69話
ー冥府ー
冥界、そこは地上で肉体を失った魂が来る場所である。
そして地上から、やって来た魂の行方を決める機関が冥府である。
その冥府には天国と地獄がある。
地獄には八大地獄と八寒地獄の2ヵ所に分かれ、
更に272ヵ所と細かくに分かれている。
その冥府で働いているのは、エンマの生命造化によって造られた、獄卒と呼ばれる鬼達である。
そして今、冥府は大混乱の中にあった。
「エンラ様、あの死者が三途の川に大量に来てしまって渡しきれません!」
「エンラ様!死者の裁判が一向に進みません。どうしたら…」
「どの地獄も罪人が一杯で罪人の呵責に手が回りません…」
大勢の鬼達に囲まれ一つ一つ適切な指示を出して行く、その青年は、まっすぐな黒髪を一つに結び、頭部には大きな2本の角、鋭い眼差し、背が高く、意外としっかりとした体格の青年、冥界の統治神エンマを父に、女鬼を、母に持つ冥府の副官、名前をエンラと言う。
「これは地上の方を、どうにかしないと対処しきれません。父上はどうしてますか…」
「あの~、奥方様と…夫婦喧嘩の真っ最中でして……」
( ………)
「…やれやれ、それでは仕方ありませんね。私は、これから地上に上がります」
周囲の鬼達は困惑する。
「それは、この元凶を作られた、大海の神セト様に会いに行くということでしょうか?…畏れながら危険ではありませんか?」
「セト様は、別名を大海の暴君と言われてます。気に入らない者は、容赦なく消してしまう恐ろしい方とも。エラン様に何かあれば我々は、どうしたらいいか…」
鬼達は、必死に地上に上がるのを止める。
「心配はいりません。叔父上…。セト様は話しのわからない方ではありません。今回の事は父に対する単なる嫌がらせ。
私から、きちんと謝罪し、2度とセト様のお嬢さんに手を出さないと言えば、地上での死者の数を減らしいただける筈です」
だが鬼達は更に食い下がる。
「「「でしたら、我々もお供いたします!こうなれば、大海の神、相手にひと暴れだ!」」」
強そうな大鬼達が地上に供をする言う。
「喧嘩を売りに行くのではありません。お供は、小鬼のオウネさんとそうですね…。あの獄卒見習いさんにお願いしましょう」
そうして、地上へと繋がる門の前で、鬼達は、まるで戦場にでも送り出すかの様にエンラ達を見送る。
「ご武運、お祈りいまします」
「武運長久!!エンラ様、無事のご帰還お待ち申しております」
「エンラ様なら、大海の神だろうとなんだろうと、必ず勝つと信じております」
エンラは、鬼達の盛り上がりに呆れつつも諌める。
「何度も言いますが喧嘩を売りに行く訳ではありません…」
そんな鬼達に見送られながら、地上を目指す。
◇◇◇
地上へ繋がる道は1本道。
暗闇の道のその歩きながら、オウネという子供の姿に2本の小さな角を持つ小鬼はエンラ話しかける。
「エンラ様、我が身に変えても必ずお守りいたします!ご、ご安心ください」
そう言ってはいるがガタガタと震えているのがわかる。
「震えている様ですが大丈夫ですか?」
小鬼は、そもそも体も小さく強い鬼では無い。
もっぱら地獄では、雑用や事務の仕事に従事している。
「こ、これは武者震いでございます。それにしても、エンマ様は、どうして大海の神のお嬢さんを拐おうとされたのでしょうか?神の血を引いているとは言え、所詮は人間。100年位待てば、冥府に来る事になるでしょうに…」
「セト様の、お嬢さんは神の血を引く人間ではありません。人の血を引いた神です。神は自らの意思か、連れ去るより他に冥府に来る事は永遠にありません」
「ええー、そんな事ありえるのですか?!」
「私も鬼の血を引く神。そんな事はありえます」
エンラは、その容姿から周囲には鬼神と呼ばれるが種族上は鬼では無く神である。
「確かに、エンラ様は鬼では無く神。そのお嬢さんも、エンラ様の様に強い神なのですか?!」
「強いかどうかはわかりませが、今回の冥府の混乱はお嬢さんの神通力が原因です…」
「そうなんですか?!」
そう聞いてオウネは、ますます不安になるのだった。
「そろそろ地上です。オウネさんは人間の姿に化けてください。見習いさんは、化けるのは無理ですので、姿がわからない様に、頭から布を…」
エンラも角が完全に失くなり人の姿になっている。
こうして冥界から地上に使者がやって来る事になった。
セリ達が全然出ない話になりましたが『神の娘』の話です。
また次からセリ達が登場しますのでよろしくお願いいたします。




