5話
あれから、わたくしは何事もなく1ヶ月が過ぎようとしています。
季節は、巡り今は冬です。
(今日も、寒いですね~)
その後も、ずっと父様と一緒に寝ていますよ。
最初は、ドキドキだったけど、今ではすっかり慣れてしまって、こうして誰かが側に居てくれると何だか、とても安心しますね。
それに、父様と一緒だと暖かいんですよね〜。
そんな平和を満喫していた日の夜のことです。
話し声が聞こえてきて起こされましたよ。
「セト、お前いい加減しろよ!!」
なにやら父様と誰かが口喧嘩でもしているみたい…。
そっと気が付かれ無いように、声の方に顔を向けて見れば、以前も父様と話していた、白尾様とガクサン様だった。
「左様、この1ヶ月余り、我々が、紹介した里親を見な断り続けて。皆、良き夫婦だと思うがな」
父様が全部、断ってたんですか?!
まあ、それは、2人が怒るのも無理ないですね~。
「それは、色々と問題が紹介した人間に問題があるから…」
「この世に、お前が求める完璧な人間は、残念ながらおらん。それに居たとしても、どうせ娘をやる気は、無いだろう」
あらら、父様は、なんか、図星を突かれた様な慌てよう。
「そんな事は!」
「ある!毎日、毎日、いそいそ娘に会いに行って、今や一緒に寝て、愛情が芽生え、最早、手放せる訳あるまい」
え~?そうなですか?!
「大体、手放す気なら、とっく手放ていよう。これ以上、お前のの下らぬ戯れ言には付き合えぬ。探すなら、自分で探せ。我々とて暇では無い」
「そうじゃ。そうじゃ。やってられるか…やっている事と言動がまるで一致しておらん。頭を冷やすんじゃな」
「もういい。里親の話は無しだ」
あら?わたくしここに居られるんですか!
「分かれば良い」
「これからは、心入れ替えて良い父親になるんじゃぞ」
「…………」
2人は出て行ってしまいました。
う~ん、これは思ってもいない展開になってしまいましたね。
まあ、父様が構ってくれなくても、基本的に命と衣食住さえ保証して貰えれば、わたくし幸せでを感じる性格ですからね~。
どこでもやって行けますが……。
(でも、ここに居るのが一番いいので良かったですね~)
そんな事を考えていたら、父様がこっちにやって来ました!
(ふぁ~寝たフリが、ばれません様に…)
◇◇◇◇
そんな、こんなで、色々ありましたが、もうすぐ年末ですね。
わたくしにとって、初めてのお正月を迎えます。
新年の祝いは、王宮でも一大行事らしく、その準備で皆さん忙しいみたい。
赤ちゃんの、わたくしは、まぁいつも通りかと思いきや、その準備に巻き込まれてしまいましたよー!
「姫様、お正月の晴れ着を選びましょうね」
そう言われ、大量の着物が、置かれた部屋へとつれて行かれました。
カヤメもサラも、楽しそうに着物を選んでますね~。
「姫様には、こちらの淡い黄色が、きっと良くお似合いです。明るい印象で、姫様の美しい青い髪にも良く映えますし!」
そう言って、サラが、広げて見せた着物は、淡い黄色生地に、白いウサギさん模様が入った、かわいい着物だった。
うん。確かに明るく爽やかな印象、かわいいウサギさんの柄も悪くないですよ♡
「あら、私はこちらの方が良いと思うわ」
そう言って、今度はカヤメが、着物を手にとり広げた物は、薄い紫地、色とりどりの小花が刺繍され着物。
「落ち着いた色あいと、気品溢れる地色、それでいて、この小花が可愛らしさと豪華さを演出してて。姫様にきっとお似合いになるわ」
うん、確かに落ち着いた色だけど、刺繍された小花が、立体的だから、豪華で素敵ね♡
「カヤメ様、失礼ながら、そちらのお着物は、やや、年寄り臭い……いえ、赤ちゃんの姫様には、少々早いかと」
あら、サラそこまで言わなくても…。
それが本音ですか?
「ふぅ~。いいことサラ。まだ年若い18歳の、貴方には、まだわからないかも知れませんが、新年には、沢山のお客様が、お城にいらっしゃいます。姫様のお召し物は、豪華で気品ある事が大事なのですよ」
カヤメの言う事も一理ありますね。
でも、2人は、それぞれ選んだ着物を持ったまま、お互い一歩も引く気配はありません。
この雰囲気はあまり良くありませんね。
そんな時、けんちゃんが開いていた窓から入って来ましたよ。
最近、父様と一緒にいる事か多くなったせいか、けんちゃんは、わたくしの側に余り居てくれ無くなってしまったんですよね。
けんちゃんは、父様が苦手みたいで姿を見ると逃げてしまう。
まあ、仕方ありませんね。
第一印象が悪過ぎですから…。
でも、父様のいない隙に、わたくしの所に戻って来てくれます。
そして今日は、本当に良い時に戻って来てくれてましたね!
上手く喋れない、わたくしに変わって、けんちゃんが2人を止めてくれるハズです!
以心伝心わたくしの気持ちが伝わったのか、けんちゃんは、2人の喧嘩を止めに入ります。
「主、まかせるにゃ~ん」
(うん、任せましたよ)
こうして、2人の仲裁をけんちゃんに託したのです。