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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第一章   天空の探求者達
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第十話    雷の獣

 勝った……のか。このレベルの怪物相手に、全員無事で切り抜けられたのは奇跡だ。

 勝利の喜びより安堵感の方が大きかった。


 優斗とセリスも同じ気持ちのようだ。二人とも荒くなった息を整えながら、怪物を凝視していた。


 「やった……な」


 和也は現実であることを確かめるように、そっと呟いた。


 「うん……やった、ハハッ」


 「お前達、よくぞ生き抜いた」


 これが現実であることを実感し、それぞれ勝利を噛みしめる。


 しかし、倒したは良いが……これでどうなる?

 和也は広大な空間を見回し、何か変化が起きていないか確認した。

 この空間も地上の宮殿と同様、白い壁に囲まれている。見たところ特に変化はない。


 その時、違和感を感じた。肌が痺れるような感覚。

 周囲に目を走らせた。

 セリスと優斗が談笑している。二人は違和感には気付いていないようだ。

 そして、怪物の死体に目を移すと、怪物の周囲で小さく青白い光が瞬いていた。


 「二人とも離れろ!!」


 和也は咄嗟に怒鳴り声を上げた。まだだ、まだこの怪物は死んでいなかったのだ。


 怪物の閉じられていた瞳が開かれた。その瞬間、怪物を中心に青白い雷撃が駆け巡る。


 雷撃の凄まじい威力に、地面が抉れ砂塵が巻き起こる。


 三人とも咄嗟に距離を取ったが、怪物との距離が近かった優斗は一歩遅かった。

 優斗は雷撃を浴びて、意識を喪失。


 「グッアアアアアアアアアアアッ!!!」

 怪物は雄叫びを上げ、殺意を爆発させた。

 その体は電気を帯びており、体の所々が青白く明滅している。


 この野郎、嘘だろ……。第二形態だとでも言うのかよ。

 和也は怪物を睨み、心の中で恨み言を言う。

 いや、それよりも優斗だ! 無事か!?

 ギリギリで雷撃の直撃を免れたセリスが、優斗を抱え上げ後衛に下がっていた。


 「セリス! 優斗を頼む!」


 和也はそう言って、怪物に向き直る。サシで決着を付ける覚悟だ。


 怪物は他の二人の方は見向きもせず、和也に殺意を向けている。

 当然だ。ツノを折った張本人なのだから。敵意(ヘイト)は最大に溜まっている。


 怪物は低い唸り声をあげ、前傾姿勢を取る。

 また突進の構えか。

 和也は敵を観察しつつ、自分の状態を冷静に分析する。

 まだ魔力に余裕はある。体は問題無く動く。精神力は、残り六割と言ったところ。

 この戦闘でまだ神意(シンイ)を使っていない。もし勝機があるとしたら、やはりこの力だろう。

 玉砕覚悟で、もう一方のツノを破壊すれば良い。

 この体もただでは済まないだろうが、神意(シンイ)を使って再生すれば問題ない。


 膠着状態だった場に変化が訪れた。怪物が和也に向かって突進を開始。

 懲りない奴だ。まともに受ければ無事では済まない。だが、その程度なら躱せる。

 和也はギリギリまで引き付ける。その方が躱したあと、すぐに反撃に転じれるからだ。

 ―――いや、駄目だ。

 和也は咄嗟の判断で、先程の選択をキャンセル。怪物から距離を取った。

 直後、怪物を中心に雷撃が駆け巡る。

 これがやっかいだ。近づくことができない。

 怪物は続けざまに突進を繰り出し、雷撃を放つ。この波状攻撃に、和也は手を出しあぐねていた。


 セリスは優斗に回復魔術、治癒(ヒール)を行使しながら戦況を見守る。

 優斗はなんとか命を保っていた。並みの人間なら絶命していたに違いない。

 だが、優斗もまた卓越した魔力操作のセンスを持っている。

 和也には劣るものの、その技術は並みのそれではない。

 魔力で防御力を上げることで、なんとか命を繋ぎ止めたのだろう。

 すまない、優斗。私の治癒(ヒール)では大幅な回復は見込めない。

 セリスは怪物相手にも一歩も引かない和也を見つめる。その勇者に心からの称賛と祈りを捧げた。


 和也は虎視眈々と機会を窺がっていた。

 怪物に少しでも隙ができれば、乾坤一擲を叩きこむつもりだ。

 だが、その隙を見つけることができずにいた。やはり雷撃が厄介。

 不用意に近づけば手痛い反撃を受ける。


 怪物がまた突撃を繰り出す。後ろを見れば、壁が迫っていた。

 この広大な空間でありながら、壁際まで追い詰められていたのだ。

 和也は覚悟を決める。

 やってやる。


 「そっちが迫ってくるのなら、こっちからも行ってやるよ!」


 和也は怪物の方に向かって駆けだした。

 怪物の間合いに入った瞬間、青白い光が明滅する。

 そして和也は、発光が最高点に達する前に、渾身の力で()()()()()()

 更にそこから、背後の壁に両足の裏を着地させる。

雷撃が駆け巡るが、和也はその範囲から逃れている。


 「雷撃再発動には、インターバルが必要だろ!」


 この壁は発射台だ。そして出力は自身の脚力。脚に魔力を集め、爆発させる。


 飛んだ。放たれた弾丸の如く。


 剣がツノを斬りつける。


 金属を叩いたような音が鳴る。


 「くそっ、浅かったか!」


 ツノにヒビを入れることは出来たが、破壊には至らなかった。


 怪物が痛みに絶叫し、青白い雷撃が発生する。

 その雷撃が和也に直撃し、和也の体が吹き飛んだ。


 「ぐはッ!!」


 自分の肉が焦げる匂いが不快だ。その臭いで吐きそうになる。

 雷撃により、内臓を焼かれ、地獄の痛みが和也を襲う。

 だが、その痛みも一瞬。体の再生はすでに終わっていた。

―――危なかった。神意(シンイ)を発動させるのが少しでも遅れていたら死んでいた。


 怪物が和也を睨む。もう雄叫びは上げない。

 静かに殺意を研ぎ澄まし、確実に標的を狩るべく力を溜める。


 怪物が迫る。青白い発光が激しさを増している。恐らく全力で雷撃を放つつもりだろう。

 多少距離を取ったところでは躱せないかもしれない。


 「人間を舐めるな、怪物風情が!」


 和也は肩、背筋、腕、そして尻と脚に魔力を分散し、持っていた剣を投げた。

 人間の限界を超えた、その膂力で放たれる剣は、初速から速度を落とさずに飛ぶ。

 狙いは正確。怪物のツノを捉えた。


 怪物は反応できなかった。怪物には投擲と言う発想がなかったからだ。

 剣がツノを砕く。怪物が断末魔を叫び、地面に倒れ伏した。


 「終わった……」


 今度こそ終わった。そう安堵した瞬間、腰が抜けた。

 体が脱力し、力が入らない。


 セリスと優斗は―――、無事のようだな。良かった。

 更に心が緩み、少しだけ目を瞑る。


 「カズヤ! 逃げろ!」


 セリスが叫んだ。


 一筋の青白い電撃が、和也に迫ってきていた。咄嗟には動けなかった。

 気を抜きすぎだ、馬鹿。そう自分を罵倒する。

 雷撃が直撃し、再び地獄の痛みに襲われる。だが、和也にはまだ余力があった。

 即座に再生を開始。怪物は地面に倒れ伏した状態で、和也を睨んでいる。


 どうやら最後の足掻きという奴だろう。青白い発光が弱くなり、怪物の目がとじてゆく。


 だが、本当に最後の最後に怪物の目が見開かれ、再び一筋の青白い雷撃が発生。


 雷撃を生み出し、怪物は今度こそ確実に絶命した。


 まずいな、まだ再生は完了していない。

 故に体が動かない。あれを受ければ確実に死ぬ。


 ああ―――、俺はここまでのようだな。

 死を覚悟した。


 その時、白銀の人影が和也の前に飛び出した。


 セリスの身に雷撃が駆け巡る。

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