っていて、近衛が不在であること。まあ陛下がいないから殿下もこんなバカをやらかしたんだろうけど。とにかく精強であるストーンコールドの騎士を止める戦力がないのが一つ」


 続いて二つ目の指を上げる。


「第二に、殿下ではなくストーンコールド宰相閣下が陛下不在の国を預かる存在であること。今回の件、どっちに理があるかといえば確実に令嬢側だ。それに加えて陛下不在の国で執政するほどの力と信頼を持つ宰相閣下を敵に回したいって思う貴族は少ないと思うよ。王位継承者は殿下だけじゃないしね」


 そうして三本目の指を上げる。


「第三に、これは第二にも関連することだけど、殿下に味方する勢力がいない。あの人に王権はないから貴族達を招集する権利もないし、あんな振る舞いをする人に対して商人だって味方しようとは思わないだろうね。王族だからって誰もが傅くわけじゃない。国を真っ当に機能させるということを担っているからこそ、周りの貴族が支えてくれる。その貴族のために、平民たちも働く。大雑把にいえばそうなるのに、その一番上が傲慢になったとして誰がついていくのか……僕には分からないね」


 これはあくまでもキーアの主観だ。だが、貴族の子弟が多いこの場であっても異論が出ないということは、ある程度は理解されているという事実でもある。


「義もなく、理もなく、戦力もなく、この国最大手の勢力を敵に回す。戦争にはなるけどすぐに終結するよ。そうだね……ストーンコールド領と王都の位置を考えれば、一週間、長くて半月だね。陛下達が急を知って帰国するまでに決着はつくはずさ」


 言い終えて、キーアは肩を竦める。いつの間にか広間は静まりかえり、周りどころかなにか一説ぶっていたサンマルティや、当事者であるレイフィリアすらも彼らの方を見てその言葉を聞いていた。


「だからさ、ある程度食料を買い込んで、自領の警備を厳しくする程度でいいと思うよ。争いに乗じてよからぬことを考える勢力は現れるかも知れないしね。あと、王都とストーンコールド領の間にある土地の人は、どうするかを決めておいた方がいいかもね」


 それを知ってか知らずか、緊張感のない笑みを浮かべて続ける。


「だけどまあ、のんびりしてる場合じゃないのも確かだね。シュゲール商会としても商機だから、僕は早引けさせてもらうよ。アンテルたちも一応ご両親に遣いとか出した方がいいかもしれないよ。パーティーはまあ、落ち着いたら個人的に開催しよう。商会で主催して、皆には招待状を送るよ」

「そうだな……そうするか」

「そうね。まあどの道パーティーって雰囲気じゃないわ、これは」


 言って、すぐさまキーアが身を翻して会場から退出していく。

 アンテルがグラスを置いてシエラと連れだって歩き出し、周りにいた生徒達も皆遣いを出すなり直接報告するなりの動きを見せ、全員が慌ただしく会場から消えていく。

 そんな中、主役であるはずだったサンマルティとアティナは制止もできずに呆けたままの顔で動けず、対照的にどこか楽しげに笑みを浮かべたレイフィリアもただ黙ってキーアの背中を見送っていた。





 結局の所、戦争はキーアの言うとおりにすぐに終結した。激怒した宰相が呼び寄せたストーンコールド騎士団を止める貴族はどこにもおらず、むしろ街道を率先して開けて間接的に手助けするほどだった。

 王都に進軍してくる騎士団を誰も止められず、逃げだそうとしたところをあっさりとサンマルティとアティナは捕らえられた。

 ここまで見れば反乱に近いものであるが、二人を捕らえた宰相は彼らを貴族牢に放り込んだ後、戦力の大半を領地へととんぼ返りさせた。

 少数は治安維持のために残していたが、それも国王が帰国する前にあっさりと領地へと戻していった。

 これは横暴な振る舞いをした王子とその愛人を誅するためだけで、国自体に叛意はないと示す行動だ。

 本来はそういう風に見られるわけはないのだが、卒業パーティーでの振る舞い、そしてこれまでのレイフィリアの献身を無視したサンマルティの横暴さはそれを可能にした。


 つまり「王子がそういう風に振る舞うのなら、王家は臣下がどれほど敬ってもそれを暴力で返してくるのではないか」という疑念である。

 結果として国王が戻ってきたときは、すでに全てが終わっていた。帰国した彼が目にしたのは、捕らえられた息子とその愛人の姿であった。

 そこからどう話し合いが持たれたのか、下々のものには分からない。沙汰としてサンマルティは王位継承権を剥奪されて僻地での療養が命じられ、ほどなくして病死(下った時代では自害させられたのだろうと記された)となった。

 アティナは王家の人間を惑わせたとして貴族籍を剥奪されて平民へと落とされた。修道院に入ることも許されず、その後の生活は伝わっていない。

 そしてストーンコールド卿は今も変わらず宰相の座に着いていた。事件の前よりも勢力を強め、他の貴族と共に国政を仕切っている。


「ま、そうなるよね。勢いと無策で政治的な動きをするべきじゃないってこと」


 そう呟いて、キーアは首を振った。

 シュゲール商会としてはさしたる儲けはなかった。ただ、パーティーでの言動を聞いたレイフィリアがそれを父親に伝え、面白がった宰相がキーアを家に呼んで以前立ち消えになった商談を復活させ、繋がりができた。

 また、再度行われた卒業パーティーは当初シュゲール商会が主催する身内だけの小規模なものになるはずだったが、これもストーンコールド家主催の、生徒全員を招いてのものとなった。

 もっともこれは、王家のやらかしをストーンコールド家が補填するというパフォーマンスもあったが。

 そんなこんなで騒動から半年。すっかり落ち着いた国内で、商人としての活動を始めたキーアはストーンコールド邸に招かれ、応接室へと通されていた。

 しばらく一人で供された茶を楽しんでいたが、扉の開く音と共に立ち上がる。


「しばらくぶりね、シュゲール君」

「お久しぶりです、ストーンコールド令嬢」


 商人の礼をして顔を上げると、うっすらと微笑んだレイフィリアと視線が合った。

 金糸の髪に白磁の肌。翠の瞳に形の良い唇。こちらに歩いてくる姿だけですら、見惚れてしまうぐらいに見事な姿勢だ。

 美しい女性だ。そう思う。学院の時もそう思っていたが、卒業して誰もが認める淑女となった。

 自分を支えてくれた彼女のような女性を排除しようとしたサンマルティの気が知れない。他人を憚って決して口にすることはないが、それだけは思う。


「先日はやりなおし卒業パーティーの開催、まことにありがとうございました」

「いえ。手はずはあなたたちシュゲール商会が整えていたのだもの。むしろお礼を言うのはこちらだわ」


 そんな事をいいながら座り、改めて淹れられたお茶を楽しむ。しばらくの間、学院を卒業した人間の近況や、商売で動き回った地方の雑談で時間を過ごす。

 商人であるキーアからすれば即断即決、時は金なりという心情ではあるのだが、それはそれとして貴族にはこうした前置きなりやりとりなりが必要なのだという事は学院で学んで理解している。


「ところで、シュゲール君の商会は動物も扱っているとか」

「ええ。軍用馬や牧羊犬にする為の繁殖牧場なども取り扱っていますね」


 その答えを聞いて、レイフィリアは小さく笑った。といっても、注視してようやく分かる程度の動きだ。それなりの付き合いのあるものにしか分からない仕草だった。

 この時代、動物を専門に管理するというのは膨大な時間と土地が必要になる。もちろん、諸経費もだ。

 そうして、そうまでして需要があるということは儲けにもなる。シュゲール商会はそのあたりに目をつけ、商会として繁殖用、飼育用の牧場を手に入れていた。


「犬を二匹欲しいの。お願いできるかしら?」

「ええ。構いませんが……どのような犬種でしょうか? 軍用犬でも、愛玩犬でもおりますが」

「一匹は愛玩用ね。顔、頭の形、胸まわり、足の太さ……どれをとっても非のうちどころがない、仔牛も顔負けの大きさの愛玩犬が欲しいわ」

「……ふむ」

「もう一匹は猟犬を。気品がある、王侯貴族の気高さを体中から発散させている猟犬をお願い」

「……」


 中々に難しい注文だ。シュゲール商会が管理している牧場を全て当たって該当する犬が何匹いるかどうかという話だろう。

 だが、これをまとめればストーンコールド家とより結びつきが強くなる。今国内で権勢を強めているこの家とそうなれれば、さらに儲けが出るだろう。

 もちろんそんなことはおくびにも出さず、キーアは頷いた。


「分かりました。商会の牧場を当たってみます。目処がついたら手紙を送りますので、商会宛てに返事をしてくだされば連れて行きますので。他に何かご入り用のものはありますか?」

「そうね……後は甘いものがあれば嬉しいかな」


 女性の例に漏れず、レイフィリアも甘味を好む。そんなわずかな少女らしい部分に笑いながら、またも頷く。


「それならば商会運営の店で出している甘味の新作があるので、それもお持ちしましょう」

「お願いね。取引が上手く行ったら、またお父様との面会を段取りするから」

「ありがとうございます」


 座りながら頭を下げる。一国の宰相ともなれば、使える時間は限られている。いかな商談を復活させたといえど、一介の商人が頻繁に会えるものではない。

 だが、娘が取りなしてくれれば無碍には扱えないだろう。それも、一応はキーアはレイフィリアの恩人という認識でもある。

 サンマルティの起こした騒動ははた迷惑であったし、結局儲けはそれほど出なかった。

 だが、こうしてストーンコールド家との繋がりが強くなったのは殿下様々だと思う。

 もちろんそれも顔には出さず、キーアは満面の笑みを浮かべる。こういうとき、貴族でなく平民であるのは、感情を表に出しやすくてありがたいことだった。


「では、今後ともごひいきの程を」

「ええ。シュゲール君。今後ともよろしく……末永く、ね」


 レイフィリアの言葉、その最後の部分がどういう意味を持つのか。

 それはもう少し後にならないと分からないことだった。


思いつきを作品に出したので色々と書き方とか変えてます。

読みづらい。

わかりにくい。

誤字脱字。

面白かったorその反対。

等々、何か感想がありましたらいただければありがたいです。

あとできれば評価も入れてくださるとなお嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通に考えても普通に王子は病死(処刑)になるわな。 勝手に王子が破棄し追放しようとした時点で王権を侵害しているので国家反逆罪に該当しますので国家反逆罪の処分は処刑しかありません。 国家反…
[気になる点] ラストの匂わせがメチャ気に成ります!続きを、と、までは申しませんが、こう何か一つ、お願いしたいですよ
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