アリスのやり方
アリスとカイトがチェンジしたのはたった一度きり。カイトはアリスの知識を頼った事はあっても、自分の代わりに戦ってもらうことはお願いしてこなかった。
単純にカイトが自分の力で何とかしたかったというのもあるが、アリスに任せたら死人が出ると分かっていたからだ。
「お前、誰だ? さっきとは口調も雰囲気も変わった気がするが」
「ええ、私はカイトじゃない。叡智の神“アリス”よ」
シンは一瞬頭の中が真っ白になっていた。
「伝説上の存在だと思っていたが、こんな形で現れるとはな」
シンはアリスを足元から凍らせる。
「中身が変わっても強さは変わらん」
「それはどうかな」
アリスは“砕”で自分の周りの地面ごと破壊した。
「ほお」
シンはアイススピアを放った。
「『テリトリー』」
アリスは範囲を設定し、範囲内に入った物体を自動で破壊した。
「飛び装具は相性が悪いな。少し変えてみよう」
シンは氷で剣を作った。
シンは間合いを詰め、アリスに斬りかかる。
アリスは“エクスカリバー”を作り出しシンと斬りあった。
「あんた、ただ凍らせてるだけだと思ってたけど戦えるじゃない」
「当たり前だ。一通り教育は受けている」
しばらく膠着状態続いたが、転機は突然巡ってきた。
「なにっ!?」
シンの氷の剣が折れてしまった。
「隙あり」
アリスは一瞬の隙を突いて眼球を狙って最速の突きをした。
しかし……。
「は?」
アリスの突きは氷で出来た手で止められた。
「残念だったな。俺の手が二本とは限らないぞ」
シンの肩から二本の腕が生えている。
「気持ち悪い……」
「その気持ち悪いのに、今から殺されるんだよ」
次は殴り合いが始まる。
シンの方が二本手が多いこともあり、アリスは防戦一方だ。それでも致命傷を負わないのは流石叡智の神といったところだ。
「出来ればカイトの体をマッチョにはしたくないんだよね」
アリスは一旦距離を取る。
「借りるよフィディオ。『雷流拳』」
アリスは『雷流拳』を創った。
「さて、反撃開始!」
アリスはシンの攻撃を最小限に受けつつ、カウンターを狙う。
「ここだ! 出力五十パーセント!」
アリスはシンの溝内に完璧なカウンターアタックを決めた。
「ぐふ! なんだこの攻撃は」
シンは少し体が痺れていた。
「電気は苦手か?」
アリスは容赦なく『雷流拳』を打ち込んでいく。
「ゴホッゴホッ。糞が」
シンはかなりダメージをくらった。
「スキル創成、『流拳』」
『流拳』は『雷流拳』の原点。雷だけでなく、あらゆるものを流すことが出来る。
「流拳、砕!」
アリスは氷で出来たシンの腕を殴った。
『砕』の効果が流れたため、腕は粉々に破壊された。
「ちっ」
「あんた苦手でしょ。内側から力が流れるのさ」
今まで無かったシンの弱点が露見する。
「だから何だという話だ」
アリスはここが勝機だということを察し、試合を決めに行く。
「もう終わらせてやる。流拳、ヘルフレア」
地獄の炎がシンの体の内側から爆ぜる。はずだった。
「調子に乗り過ぎだ」
アリスの両腕は凍り付き、砕け散った。
「まだ……そんな力隠してたのね」
シンは氷の鎧に身を包んでいた
「これが俺の奥の手、“ダイヤモンドダスト”だ」
「最終形態ってことね。これは、無理かも」
叡智の神アリスが無理だと思ってしまった。
これはもう勝ち目が無いのか。




