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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第二章   砂の国の争乱
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第四十八話  新たなる星

 ライサンとリーラの激しい攻防が続いている。


 リーラの拳がライサンの顎に命中。

 

 ライサンはすかさず反撃。前蹴りをリーラに見舞う。


 その強烈な前蹴りの威力で、リーラの身体が浮いた。


 リーラに生じた僅かな隙。これは、ライサンにとっては千載一遇の好機。

 

 追撃の上段蹴りをリーラの頭へ振り抜いた。


 しかし、僅かに遅かった。


 リーラはそれを屈んで躱し、反撃の拳をライサンの鳩尾へ。


 「ぐっ!」


 ライサンは苦悶の表情で呻いた。


 そこから立て続けに、リーラの拳がライサンを襲う。


 二発、三発、四発とライサンに全弾命中。


 堪らず膝をつくライサン。


 間髪入れず、リーラの蹴りがライサンを襲う。


 ライサンは、鋼鉄をぶつけられたような衝撃を味わった。

 衝撃により、ライサンの身体が吹き飛んだ。


 背中で地面を引きずりながら、リーラから十メートル程離れたところで体が止まる。

 

 「くっ、くそ」


 ライサンは理解していた。


 押され始めている。


 その理由は分かる。恐らく、リーラの力の対価は理性だ。

 判断能力や思考能力が低下する代わりに得られる豪腕、剛力。

 対して自分のこの力は、自分の肉体を破壊することで得られる諸刃の剣。

 戦いが長引けば、不利なのはこちらだ。

 すでに戦闘が始まって、かなりの時間が経過している。

 活動限界が近づいているのだ。


 「まいったな、ハハッ。カズヤといい、この少女といい、世界は広いな」


 今のこの力は、自分の限界を超えた力。

 その力を持って挑んでも、尚も届かない強敵。

 ライサンは、この危機的な局面にあっても心が昂っていた。

 多分、世界にはまだまだいるのだ。このような強者が。

 それを考えただけで胸が高まる。


 リーラが迫ってくる。

 こちらが弱っていることは見抜かれている。勝負を決めるつもりかもしれない。

 迎撃する為に、ライサンは足を踏み出した。

 しかし、身体が動かないことに気付く。もうとっくに、限界を迎えていたのだ。


 「ここまでか…………」


 ライサンが諦めたように、悔しそう呟いた。


 もう、リーラの拳が目前まで迫っている。


 ライサンは唐突に空を見上げ、声を張り上げた。


 「時間は稼いだ! あとは頼む!!」



 その瞬間、直前にまで迫っていたリーラの拳が止まった。

 

 「了解! あとは任せとけ!!」


 リーラの拳を、和也の拳が止めた。

 衝撃と共に、爆発音が鳴り響く。その衝撃の余波が、どこまでも広がっていく。


 リーラは、突然現れた敵を視認した後、後ろに飛び退いて距離を取った。


 思考力が低下している今の状態でも分かった。

 この敵は、以前とは何か違う。別人と言っても良いかもしれない。

 それ程の何かを秘めている。

 気付けば、自然と腰の刀を抜いていた。

 ここからは、戦闘スタイルを変える必要がある。

 狂戦士は自分の直観に従った。


 

 和也は、アスクレピオスに語り掛ける。

 そして、アスクレピオスはそれに応えた。

 全身が碧の輝きに包まれる。

 輝きは次第に増し、周囲を照らしだす。

 それはまるで、輝く星。力強いその輝きは、新たなる誓い。約束の新星。

 

  アスクレピオスの(アスクレピオス・)新星(ノヴァ) 

 

 和也がそう名付けたこの力は、身体の再生に廻される筈のアスクレピオスの膨大なエネルギーを身体能力の強化に廻すことで、無双の力を得る奥義。

 アスクレピオスとの同調が強まったことで可能となったこの技は、和也の切り札。

 日に一回のみ。それも、時間にして二分程度の時限技。


 つまり、その極短い時間で、目の前の少女と決着をつけなければならない。

 

 「―――いくぞ、リーラ!」


 和也がリーラへ迫る。真正面から魔石の剣(アストール)を振るう。

 リーラは、それを刀で合わせる。


 鍔迫り合う、剣と刀。


 だが、それも一瞬。


 和也が剣を振り抜き、リーラの身体が後方へ吹き飛ぶ。

 その光景は、いつの日かの逆。


 和也は、すかさず追撃を選択。激しい剣の乱舞を繰り出す。


 防戦一方となるリーラ。


 「ぐああああっ!!」


 リーラが咆哮を上げた。

 感情のままに、怒りをあらわにする。

 それは、リーラが追い詰められている証左。


 尚も続く和也の激しい剣の乱舞。


 その剣の嵐から逃れようと、リーラは後方へ飛び退いた。


 それを読んでいたように、和也はすぐに距離を詰める。


 リーラが地面に着地すると同時に、和也の剣が振り抜かれた。


 リーラは何とか刀でガードするが、安定しない体勢で受けてしまった為、身体が泳ぐ。


 和也がその隙を逃す筈がない。


 和也は、下段から上段への鋭い斬撃を繰り出した。


 リーラは咄嗟に刀で合わせるが、中途半端な態勢で受けた為、剣の衝撃を受けきれなかった。

 衝撃により、リーラの手から刀が離れる。 

 甲高い音を響かせて、リーラの刀が空中を舞う。

 リーラは完全に無防備となる。


 和也は覚悟を決める。相手を殺す覚悟を。この少女の暴力は危険すぎる。

 ここで見逃せば、次は仲間が殺される可能性がある。

 それだけは、見過ごすわけにはいかない。

 

 だから、精一杯の敵意と敬意を込めて、上段から剣を振り抜いた。


 鮮血が舞う。鮮やかな鮮血が。


 和也は、自分の目を疑った。

 

 その鮮血は、リーラのものではなかった。


 「ぐっ、坊や……またやってくれたわね」


 パルテノが、またもやリーラを庇った。


 右腕で和也の剣を防いだ為、右腕が切断されている。

 そして、剣は右腕だけでは防げなかった。

 剣は右腕の防御を物ともせず、パルテノの身体を裂いた。

 傷は深い。間違いなく致命傷。


 「パルテノ! どうして!!」


 リーラが叫んだ。いつの間にか狂戦士化を解いている。


 パルテノは、口から大量の血を流しながら、リーラの目を見つめる。

 そして、肩口を使って、リーラを抱き寄せる。


 「これじゃあ……抱きしめてあげることも出来ないわねえ」


 「そ、そんな……パ、パルテ……」


 「……そういう顔も出来るようになったのね。本当に……成長したんだから」


 その後、首だけを和也の方に向けて、パルテノは言った。


 「どうやら、坊やの勝ちのようね。勝利者に一つ、特典情報を与えるわ。アタシが死ねば、ある仕掛けが発動することになっている。……どう受け取るかは、貴方の自由よ」


 それを言い終わると、口から血を溢れさせながら、リーラに言った。

 とても悪事を働いてきた者と思えない、気持ちの良い笑顔で。


 「リーラ…………先に……逝ってるわ…………ね」

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