表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第二章   砂の国の争乱
44/163

第四十三話  破邪の盾

 次は左から怪物の牙が迫る。

 エイナはそれを躱すが、目の前に別個体の怪物が迫っていた。

 

 「くっ!」


 目の前に迫る怪物の爪を躱しきれず、肩が裂ける。


 痛みにより一瞬、足が止まる。


 狡猾な捕食者は、その隙を逃さない。


 次々に迫る爪と牙。なんとか致命傷は避けているが、身体の傷が増えていく。


 すでに血を流しすぎている。頭がぼんやりし、目が霞む。


 怪物の猛攻は止まない。統率の取れた連携で、エイナを追い詰めていく。


 ……まずい。なんとかしなきゃ。


 焦る気持ちとは裏腹に、足が言う事を聞いてくれない。


 やがて、エイナの足が完全に止まった。


 エイナは呪った。自分の未熟さを。自分の軽率さを。


 偉そうなことを言っても、この程度か。

 はぁ……私って本当に、未熟……だな。


 怪物達が四方から一斉に迫る。

 怪物達は待っていたのだ。獲物が疲れ果て、足が止まるこの時を。


 「……ごめん。ユウト、兄さん、皆…………父さん」


 


 「諦めるな! エイナ!!」


 「なっ―――!?」


 突然、優斗の叫び声が聞こえた。

 気が付くと、エイナは優斗に抱え上げられていた。

 更には、いつの間にか怪物達の包囲から抜け出している。


 優斗はエイナを抱え上げたまま、怪物達に注意を向ける。


 その後、エイナをそっと降ろし、優しく微笑む。


 「エイナ、ごめんね。許して欲しい」


 「ユ、ユウト……。わ、私の方こそ。でも、今はそんなことより……」


 エイナは優斗の雰囲気がさっきまでと別人であることに驚いたが、危機が去った訳ではないことを自覚する。

 また豹の怪物達に包囲されてしまった。


 険しい表情のエイナの肩をそっと叩き、優斗が答えた。


 「大丈夫。問題ない」


 優斗はそう言いつつも不思議な気分がしていた。

 目の前の怪物、この数の暴力は厄介だ。和也とタッグなら何も問題はない。

 だが、今は傷ついたエイナを守りながら、一人で戦わなくてはならない。

 

 だけど。


 不安は微塵も感じなかった。


 先ほど、自身の心と向き合った時、不意に湧き上がってきたものがある。


 …………僕と、戦ってくれるかい? アイギス。


 優斗はハッキリと感じ取った。自身の神意の真名を。

 その名はアイギス。邪を祓う不屈の盾。


 優斗はもう折れることはない。本当に大切なものを見つけたから。

 だからもう迷わない。こんなところで足踏みしている訳にはいかない。


 「さあ、かかってこい。怪物ども」


 怪物達の苛立ちは頂点に達していた。

 せっかく追い詰めた獲物を、仕留める寸前のところで邪魔されたのだ。

 怪物達は冷静さを失い、その血に眠る本能を開放。

 先程までの狡猾な狩りは、今終わった。

 怪物達は飛び掛かる為に、身を屈め牙を剥く。

 そして、己に溜めた力を開放し、一斉に飛び掛かった。

 

 「輝けるアイ(グロリアスピラーズ・)ギスの光柱(オブ・アイギス)


 黄金に輝く、巨大な光の柱。

 六柱の柱が突如、中空に現れた。


 柱は途轍もない衝撃を伴って、怪物達を踏み潰す。

 その威力は絶大。怪物達の強靭な筋肉と骨を完全に無視し、怪物達を圧殺する。


 あっと言う間に、六つの怪物の死体が出来上がる。


 柱の餌食にならずに済んだ怪物達は、混乱している。


 闘争か撤退か。


 結局、怪物達は撤退を選択。恐怖が闘争本能を上回った。

 

 怪物達が去り、静寂が訪れた。


 「ユウト……今のは―――!?」


 優斗がエイナを抱きしめた。


 「エイナ、本当にごめん」


 「…………ユウト」


 エイナは優斗の背中を軽く叩き、優しい声音で言う。


 「私の方こそごめんなさい。あまりに軽率だった。それと…………ありがとう」


 優斗はエイナから腕を離し、また笑った。

 それは、ハリボテの笑顔なんかじゃない。心からの純粋な笑顔だ。


 「僕は分かったんだ。本当に大切なことを。だから、もう大丈夫だ」


 エイナも優斗を見て微笑む。そして、新たなことに気付いた。


 ああ……そうか。

 私は、この笑顔が見たくて、ずっと優斗のことを追ってたんだ……。

 自身に去来したこの感情は何と言うのだろう。エイナはこういったことに疎い。

 まだこの感情に名前はない。

 だけど、確かに感じるこの感情は、とても暖かく、とても尊いように思えた。


 「さあ、帰ろうかエイナ。皆にも迷惑掛けた。謝らなきゃ」


 「ええ」


 二人は踏み出した。同じ歩幅で、確実に一歩。


 



 ―――その時、空が危険信号を告げた。空一面が虹色に輝いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ