日常、からの厄災
「カルモ」
自然に囲まれた村。空気がおいしくて川もきれい。村人は20人ほど。王国の端にあり、王都のような華やかさはないが、穏やかに生活するにはこちらの方がいい。
「あなたが異世界人カイト君かい?」
40代ほどの男性が声をかけてきた。
「そうです。あなたがカルモの村長ですか?」
「ええ、私が村長です。長旅で疲れているところ悪いが、広場で君を皆に紹介したい。付いてきてくれ」
僕はそのまま村長に付いていった。
広場に着くと、村人が全員集まっていて、20人ほどだ。
「彼がカイトだ。今日からこの村で一緒に暮らすことになる。皆、仲良くしてやってくれ」
「初めまして、異世界から来たカイトです。よろしくお願いします」
異世界人と言ったせいか、村の人たちは少し困惑気味だ。
「よろしくなカイト。俺はジルだ。俺の家に来いよ、広くはねぇが快適だぜ」
「あ、えっと、よろしくお願いします…」
「なんだよ、俺じゃ不満か? この贅沢者め!」
僕は気づいたらジルに肩を組まれていた。この人、人との距離の詰め方早いな…。
ジルの家は平屋で、広くはないが不満はなかった。話をしていると、ジルはとてもいい人だった。仲間思いで常に村のことを考えている。ジルと共に歩いているとよくわかる、みんな信頼している。
「今日は宴だ! 早くいくぞカイト!」
今夜は僕の歓迎会をしてくれた。この機会に村の人たちとはほとんど打ち解けることが出来てよっかた…。
「楽しんでくれているかな」
「村長、おかげさまでとても楽しいですよ」
「君の置かれている状況は察するよ。全く可哀そうだ」
「いえ、僕が無能なのが悪いんですよ。何の力もないのに異世界になんて転移されたから」
後ろから頭を撫でられた。
「強がんなよ。ここは周りに気を使って生きる必要はねぇよ。笑う時は一緒に笑うし、泣きたい時は一緒に泣くんだよ」
なんて暖かい言葉なんだ。僕は王都追放になってよかったのかもしれない…。
「ありがとう、ジル…」
僕は子供のように泣いた。
それから一月が経ち、僕はカルモの住人として生活している。
僕はジルと一緒に狩りをして、子供たちと遊んで、いつも通りの毎日を送っていた。こんな幸せな日々が続くと思っていた。
「魔物だ! 魔物が出たぞ!!」
それは突然だった。辺りが暗闇に包まれ、月明かりだけが美しく光っている夜の日だった。
今回短めです。次回は長いです。