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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第二章   砂の国の争乱
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第二十話   真っ直ぐな男

 時刻は昼を少し過ぎた頃、和也、優斗、ライサンの三人は、談笑に勤しんでいた。

 エイナだけは少し離れた位置に座り、退屈そうにしている。


 この家には今、四人しか居ない。その理由だが、セリスら大人組は、獣人族の会合に出掛けたからだ。

 襲撃される恐れがある為、複数の護衛を伴ってぞろぞろと移動する様はとても目立っていたが、まあ仕方がないか。と和也は思う。


 「これは良い物だな! ワッハハ!」


 ライサンは和也の剣を吟味し興奮している。それに呼応するように、頭に生えた犬耳がピクピク動いて見せた。

 ライサンに剣を少し見せて欲しいと言われ、和也はあっさり承諾した。

 別に減るものでもないし問題はない。


 優斗が興奮するライサンに問う。


 「わかるの?」

 

 「分かるさ! このように、魔石の輝きを持つこの剣は、並みではないぞ!」


 「魔石の輝き? へー、それは気付かなかったな」


 「ふむ、人と我々では魔石の輝きに対する感度が違うのかもしれんな。こんなにも濃青色に輝いているではないか」


 優斗とライサンが話している傍ら、和也は刀身に目を凝らしたが、濃青色の輝きは知覚出来なかった。

 これが生物的差異ってやつだろうか。


 和也はライサンに質問することにした。


 「それで、具体的にどうすごいんだ?」


 恐らくライサンは和也より年上だろう。

 ほんの数年しか違いはないだろうが、日本人的な発想で、年上には取り合えず敬語を使ったが、ライサンから「こそばゆいから丁寧な言葉遣いは止めてくれ」と言われたのだ。

 和也はそれを承諾。だから今は、タメ口で話しかけている。


 「ああ、刀剣に含まれる魔石の純度が高ければ高い程、秘められた魔力は高い! 純粋な物理攻撃に魔力を上乗せ出来るからな。まあ、単純に強い! と言うことさ」


 ライサンの強い語気に気圧されることなく、優斗が質問した。


 「なら、すべての武器は魔石の純度を上げれば良いんじゃない?」


 「貴重な魔石を全ての武器に使用するのは、単純に勿体ないと言う理由と、加工技術の難しさが障害となっている」


 「へー、魔石の加工って難しいんだ」


 「そうだ、こと武器に於いては、その難易度が跳ね上がるようだな。これ程の純度の物はやはり、鎚人族(ドワーフ)の鍛造品だろうな」


 鎚人族(ドワーフ)か。確かセリスから聞いたな。小柄で強靭な体躯を持つ、武具製作が得意な者達。

 というか、何でそんな物が天空にあったんだよ。つくづく不思議だ。


 「それで! この剣の銘は何と言うんだ? カズヤ」


 「銘? ロングソードかな」

 

 「それは、このような形状の剣の総称だろう。そうではなく、この剣固有の名前さ」


 固有の名前か……。日本刀で言うと鬼丸国綱とか三日月宗近とか、そんな感じのやつのことだろうか。


 「それは分からないな」


 「では名付けよう!」


 「えっ、うーん」


 俺とて男だ。愛用の武器へ名を付けるロマンに惹かれる気持ちはある。

 だが、こうして実際に剣を握ってみるとファンタジーから現実に目覚めたような感覚があり、名付けは何か、気恥ずかしい気持ちがある。

 例えるなら、愛用の包丁や鍋に名前を付けるような感覚だ。

 別に包丁や鍋に名を付けるのは構わない。だが、それを嬉々として語る者は居ないだろう。

 普通は自分の心の中にそっとしまっておく筈だ。

だから和也は、名を付けるとしても、自分でこっそり付けて、こっそり自分の胸に仕舞っておきたかったのだ。


 「必要だろうか?」


 「絶対に必要だ!」


 「それは何故?」


 「カッコイイからだ!」


 右拳をガシッと胸の前で握り、語気を強めるライサンは、途轍もない圧を放っていた。


 和也はライサンの圧から逃れようと少し距離を取り、小さく嘆息した。

 

 「わかったよ、でも名付けとか俺は苦手だから、ライサン頼む」


 「俺がか? ……ふむ、そうだな。この刀剣は星の如き輝きを放っている。獣人族の言葉で星を意味するアストールなんてどうだろう?」


 アストール……。意外と悪くないセンスだと和也は思った。


 気に入った旨をライサンに告げると、ライサンは満足した様子だった。


 その後、優斗から名付けをせがまれたライサンは、少し考え、アズライト・エッジと名付けた。

 一仕事終えたライサンは、和也に向き直り言った。


 「さて、少しやろうか? カズヤ」


 ライサンはそう言って、伸びをして軽く体を動かしている。


 「やる? 何を?」


 「そりゃあ、仕合をさ」


 仕合? 戦うということだろうか?


 「えっ、何で?」


 「そりゃあ、神行者の実力を見たいからさ」


 「なんだよ急に。俺にはメリットがないじゃないか」


 「なんだ? 怖いのか?」


 その発言を聞いて和也は眉をひそめた。

 この短時間で分かったが、ライサンは良い奴だ。

 真っ直ぐな性格であり、その口から放たれる言葉はどれも裏がない。

 だからこそ余計にイラついたのだ。これは挑発ではなく、本心からの言葉だと分かったから。


 舐めやがって。


 「いいよ、やってやるよ」


 「ハハッ、そう来なくっちゃ」


 仕合を承諾してしまったが、和也には気がかりなことがあった。

 自分で言うのも何だが、身体能力を上げる魔力操作の技法は仕上がりつつある。

 今や並みの戦士の域を超えた戦闘力であることを自覚している。

 人型の影を一方的に蹂躙したのがその証拠だ。

 だが和也は対人と言う意味では、今まで優斗としか組み合ったことがない。

 優斗以外の者と組み合った時に、相手に怪我をさせないようにする加減が分からないのだ。


 それと同時に、余裕綽々の態度で柔軟体操をするライサンの鼻を明かしてやりたいという気持ちも少し芽生えていた。

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