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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第二章   砂の国の争乱
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第五十一話  手紙

 セリスティナ。


 このような手紙を残すことは、お前の重荷になるやもしれないとも思ったのだが、私は結局、筆を執ることにした。


 このまま破り捨ててくれても構わない。


 だが、もし、ほんの少しでもその気があるのなら、どうか読んでみて欲しい。

 この手紙が、少しでもお前の一助になることを祈る。

 

 ここに記すのは、私の懺悔と後悔だ。



 私はずっと思っていた。神とは何と無慈悲なのだろう。神は私達を決して助けてくださらない。 

 私達は見捨てられているのだと。

 

 それは、神の使い最大の禁忌。忌むべき思想だと理解していたが、若き日の私は、ずっと思っていたのだ。

 

 私は若き日、父の命で下界へ降り、そこで目の当たりにした。


 ここでは詳細は省くが、それは私の人生観を変えるには十分であった。


 私には、この世界が地獄に見えたのだ。

 人々の思惑が入り乱れ、悪意が人を殺し、際限のない負の連鎖が続く、地獄のような混沌の世界。


 それなのに何故、神は救済の手を差し伸べてくださらない。

 私は神を疑った。


 だから、私は己に課した。私がこの世界を救わなければならないと。

 神が居ないのならば、私が神になればよいと。


 セリスティナ、私も人のことは言えぬのだ。若き日の私は、お前と似たような考えであったからな。


 そのような考えから、私は教会を興し、自分を大きく見せることに邁進した。


 次第に教会は大きくなり、それと同時に私の名も上がっていった。


 その時の私は、もうすでに道を見失っていたのだろう。


 人々を救うと謳っておきながら、その心はとうに無く、私は教会を大きくすることのみに没頭するようになった。

 

 その頃であった、お前と下界を廻ったのは。


 私はお前に道を示すと言いながら、その実、他国へも我が教会を広めようという欲望を秘めていた。

 

 私のことを軽蔑するか?


 それはそれで構わない。これは、ある意味ではお前への忠告なのだから。


 諸外国を歴訪する最中、お前は言ったな。

 

 私は、この為に生まれたのですね。神から私は使命を与えられたのでしょう。私が世界を変えねばなりません、と。


その時のことは今でも忘れられない。

 何という傲慢さか。何と青く、未熟で、何と愚かか。


 だがな、私はその時思い出したのだ。私の原点を。


 笑えるであろう?私は、傲慢で青く、未熟で、愚かな、その言葉で正気に戻ったのだ。


 それと同時に気付いた。もしかすると一生とは、このような気付きを増やして行くことなのかもしれないと。


 もしかするとそれこそが、神の啓示ではないのかと。


 そこから私は、気付きを増やす為、よく隣人を見るように努めた。今まで、見ていたようで見ていなかった本質を。


 そうすると見えて来たのだ。今まで見えていなかったものが。


 人々の悩みは千差万別。ならば、幸せの価値観もまた違う。


 私は初めから間違えていた。世界の救済と言う言葉の、何と空虚なことか。

 人により幸せの定義、形が違うのだから、世界を一括りにすることは出来ない。そのことに気が付いた。

 

 世界の救済では駄目なのだ。世界の救済ではなく、個人の救済をしなければ、真に世界は変わらない。


 恐らく、それこそが、我ら神の使いに与えられた神からの使命。私はそう思っている。


 セリスティナ、お前はまだ若い。ならば、これから気付きを増やしていけばよい。


 お前なら出来る筈だ。なにせ、お前こそが、私の啓示の神なのだから。


 お前ならばどこまでも羽ばたける。お前ならば、私がついぞ到達できなかったその場所へ、辿り着ける。


 私の大切な、可愛い、唯一無二の天使よ。


 心からの愛と祝福を。


 


 「叔父上…………」


 その呟きは、アガペウス教会の室内でひっそりと響き、やがて消え失せた。


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