オベロン
起きろ。
起きろ。
起きろ。
はやく起きなさい!!!
頭の中にずっとうるさい声が響いてくる。これ以上無視は不可能と判断し、僕は起きることにした。
目を覚ますと、そこには信じられない光景が待っていた。
五帝の二人が死んでいた。ラグエルは凍った状態で心臓を一突き。タミエルは全身に切り傷があり、出血多量で死んでいた。
誰が倒したんだ…。
「誰がやったか気になるかい?」
頭に直接声が響く。
「え! この声は何なんだ!?」
「意識を失う前に獲得したじゃないか。エクストラスキル」
そういえばそんなこともあったな。完全に忘れていた。
「私は叡智の神“アリス” 可愛い可愛い女の子の神様だよ~」
姿は分からないけど、何となく予想出来てしまうな。
「アリスはどうゆうスキルなの?」
「私はこの世の知識をなんでも知っている。だからカイトが望む知識を教えるのが仕事かな。
ちなみに二人を殺したのは私」
「待って待って、凄いスキルだし驚愕の事実だし、頭が追い付かないよ」
「簡単に説明すると、私はカイトと精神を交代できるの。さっきは私がカイトの体で二人を殺したっていうこと」
「つまり、コンピューターが自動操作するのと同じってことか!」
「まぁそんな感じ。さっきはカイトが意識を失ってたから私から変われたけど、カイトの許可がないと変われないから安心してね」
僕が望んだ時だけ変われる。これも超チートスキルだな…。
「これからは私を頼ってね? なんでも教えてあげるから!」
「うん、よろしく頼むよ」
さて、戦いはどうなったんだ。あれからどのくらい時間が経っているか分からないが、こちらの勝ちだろう。
「カイト殿!」
「あなたは、ガイゴンの兵士さん。戦況は?」
「はい。人間の軍は撤退を始めているところです。人間は五帝二人と、一般兵五十人ほどが戦死。こちらはガイゴン様含め三十体ほどが戦死しました」
死者ではこちらが少ない。さらに五帝も二人倒せたのは大きいな。
「カイト殿、あなたの力で、ガイゴン様を生き返らせることは出来ないでしょうか……」
アリス、どうしたら全員を救える?
そうね、ここでは『大地の恵み』は使えないわね。草木が枯れていて生命力がないから。
でも、『瞬間移動』でカルモまで行けば助けられる。でも人数に制限がある。
何人まで行ける?
三人よ。それと、この世界で死んだ生き物は、どんな強力な蘇生スキルでも、死後から三十分以上経ったら蘇生出来ない。
制限はあるよな。なかったら初代魔王を生き返らせるしな。
「『瞬間移動』でカルモまで行けば可能です。でも三人までしか移動出来ないので、全員は無理なんです。」
「ガイゴン様が生き返るなら他の兵士は生き返らなくてもよいです! みな、ガイゴン様のために死ねるのなら本望です」
ガイゴンの兵士は涙を流していた。他の兵士もだ。
皆仲間が死んで悲しいんだ。それなのに、決して本心は出さずに堪えている。
アリス、全員を救える方法は?
無い。と言えば噓になるけど、確率でいえば無いに等しい。
構わない、教えろ。
いいよー最高! そうゆう主を待っていた!
方法は一つ。精霊と契約すること。
精霊? ユキが使ってたスキル?
カイトの場合はあんな弱小精霊じゃない。カイトは魔力が無限、だから超強い精霊を召喚できるの。
分かった、どうすればいい?
待って。ガイゴンが死んで後十分で助けられなくなる。今からカルモに行けばガイゴンは救える。
でも精霊を呼んで、契約できなかった誰も助けられない。どっちを選ぶ?
そんなの決まってる。精霊を呼ぶぞ。
分かった。詠唱は頭に直接入れとくから、それを読めばいいよ。
「我、精霊の祝福を受けし者、エルフの始祖“オベロン”よ、今、精霊界からより降臨せよ!」
空から一筋の光が降ってきた。膨大な魔力で息をするのも辛い。それに、体の震えが止まらなかった。
光の中から長身の女性が出てきた。耳は長くて、まさにエルフだ。
「其方が童を呼んだのか? まさかそんな人間がいようとはのぉ」
「貴方が、“オベロン”?」
「そうじゃ。童こそが森の女王であり、エルフの始祖じゃ」
さて、ここからが勝負だよ、カイト。