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せっかくの異世界ですが全力で帰らせて頂きます  作者: ヨシ
第四章   不滅の記憶
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第百三話   ネフェリオの依頼

 ライサンは言った。


 「ネフェリオ、お前の目的は理解した。だが、ソルランド王国でお前達が行ったことについて納得はしない。しかし、そのことに固執していても仕方がないことも分かっている。だから俺は、今は目をつぶることにする」


 ネフェリオがそれに返答する。


 「私は私の信念に従い行動しました。その行動の是非は、いずれ神の審判によってくだされるでしょう。その時がくれば、私は謹んでソレを受け入れます。ですが、今は―――貴方の心遣いに感謝を」


 「感謝は不要だ」


 これでライサンは、一先ず自分の気持ちを落ち着けることが出来た。

 ネフェリオを肯定した訳ではないが、理解できる部分もある。

 複雑な心境だが、一旦は保留という形で自分の心の在りかを定めることにした。


 和也はライサンの気持ちを理解しつつ、話を先に進めるため、ネフェリオに質問することにした。


 「それで、これからどうするんだ? 残り二割を回収するプランは?」


 「残念ながらありません」


 「なに? じゃあ、詰んでいるってのか?」


 「現状、そうなりますね」


 「……残された時間は、あとどれぐらいある?」


 「そう長くはありません。私の見立てでは、あと十年ほどです」


 「……十年」


 和也には、それが短いのか長いのか分からなかった。

 一般的な感覚でいえば長いように思えるが、為そうとしていることの難易度を考えれば短いようにも思える。


 世界の命運が懸かった十年。何も手がなければ、そこで全てが終わる。

 是が非でも成し遂げなければならない。


 周囲を見ると、ライサン、イーリスは難しい顔をしていた。

 二人とも、さぞかし頭を悩ましているのだろう。

 そして、リーラは無表情で佇んでいる。リーラはまだ一言も発していない。

 表情からは考えが読めないが、聞き役に徹するつもりのようだ。


 リーラとパルテノによって、ソルランド王国は闇に覆われた。

 苦しむ獣人達を見て、リーラはどんな思いでいたのだろう。

 何も思わなかったのだろうか、何も感じなかったのだろうか。


 それとも、心を殺して自らの使命に徹していたのか。

 大を救う為、小の犠牲は仕方がないと、そう思っていたのだろうか。

 

 だが、それでも、ソルランド王国での出来事を繰り返す選択は俺の中にはない。

 だけど……最悪の場合は、非情な手も考えなければならないのかもしれない。


 悩む和也をよそに、ネフェリオは悩みなどないかのような笑顔で言った。


 「それよりも、差し迫った問題があります」


 「いや、それよりもって……」


 世界の危機をそれよりもと表現するネフェリオのことを不審に思いつつも、和也はネフェリオの言葉の続きを待つことにした。


 「ヴィクシャルン帝国のことです。かの国を何とかせねばなりません。放っておけば、世界に破壊と混乱がもたらされるでしょう。魔力が枯渇する前に、世界は破滅するかもしれません」


 「……確かに、核兵器を好き勝手にぶっ放す国は危険すぎるとは思うが、何とかって、何か策はあるのか?」


 「まずは、その核兵器です。魔導兵器プロメテウス、それを破壊せねばなりません」


 「破壊? 可能なのか?」


 「可能です。ただし、プロメテウスを守る結界を破らなければなりません」


 「結界……それは破れるのか?」


 「通常の方法では無理です。帝国は様々な技を生み出し、既存の概念を打ち崩しています。結界は彼らの成果の一つ。どうやら、小規模ながらエルフの郷の結界と同等のものを編み出すことに成功したようです」


 難しい顔をしてライサンが尋ねる。


 「では、その結界を破壊するには、エルフの郷の結界を破った破壊兵器と同威力のものが必要だと?」


 「ええ、そうなります」


 無理だ。そんな物ある筈ない。

 そう思う和也だったが、ネフェリオは平然と言ってのけた。


 「方法はあります」


 和也が訊いた。


 「それは?」


 「アーティファクト、不滅の冥闇。このアーティファクトの効果は、魔力を滅却することにあります」


 魔力を滅却……。

 そんな物もあるのか。

 と感心する和也を他所に、ネフェリオは続ける。


 「そこで、皆様方―――、いや、カズヤさんにお願いがあります」


 「俺に?」


 名指しされ、怪訝な顔をする和也にネフェリオは言う。


 「実は、そのアーティファクトは、まだ手に入れていません。ある理由から、手に入れたくても手に入れることが出来ないのです。ですが、カズヤさん、貴方にならば可能です」


 「どういうことだ?」


 「中央大陸の南の海に浮かぶモルタニア島。その島には、凶悪な怪物が蠢くダンジョンが存在します。そのダンジョンの最奥に、アーティファクトは眠る、と言われております」


 「……話は理解した。俺に、そのダンジョンへ行けと言うんだな。だけど、それは俺にしか出来ないことなのか?」


 「最奥に門があります」


 「門?」


 「はい、その門は資格を持つ者しか通れぬ門。狭き門(ザ・ナローゲート)と呼ばれています」


 「その資格とは?」


 「欲望を持たぬ者。人が抱くありとあらゆる欲望。それを持っていない者だけが、門を通過する資格を持ちます」


 「ちょっと待て。お前は俺を何だと思ってるんだ? ありとあらゆるってことは、食欲とかも含まれるんだろ? 俺だって人間だ。それぐらいの欲望ならあるぞ。というか、欲望を持っていない奴なんていないだろ」


 「その通りです。門はその者の魂を読み取り、(ふるい)にかけると言われています。この世界に生きとし生けるもの全ての魂をです。ですが、何事にも例外はあるものです。例えば、この世界に由来しない魂であった場合とか―――」


 和也はライサン、イーリスと顔を見合わせる。

 三人とも理解した。ネフェリオの言っている意味を。


 イーリスが右手を上げて声を張り上げた。


 「マスターがそれに該当するです!」


 ネフェリオはイーリスに微笑んで返事をする。


 「正解です」


 ネフェリオは、少しだけ真剣な表情をして和也の方を向いた。


 「おかしな話ですが、資格を持たぬ貴方こそが、唯一、資格を持つ者なのです」


 そして、ネフェリオは胸に手を当てて和也に言う。


 「私は、貴方へ再び依頼をします。依頼内容はモルタニア島のダンジョンへ赴き、アーティファクト、不滅の冥闇を手に入れること。報酬は、世界の破滅を止める一員になれるという名誉。つまり、なにも無いということですが―――」

 

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