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魔王軍「バルバトス」

 ザイカの話によると、王都は僕を消そうと裏で動いていたらしい。わざわざ魔王軍の耳に「あの村に強力な魔道具がある」という噂を流したそうだ。

 「僕を消すためだけに、村の人を…」

 「奴らはそうゆう汚い人間だ。醜い」

 僕がこの村に来なければ。

 「一つ提案なんだが、我と共に魔王軍に来ないか?」

 へ? 全く想像してなかったから一瞬思考が停止してしまった。

 「お前は村の人たちを殺した。そんな奴のところに行くわけないだろ」

 「我も多くの兵を失った。お前のスキルで死んだ人を生き返らせることはできないのか」

 確かに、このスキルなら生き返らせられるかもしれない!

 「もし、できるのなら、我の兵士も生き返らせてはくれないか。頼む」

 ザイカは僕に頭を下げた。魔王軍幹部が、僕なんかに頭を下げている。本当に兵士を大事にしているのか。

 

 「その代わりと言っては何だが、この村が王都から狙われているのが事実、我々の兵士が護衛としてこの村を守ると約束しよう」


 僕はどっちにしろこの村から出ていかなければいけない。それでもこの村にまだ王都からの襲撃の可能性がないとは言い切れない。

 

 「分かった、死んだ者をみんな生き返らせる。魔王軍にも行く。だからこの村を頼みます」


 死人を生き返らせる、命を与えるスキル…。

 「スキル創成、大地の恵み」


 土、木、草が死者に命を与える。傷ついた体を癒し、むしろ生前より健康な状態へ。

 

 「スキル創成、時の管理者」

 このスキルで壊れた建物の時間を戻す。壊れる前の時間に。

 「時を操るスキルだと。それは、古のスキル」

 「そうなの? でも生物には効かないからね」


 建物がすべて元に戻った頃には、村の人たちと魔王軍の兵士が全員生き返っていた。成功してほんとによかった…。


 「おいカイト、何で俺たち無事なんだよ。死んだはずじゃ…。って、魔王軍がいるじゃねぇか!!」

 村人、魔王軍共に武器を持ち戦闘態勢だ。

 「そこまでだ、武器を収めよ!」

 「みんな、落ち着いてくれ、僕たちはもう争わない」


 生き返った者に僕とザイカの交渉内容を話した。


 「みんな、本当にごめんなさい。僕のせいでつらい思いをさせてしまった」

 「気にすんなよ、俺たちはもう家族だ。それに悪いのは王都だ。許せねぇ」

 「カイト君、君には同情するよ。でも、村長としてこの村を守らなければならない。君を、この村に住むことを禁止する」

 「おい村長! それはないだろ!」

 「いいんだよジル。出ていくつもりだったからね。今日までお世話になりました。この村はザイカの兵が護衛してくれます。迷惑かけてすみませんでした」

 「いいのかよカイト。俺は、まだお前と…」

 「『住む』のを禁止しただけだ。客としては何も問題ない。寂しくなったらいつでも帰ってきなさい」

 村長も良い人だ。ほんとに僕はいい村に住ませてもらった。



 その後、僕は村の人たちに見送られて魔王軍の基地「バルバトス」へ向かった。












 スカーレット王国の外には人間と魔物のどちらでもない地帯“名も無き土地”と言うらしい。

 この土地を抜けると「ベレト」と言う一番スカーレット王国から近い街がある。ここは人間が作った工芸品や農作物が買える。

 ベレトからは魔王軍幹部が使える『帰還(パーム)』を使い、バルバトスへ一瞬で行けるらしい。

 便利なスキルだから僕もスキル創成で『瞬間移動』を覚えておいた。一度行った場所に移動できる。


 バルバトスは禍々しい雰囲気だった。石造りの城で、昼間なのにうす暗い。木々は生命力を失い枯れている。

 中に入ると空気が重くなった。でもイメージとは違って綺麗に清掃されていた。

 「この扉の向こうに魔王様と、魔王軍幹部が今は全員いる。気を付けろよ」

 入る前に脅すのは反則でしょ…。最悪瞬間移動で逃げよう。

 自分よりも遥かに大きな扉が開く。

 「ただいま戻りました。報告にあった異世界人を連れてまいりました」

 「ほう、そいつが異世界人か。あんまぱっとしねえな」

 「虐めてやるな“ガイゴン”怖がっておるじゃろ」

 「お前のコレクションにはさせないぞ、貴重な人間だ」

 魔王軍幹部が色々と話している。全部どうでもいい話ばっかだけど…。

 「静かにしろ」

 魔王が一言言っただけで全員黙った。声色は僕と変わらないくらいの男の声だ。

 「異世界人、名は」

 「えと、カイトです」

 「そうか。カイト、お前と二人で話がしたい。付いてこい」

 魔王は立ち上がり、奥の部屋へと歩いていく。付いてこいと言われても、幹部の人たちに凄い睨まれてるんですけど……。

 「待ってください魔王様! それはあまりに危険ではないですか! こんな素性も知れぬ人間と二人で話すなんて」

 「ロイ、魔王様がそう言ったんだ。従いなさい。カイトはこの“絶剣のザイカ”が安全だと保障しよう」

 ザイカは幹部の中でも序列が高いのか、みんな納得している。

 

 僕は魔王の後を追い。奥の部屋へと足を運んだ。魔王は椅子に座っていた。

 「すまないね、部下が無礼を働いた」 

 「いえ、気にしていません」

 さっきとは違って優しい雰囲気だ。別人のようだ。

 「ザイカは私の一番信頼を置いている部下だ。カルモの村に彼を向かわせたのは君を連れて来て欲しかったからだよ。

 こんな話ザイカ以外に聞かれたらダメなんだけどね、私はもう争いたくないんだよ」

 争いをやめたい? 魔王が? 一体なんで。

 「昔の話をしよう」

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