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圧倒的な力

 力が体の内から溢れ出る。


 今まで感じたことのない感覚。これが剣聖なのか。




「糞が。剣聖を相手にする日が来るとはな」


 シンは気を引き締め直す。正直勝てるかどうかは五分五分といったところだ。


「さて、始めようか」


 カイトは近くに落ちていた瓦礫を拾った。細長い瓦礫だ。


「そんなゴミで戦うつもりか?」


「ああ。充分だろう」




 シンは気づかなかった。自分の後ろにカイトがいたことに。


「なに!?」


 シンは背中を斬られた。鎧は無傷でその内側だけ斬られた。


「鎧が貫通したのか!?」


「俺は斬りたい物だけ斬る。お前の背中を斬ってやろうと思ったから背中だけ斬れたんだよ」




「ペース上げようか」


 カイトは『遠隔操作』で近くの瓦礫を全て操る。


「これらの大小様々な瓦礫は全て剣だ。全部を防ぎきれるかな」


 三十を超える瓦礫が一斉にシンへと放たれる。


「氷壁!」


 シンは自分を守るように氷壁を生成した。


「無駄だ。俺が斬りたいのはお前なのだからな」


 瓦礫は氷壁をすり抜けてシンへと向かう。


「糞が!!!!」


 瓦礫は全てシンの体に刺さった。


 シンはその場に倒れてた。




「強かった。他の五帝とは比べ物にならないくらいな」


「はは、お世辞はよせ」


 シンの意識が遠くなっていく。


「お前は……この後どうする」


「俺は、いや僕は王になる」


「ふん。力で制する国は……滅びるぞ」


「ああ、分かってる。安心して逝けよ」


 


 シンは死んだ。


 


 これで全てが終わったのだ。


 


「さてと、魔王様の所に戻らなければ。でもその前に」


 カイトは生存者がいないか探すことにした。




「誰かいないか? いたら返事をしてくれ」


 かなり時間が経ってしまった。もういないか……。


「ここじゃ。ここじゃ……」


 二階の端の方から声がする。この声は……。


「エドラスか!? よく生きていたな」


「お主がここで戦い始めた時は死ぬかと思ったぞ」


「すまない……」


 まさかいるとは思わなかった。


「生き残りは我らだけか」


 


「ザイカ……。生きていたのか!」


 僕はザイカに抱きついた。はずだったが避けられた。


「エドラス、フィディオ、ガイゴン、フリード、そして我か」


「半分が死んだのか」


「はやく魔王様と合流するのじゃ」


 僕たちは意識のないフィディオ達を抱えて魔王様のもとへと急いだ。




 何もない丘に魔王様は一人座っていた。


「魔王様、ただいま戻りました」


「ご苦労様カイト。そしてみんなも大変だったね」


 


 事の経緯を全て報告した。


「そうか。死んでいった同胞たちを弔ってあげないとね」


「魔王様、我らはこれからどうするのですか」


 魔王様は僕たちを一度見てから話した。


「人間の国へ行く」


「侵略でしょうか」


「いいや、和平だ」


 この状態なら和平ではなく支配すらできる力がある。


 五帝のいない王国など敵ではない。


「分かりました」


「支配したかったかい? ザイカ」


「いえ、魔王様のお考えになっていることに反論するつもりはありません」


 


 支配ではなく和平。魔王様らしい考えだ。


 


 僕は傷ついた仲間を全員回復してあげた。


 それから少しして、僕らは王国へ向かった。

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