6話
けんちゃんが睨らみ会う2人に声を掛けます。
「ちょっと待つにゃ!!2人供!ちっともわかってないにゃあ。
主には、こっちの着物の方が似合うんだにゃ~」
そう言ってけんちゃんが前足で示したのは、桜色の地色に濃淡様々な桜の花を、着物一杯にちりばめた、まさに桜づくしの着物。
「あたいは主の分身にゃ。だから主の好みの着物が、一番分かるにゃ~ん。主には桜色ぴったりにゃ!!」
(うんうん。けんちゃん、確かに、その着物は、わたくしの好みだわ♡てっ…。違いますよー!!!
今は着物では無くて2人の争いを止めて欲しいんですよー!!更に話しをややこしくし無いで下さい…)
「姫様の分身なのは分かりましたが、小さな子猫に人間の着物の良し悪しを言われても。姫様には、こちらのウサギ柄の着物が一番、お似合いです!」
(サラ、その小さな子猫に容赦無しですか……)
「にゃ?!」
「恐れながら、幼気な子猫の貴方はでは、分からないかも知れませんが、姫様の身分にふさわしいお着物、上品な着物を選ぶのがお側に使える者の務め。こちらの、薄紫の着物が一番です」
( カヤメ、その幼気な、子猫に手厳しいですね)
「にゃにゃ?!」
けんちゃんは2人からは否定されて、にゃんこ扱い、お子ちゃま扱いされて怒り爆発ですねー!!
「ふにゃー!!なら主に聞いて見れば良いにゃ~!主は、あたいの着物を選んぶんだにゃー!あたいの着物が大好きにゃー!」
(ちょっと~!!怒りにまかせて、なんて事を……)
とうとう、わたくしにまで飛び火です。
3人(正確には2人と1匹)が、こっちに来ます!!
「姫様!姫様は、このウサギさんの着物を着てみたいですよねぇ~」
「あら、姫様はこちらのをお召しになりたいですわよねぇ」
「主は、あたいの着物を着たがってるにゃ~ん!」
3人(正確には2人と1匹)が、わたくしに着物を選べと迫ってきます!
この幼気な、おしゃべりも、まだ、まともに、
出来ない、正真正銘、赤子のわたくしに選べと怖い位に迫る!!
最早これは3人の誇りを掛けた仁義なき戦いですか?そうですか…。
ここは仕方ありません!!
私も『無邪気にナニモワカラナ~イ』作戦決行です!
「???」
首を傾げて、『きょとん?』すれば、けんちゃんが……。
「主、話せないなら、指差してして欲しいにゃー!」
無邪気にナニモワカラナ~イ作戦失敗……。
(う、うーん………。困りましたね……)
その時です。
天は、わたくしを見捨てはいませんでしたよ!
「賑やかだね。セリの着物を選んでるそうだね」
ふぁぁ~!
父様の登場が、これ程に嬉しかった時はありません。
流石に、3人(正確には2人と1匹)は、一時、休戦しましたよ。
カヤメとサラは父様に挨拶して、けんちゃんは、静かに部屋の隅に行ってしまいました。
(でも、あらら………?)
なぜか、父様はずらりと並べられた、着物を熱心に見ています。
もしや父様も参戦する気ですか??
「この着物がいい。セリの着物は、これね!」
そう言って、父様は紺色の生地に、金の蝶々が舞い散っらした様な着物を選んだのです。
(
ええっ~!!!やはり、父様も参戦ですか!?)
しかし流石は王様ですね。
誰も父様には逆らえません。
「「かしこまりました」」「にゃふー!!」
こうして、三人(正確には2人と1匹)は、父様の前に、全員が敗れ去りましたよ。
ともあれ、この場を収めてれた父様には感謝ですね~。
そして、感謝の気持ちを伝えます。
わたくしは、満面の笑顔で、手を振りながら、父様にお礼を言います。
「とーたま、あーと♡」(父様ありがとう)
(う~ん。まだちょっと発音がいまいちだけど伝わりましたよね??)
って?ちょっと父様びっくりしてませんか?
(どうしたのでしょうか??)
父様は、座っていたわたくしを急に抱き上げます。
「セリ!今、僕の事を父様って呼んだ?呼んだよね!?初めてだね。とても嬉しいよ」
あらら、そうでしたか…??
父様は、とても喜び、いつも以上にご機嫌ニコニコです。
「着物が気に入って喜んでるんだね。良かった」
(あっ…。ごめんなさい。着物はちょっと微妙です。勘違いしてますね…)
そして敗れた者達は次なる戦を開始します!
「「「次は帯、お飾り選びですね。」」」
「だにゃーん」
ふぇぇ~!!今日はもう、これで勘弁してください!!