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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第二章   砂の国の争乱
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第四十六話  救済への道

 久しぶりに日の光を浴びる。日差しが肌を焼く感覚により、実感が湧いてくる。

 セリスは目を細め、空を眺めた。


 和也、お前は本当にすごい奴だ。


 拘束されている際、和也がセラフから修行を受けているという情報を聞いた。

 その情報に驚いたのは、つい数日前。その驚きが褪せぬ内に、この度の釈放である。

 まったく、驚かされてばかりだ。

 

 今日、拘束が解かれた。セラフからの恩赦が降りたと聞いた。

 和也がセラフを説得したのだろう。

 何という奴だ。

 

 セリスは自分の契約者の事が誇らしかった。

 あの人間は、どんなに苦境に立たされても絶対に諦めない。

 その思いの強さが、道を切り開き続ける。


 それに比べ、私はどうだ。

 この都市に来てした事と言えば、狭い部屋で、ただ時を過ごしていただけ。

 何という不甲斐なさ。自分は無力だ。

 ただの一つも、ただの一人も変えることが出来ない。

 そう。今、目の前を歩く人物の事もそうだ。

 結局、私の言葉は彼には届かなかった。


 セリスは目の前の人物、クラメトスの背を見つめる。

 クラメトスは、セリスと一定の距離を開け、歩き続ける。


 二人の間に会話は無かった。ただ、黙って歩く。

 お互い、すでに言葉は尽くした。

 折り合いのつかぬ意見は、どこまでいっても平行線。

 もう、交わす言葉は無い、ということなのだろう。


 セリスはそう思っていたのだが、不意にクラメトスが声を掛けて来た。


 「あの者達を見なさい」


 クラメトスが指でその方向を示した。

 その指の先には、空を駆ける同胞達。

 

 そして、クラメトスがセリスに問う。


 「あの者達が、何を成しに行くのか分かるか?」


 それならば分かる。

 あれは、下界への調査隊。下界へ赴き、情報を集め、我々の叡智の一部とする。

 その為の部隊だ。そして、その責任者は目の前にいる人物。

 エクセルラン家の一族として、それぐらいは分かる。

 例え、不肖の娘だとしても。


 「はい父上。それは当然分かります。あの者達は下界への調査隊。情報収集を目的とした」


 「…………それだけか?」


 それだけ、とはどういう意味だろう。答えとしては間違っていない筈だ。


 クラメトスは、答えを返せずにいるセリスを見て、長く溜息を吐いた。


 「お前は本当に、何も視えていないのだな」


 「……それは、どういう意味でしょう?」


 「下界の情報収集。間違ってはいないな。だが、正解でも無い。あの者達はな、下界へ赴き、下界の救済を成しているのだ。あの者達の出来る範囲で」


 「下界の救済?」


 「そうだ。下界の迷える者達に寄り添い、教えを説き、時には自らも迷いながら、一歩一歩確実に」

 

 セリスは、返す言葉が見つからなかった。

 自分の視野の狭さ加減に、自分自身で驚いたから。

 

 「私はな、その試みこそが何よりも尊く、得難いものだと思っている。そして、こうも考えている。目の前の者達を救えずして、世界など救えるのだろうか? 世界の変革に近道はない。世界を変える前に、まずは隣人をよく見なさい」


 クラメトスはセリスの方に向き直り、最後にこう言った。

 

 「前にも言ったが、もしかしたら、これが最後かもしれないからな。よく聞きなさい、セリス。―――自分すらも変えられぬものに、世界は変えられない」

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