嵐の前
僕たちが鍛錬を始めてから十五日が経った。
短い時間ではあったが、流石魔族。今まではザイカ以外才能だけで戦ってきた。
「カイト、お前もかなり剣を使えるようになっているぞ」
「ほんと? でもまだまだだよ。受けるので精いっぱい」
ザイカの剣を受けれることが出来るのはカイトだけである。
「他の者も前とは比べものにならないほど強くなっている。感謝するぞカイト」
「全然いいよ、僕も強くなれたし。それより今日の会議で結界が解かれるかな?」
「恐らくな。そろそろ戦争を仕掛けなければこちらが不利になるからな」
あれから人間に大きな動きは無い。リリア様がそう言ったから確実だろう。
それから半日後に会議が始まった。
「みんな、今日までよく頑張ったね。今日をもって結界を解く。カイトもありがとね」
「いえ、それが僕の役割ですから」
それから、戦争を仕掛ける日程が決まった。三日後に全軍で突撃する。
「それまでは守護を頼むよ」
「どうして三日後なんじゃ」
エドラスを始め。数名の幹部が同じことを思っていた。
「疲労回復の時間が必要だと思ったのと、カイトは十五日スキルを使っていないからね。感を戻す時間が必要でしょ」
「とても有難いです。剣しか握っていなかったので」
魔王様は気が利く方だ。
「では解散」
会議は短時間で終わった。三日後に向け、守護をしつつ更に鍛錬を行うものがほとんどだろう。
「カイト、少しいいかな」
「何でしょう魔王様」
僕は魔王様の部屋に入った。
「結界は解いたのかい?」
「はい、会議が終わったのと同時に解きました」
「そうか、ありがとう」
「話っていうのはそのことですか?」
「いや、本題に入ろう」
「私はね、これでいいのか迷っているんだ。他に方法は無いのか、そればっかり考えてしまう」
「魔王様の判断が正しいかどうかはわかりません。しかし、僕はどこまでも付いていきます」
迷うのも無理はない。こんなにも優しい方が、難しい立場に立っているんだから。
僕が秘書として、何か出来ないか。そう考えていた時だった。
「なっ!」
「これは……」
辺りが急に真っ暗になり、何も見えなくなった。
「君たちは邪魔だ。少しの間隔離させてもらうよ」
謎の声が聞こえた。
「魔王様! 無事ですか!?」
「私は大丈夫だ」
状況が全く理解できない。どうなっている……。
カイトと魔王は完全に隔離されていた。空間の帝王“マルス”によって。
「スキル創成、『聖なる炎』」
黄金の炎をライトの代わりに使う。
「魔王様、ここは一体……」
「隔離空間。完全に閉じ込められたね」
僕たち二人を閉じ込めた。ということは、他の皆が危ない!
「魔王様! 早くここから出ないと!」
「慌てるなカイト。あいつらはそんな簡単にやられないだろ」
確かにそうだけど、それでも心配だ。
そういえば、魔王様の力はどれほど協力何だろうか。
「魔王様の力でなんとかならないんですか?」
「残念ながらそれは無理だ」
魔王様でも無理なのか……。
僕がなんとかするしかない!
「アリス! どうすればいい?」
「やっと呼んでくれたわね。いいわ、教えてあげる」
アリスの話によると、僕たちは魔王様の部屋ごと別の空間に飛ばされてるらしい。
もし、今この空間を何かのスキルで相殺できたとしてもどこにいるかは分からないらしい。
人間の国かもしれないし別の国かもしれない。
「なるほど、じゃあこのまま待つことしか出来ないのか……」
「いいえ、方法は一つだけあるわ」
アリスの姿は見えないが、何となく自慢げな顔をしている気がした。
「まず、『砕』で空間を破壊する。その後に『瞬間移動』でバルバトスまで行けばいい。
完璧でしょ?」
「確かに、凄くシンプルだ。頭に血が上り過ぎてたかもしれない」
この方法なら最短で抜け出せる。
「魔王様、ここから抜け出す方法が見つかりました」
「説明はいい、早速始めろ」
僕は空間を破壊した。
すると、辺りには無限の荒野が広がっていた。
「ここはバルバトスの正反対にある場所だ。歩いていけば一週間はかかる」
「『瞬間移動』でバルバトスに帰ります!」
『テリトリー』で範囲を設定し、範囲内の物体を同時に移動させた。
バルバトスに戻ると、信じられない光景が待っていた。




