ふとももの上のもんじゃ
みんな東京に帰るのだろう。電車の中はものすごい混みようだった。
それを見込んで、俺は始発の駅から乗ることで、座席に座ることができた。
それはよかったのだが。
「ううっ。」
俺の前のつり革につかまる男性が口を押えた。顔色が悪い。
――こ、こいつ・・・やばいぞ。
座席から移動すればいいのだが、電車の中は人であふれている。とても動けるような状況ではない。
しかもこの電車は大きな駅にしか停車しない。次の駅まではまだ少しかかる。
――たのむ・・・たのむから、何とか持ちこたえてくれよ・・・。
その時、車内アナウンスが流れた。
「次は○○、次は○○ー。お降りのお客様はお忘れ物が無いよう、ご注意ください。」
――しめた!
あと、少しだ。あと、ほんの数分・・・。
「キキーー。」
・・・電車が止まった。
「停止信号です。しばらくお待ちください。」
――いやいや、このタイミングで・・・。
「ううっっっばやばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃ。」
・・・太ももが、生暖かい。
「きゃあああああああああああ。」
・・・誰かの悲鳴。
「お待たせいたしました。電車が発車いたします。」
無機質なアナウンス・・・。
読んでいただき、ありがとうございました。