二度目の入国
僕と魔王様、そしてザイカの三人でスカーレット王国へと向かった。
「人間は受け入れるでしょうか」
「まぁ無理だろうな。当初はカイトを正義のヒーローにするつもりだったが。五帝五人を殺した今では無理だな」
「すみません……。アリスのせいで……」
アリスは心の中で拳を握りしめた。
「リリアに上手く立ち回ってもらうしかないな。優秀な人間だ、心配はいらないだろう」
「成程、理解しました。それはそうとカイト、後で手合わせ願おうか」
「え、えっとー……。あ! 痛い! シンとの戦いで負った傷が!」
「楽しみにしているぞ」
「はい……」
久々にスパルタ稽古が再開するようです。シンよりザイカの方が怖い。
それから僕たちはスカーレット王国へたどり着いた。
スカーレット王国に足を踏み入れる。周りの人間たちは僕たちのことを恐れていた。
「おい! 何故魔物がいるんだ!?」
「はやく騎士団に報告しろ!」
穏やかな日常が一瞬で崩れる。まぁ侵略はしないけど。
「貴様ら! その場を動くな!」
騎士団が到着したようだ。人数はおよそ二十、小隊か。
「目的はなんだ」
「この国の王に話がある」
「帰れ。魔物の話など聞くだけ無駄だ」
完全に包囲されている。戦闘は避けられないか……。
「私は別に戦いに来たんじゃない。絶対に戦わないと誓ってもいい。
だが、そちらから仕掛けてくるというのなら話は別だがな」
魔王様は目力だけで兵士たちを黙らせた。
「魔王様はこうおっしゃっている。案内しろ」
兵士たちは言われるがまま、僕たちを王室へと案内した。
この場所にもう一度来ることになるとは思わなかった。
王室の扉の向こうにはあの日の屈辱が残っている。
僕は大きく深呼吸をした。
「入るぞ」
魔王様は扉を開けた。
部屋の中には国王とリリア様、そして異世界人四人がいた。
「ぐぬぬ、何故貴様のような者がここに」
国王は眉間にしわを寄せていた。
「話がある。戦争を終わらせにきた」
魔王様ははっきりとそう言った。
「何じゃと!? 異世界人達よ、はやく始末しろ!」
ヨウスケ達は前に出た。
僕は一人で前に出る。
「なんで裏切った。答えろカイト」
「僕は裏切ったつもりはない。お前たちが僕の逆鱗に触れたんだ。
なあ国王?」
国王は動揺していた。
「な、何のことだか分からんな」
「いいえ、それについては私から説明させていただきます」
リリア様が間に割って入った。
「国王はカイトさんを消すために、魔族にある噂を流した。
カルモに強力な魔道具があるとね」
ヨウスケ達は驚いていた。
「そう。だから私はザイカに頼んで確認しに行ってもらった」
「しかし、そこには魔道具は無かった」
隠された真実が明かされていく。
「そんなこと、どこにも証拠は無い!」
国王は声を荒げて言う。
「うるせぇな」
僕は一言そう言った。また殺気が漏れてしまったらしい。
「俺が死ぬのはいい。だが、村の人達を襲ったことは駄目だ。
俺はお前を許さない」
「な、何が望みだ。金か? 名誉か?」
「俺は、この国が欲しい」
王国側は衝撃的過ぎて呆気に取られていた。
リリア様は何故か顔を赤くしていた。




