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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第四章   不滅の記憶
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第百八話   岩喰いの巣

 和也達は遺跡の入り口に立っていた。


 太陽の都バドラルードの外縁。

 乾いた大地にポツリと立つ、石を積み上げて造られた遺跡。


 周囲に人の気配はない。

 現地の者はここには近付かないのだという。

 

 ダンジョン内には凶悪な怪物が蠢いている。

 ダンジョンから怪物が出て来ることはないようだが、それでも、好き好んでこの場所に近づく者はいないのだろう。 


 四角形の遺跡の入り口をくぐり抜ける。

 中にあるのは、地下へと続く階段のみ。

 

 人が一人通過できるほどの、狭い階段を一列に並んで降りる。


 しばらく進むと広い空間に辿り着いた。

 横幅、高さ共に三十メートルはあるだろうか。

 これほど大規模な坑道が地下に広がっていることに驚く。


 広い坑道の壁には、魔石の粒子が含まれている。

 魔石の粒子が坑道内を照らし闇を祓う。


 明るさは十分とは言えないが、探索に支障が出るほどではない。


 それよりも、気にしなければならない物がある。


 和也が声を発した。


 「あの穴が……そうなんですね?」


 和也の質問にリディが答える。


 「ああ、そうだ。あれが、岩喰いの怪物(ロックイーター)の通り道だ」


 岩喰いの怪物(ロックイーター)

 その名の通り岩を喰う怪物。

 このダンジョンに生息するのは主に岩喰いの怪物。

 壁にあいた複数の穴は、岩喰いの怪物の食事の跡、という訳だ。


 ここから先は、いつ何時、怪物が飛び出してくるか分からない。


 慎重に歩を進める。

 だが、このダンジョンに蔓延る怪物の目を逃れるのは、無理な話だった。


 微かな振動。

 岩が擦れる音。


 振動と音は次第に大きくなり、やがて壁の穴からソレは飛び出した。


 岩の肌に、ミミズのような形状。

 口元には鉤爪のような牙が左右に五本づつ並ぶ。

 目は退化しているため判別しづらいが、牙の少し上に付いている黒い点がそうなのだろう。


 全長約二十メートル。

 巨大なミミズの怪物が和也達の前に立ち塞がる。


 「さっそくお出ましだよ!」


 リディはそう叫んだ後、背中に背負った武器を手に取る。

 手に取ったのは巨大な戦槌(ウォーハンマー)

 

 戦槌を手に、踏み出そうとしたその時。


 「光柱の印(プリズム・スタンプ)


 一本の光の柱が現れた。

 その柱は、怪物の口元に衝突。


 怪物の牙が砕け散る。

 怪物は痛みに耐えきれず、甲高い叫び声を上げた。


 続けざまに光柱が出現。

 光柱は怪物の頭部に勢いよくぶつかり、怪物は大きく仰け反った。


 怪物の隙を突いて和也は走り出した。

 剣を抜き、怪物の体を斬りつける。

 鉄を叩いたような甲高い音が響く。


 「硬い!」


 「OK! 任せて!」


 優斗はそう言って、和也が斬った箇所に光柱をぶつける。

 一発、二発とぶつけ、やがて、岩肌の一部が剥がれる。


 それを見て、和也が駆けだした。


 「流石だ、優斗!」


 和也は、岩肌が剥がれた部分に手を添えて唱える。


 「輝く矢(グローイング・アロー)


 ゼロ距離で打ち出される魔術。

 和也の魔力を込めたその魔術は、怪物の内部を破壊する。


 怪物は、あまりの痛みに暴れまくる。

 こうなれば、もう怪物に勝機はない。


 和也と優斗は怪物から距離を取り、回避に専念。

 やがて怪物は疲れ果て、動きが鈍くなる。


 優斗は怪物の傷ついた箇所を光柱で集中攻撃。

 数回光柱を打ち付けると、岩肌が大きく剥がれ、柔らかい肌が露出する。


 そこを和也が一刀両断。

 上から剣を振り下ろし、怪物の体を真っ二つに叩き斬った。


 大量に怪物の血が飛び散るが、和也は素早く後ろに飛び退き、返り血を回避。


 両断された後も怪物はしばらく動いていたが、やがて動きは緩慢になり、ついには動かなくなった。


 リディは後方から戦いを見ていた。

 何もせず、ただ見ていた。

 和也と優斗の強さに呆気に取られていた。


 そして、ポツリと言う。


 「おいおい、何だこいつら……」



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 聞こえてくる壁を這いずる音。

 穴から伝わる振動。


 振動の激しさが増す。


 「来るよ!」


 優斗が叫んだ。


 直後、ロックイーターが出現。

 今日何度目かになる怪物との邂逅。


 ダンジョンに踏み入って出会った怪物は、今のところロックイーターのみ。

 このダンジョンは、ロックイーター巣といってよいだろう。


 和也と優斗は、対ロックイーターの最適解を見つけていた。

 優斗の光柱で一か所を集中攻撃。

 岩肌が剥がれたところに、和也が剣と魔術で内部にダメージを与える。

 そしてまた、光柱で集中攻撃し、岩肌が大きく剥がれたところに、あるいは怪物が弱ったとこで、和也が渾身の一撃を叩き込む。


 この二人の活躍により、リーラとリディは殆どすることがない状態。


 そしてまた、優斗の光柱で怪物の岩肌が大きく剥がれ、和也が駆けだした。

 

 動き出す和也を見て、リディが叫ぶ。


 「待て! カズヤ!」


 「えっ!?」


 和也は立ち止まり、視線をリディに向ける。

 リディは戦槌を担いで駆けだした。

 和也の横を通り過ぎ、怪物に接近。


 戦槌を振りかぶり、思いっきり怪物に叩きつけた。


 「爆ぜろ!」


 巻き起こる衝撃。鋼の甲高い音が鳴り響いた直後、耳をつんざく爆音。

 炎と煙が発生し、怪物は絶叫。 

 爆発の衝撃で怪物は吹き飛び、戦槌で叩かれた箇所は大きく破損。

 大量に血が噴き出し、怪物は力尽き絶命した。


 「ったく、私にも戦わせろ。でなければ、私が怠けているみたいじゃないか。ただ働きは嫌いだが、報酬に見合った働きが出来ないのも気にいらない」


 キッパリと言い放つリディの台詞を聞いて、和也は反省した。

 確かに、ちょっと俺達だけで突っ走りすぎていたな。


 「すみません、リディさん。確かに、ちょっとパーティーの陣形を乱してますね」


 「まあ、分かればいい」


 リディから許しが降りて一安心。

 それから和也は、沈黙を貫くリーラの方へ視線を向ける。


 「リーラもすまない」


 「……問題ありません」


 相変わらず淡白な反応だったが、それは和也には予想出来た反応。

 和也はこれ以上言葉を交わす必要はないと判断。


 和也は前を向き進み出そうとするが、その後のリーラの行動は、和也の予想範囲を飛び出していた。


 リーラが突然動き出した。

 それと同時に、壁の穴から再びロックイーターが顔を出す。


 リーラは迫りくる怪物の牙を躱し、跳躍。

 刀を抜き、怪物の右目に突き刺す。


 怪物のけたたましい絶叫が響き渡り、怪物は怒りのボルテージを上げる。

 リーラを噛み砕こうと殺意を爆発させるが、リーラの姿が見当たらない。

 リーラの姿が捕捉出来ない。

 

 リーラはその隙に怪物の体に斬撃を当てるが、硬質の肌に刀が弾かれる。


 「リーラ! 僕がやるよ!」


 優斗が光柱を顕現させ、怪物に叩き込む。

 そして、岩肌が剥がれた部分に、和也、リーラ、リディが集中攻撃。


 圧倒的な力の前に怪物は為す術がない。

 ありったけの斬撃と打撃を叩き込まれ、耐久を超えるダメージを受ける。

 そして何も出来ぬまま、怪物は死亡した。

 

 怪物の死体に目をやりながら、和也は考える。

 今のリーラの行動は何だろう。

 何故、急に積極的に動いたのだろう。

 

 あり得ないと思ったが、ある考えが頭によぎる。

 リーラが動いたのは、リディが怪物にとどめを刺した後だ。


 まさか……自分だけ活躍出来ていないことを気にして……?


 和也には、リーラがそんなことを気にする人物には思えなかった。

 思えなかったが、よく考えれば、リーラのことを何も知らない自分に気が付く。


 リーラ、君は何を考えているんだ……。

 リーラの方に目を向ける。


 リーラは相変わらず、無表情で佇んでいた。

 いつも通り変化はない。和也には何も読み取れなかった。


 ここにパルテノが居れば気付いたのかもしれない。


 リーラの黒曜の瞳が、僅かに揺れ動いていることを。

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