始まりは最悪でした
僕はその日、何か特別なことはしていなかったと思う。いつもの電車に乗り、いつもの駅から高校に歩いて向かった。
つまらない授業を聞いて、お昼を食べて、トイレに行ったんだ。いつも使っているトイレの扉を開けたらあら不思議、意識が飛んで気づいたら高級そうな絨毯の上に倒れていた。
周りを見ると僕の他に4人の男女が僕と同じ状況だった。
「おぉ、目が覚めたか未来の英雄たちよ。」
玉座に座っていた男、恐らく国王だろうがそう言った。
「状況が全く理解できないんだが、何故俺たちはこんなところに転移させられたんだ?」
「転移だと気づいたとは流石だ。お前たちを呼んだ理由だが、この世界の脅威である魔王を倒してほしいのだ」
いわゆる異世界転移物語というわけか。にしても20くらいだろうか、強そうな人と転移したんだな。
「成程、理解した。もし断ったらどうするんだ?」
「その時はお前たちを牢に入れ、監禁する。ちなみにこの世界で死んでも現世には戻れないからな」
「そ、そんなっ、ひどいです!」
僕と同い歳くらいの女の子が必死に訴えている。可愛いな。
「魔王を倒せば帰してくれるの? 帰してくれるんなら協力してあげるわよ」
24歳くらいのお姉さんか。年上はだめだ。美しすぎる…。
「その通り。魔王を倒した暁には現世に帰してやろう」
「はっ、面白そうじゃねえか。俺はいいぜ、やってやるよ!」
こいつも24歳くらいの男だ。暑苦しい。
「君はどう思う?」
「うん。僕もその意見に賛成するよ」
全員に確認を取った後、強そうな人は国王と魔王を倒したら現世に帰るという約束を交わした。
「では早速、お前たちのスキル鑑定を行う。異世界から来たものには強力なスキルが与えられるといわれている」
「そりゃ面白れぇ、俺は最強だからな! もっと強くなっちまうわ!」
「私は、後方支援など、あんまり前には出たくないです…」
するとこの国一番の鑑定士が来て、僕たち鑑定していった。
「おぉ、貴方様のスキルは『武術の達人』でございます。柔道や合気道などに長けています」
「素手で戦うのは慣れてるからなぁ、当たりだぜ!」
「貴方様は『精霊使い』でございます。貴方様の魔力量ならば、とてもお強い精霊と契約できるでしょう」
「精霊さんに嫌われなければいいんですけど…」
「これは驚いた、貴方様は『魔女』でございます。あらゆる魔法を自在に使うことができ、前衛後衛共にこなすことが出来ます」
「あら、あたしにピッタリじゃない」
「これは、『剣の勇者』! 伝説記でしか見たことがありません!」
「なんと! それは真か!」
「俺が勇者。悪くない」
あちゃー、これは順番ミスったな。勇者の後じゃ何が来ても印象薄いなぁ。
「では、最後に貴方様を…。これは、平民ですね…」
「え?」
その場にいた全員がしばらく口を開けたままだった。その沈黙を破ったのは、勇者だった。
「残念だけど、君とはここでお別れだ。ただの平民を魔王討伐に連れていくわけにはいかない」
「ただの平民カイトよ、お前を、スカーレット王国から追放する!」
「へ?」
王国を追放されたカイト。彼は本当にただの平民なのか。
カイトの物語は、幸先がとても悪い結果になった。
新連載です。完結目指して頑張ります。