55話
あれから月日は流れて季節は冬になりましたよ。
この日は、ちょっと肌寒い日の朝の事です。
「段々寒くなって来たね。ゆきちゃん!遊びに行こ♡」
いつもなら、わたくしの姿を見たら、よってくるのに、今日は、小屋の奥でうずくまって動きません。
どうしんたんですかね??
わたくしは心配になり、カヤメに相談します。
「カヤメ、ユキちゃんの様子がおかしいの!どうしょう~?」
カヤメは、ユキちゃんの様子を見に行ってくれましたよ…。
「姫様。そのユキちゃんは、亡くなっているようです…」
えっー!?昨日まで元気にしてたのにー!
「うそ…!どうして…?!昨日まで元気だったのに…」
わたくしの目から涙が溢れて止まりません……。
「詳しくは解りませんが、どうやら野犬等に襲われたようです…」
野犬ってそんな狂暴な動物が王宮にいるなんて……。
「サラ。とにかく姫様をお部屋にお連れして…」
部屋に戻っても涙は枯れる事はありません。
「姫様、泣き止んでください~」
サラが優しく抱き締めてくれてます。
「主、大丈夫かにゃ?!にゃにがあったの??」
うう~。けんちゃん来てくれてんですか??
「けんちゃん。ユキちゃんがね~死んじゃたの~」
けんちゃんは、とても怒ったました。
「にゃ?!誰がそんな事を!!あたいが、懲らしめでやるにゃ!」
そう言うと、再び部屋を出て行ってしまったのです。
◇◇◇◇
目覚めれば、寝床にいました。
どうやら、泣き疲れて、いつの間にか寝てしまったみたいです…。
「おはよう。セリ」
呑気な父様の声が聞こえます。
はぁー、こちらは悲しみにくれてると言うのに…。
しかも、今は朝では無く昼間ですよ。
「…………」
「やれやれ、ご機嫌ななめだね」
当たり前ですよー。父様は、わたくしを抱っこして、宥めようとしているけど、そんな事しても無駄ですよー
「………」
今度は、カヤメがわたくしの所に来ました。
「姫様。お目覚めになられましたか…。申し訳ございません。人を使って、野犬を探しましたが、王宮には、そうした獣は見つからなかったようです…」
そうですか…。じゃあ一体誰があんなことを…。
「獣かぁー。白尾かなあ?」
ええー!!そこで何で白尾の名前が?!
「白尾?!」
「おや知らなかったのかい?彼は狐なんだよ」
白尾は狐さんですか。
まぁなんとなく人では無いと思ってましたが、やはりそうだったんですか。
でも、どうして人間の姿をしているのかな?
「狐さんなのに、人間の姿をしているけど??」
「あれは人の姿に化けているから、人魚もそうだけど霊力がある動物は、人の言葉を話せたり人の姿に化けたりする力があるんだ」
ああ、なるほど。
「とりあえずカヤメ、白尾を、呼んでくれ」
「か、かしこまりました」
本当に白尾なのかなぁ?
ちょっと信じられない…。
「話は、カヤメから聞いた!わしが、うさぎを、食おうとしたと思っているのか!!」
白尾とても怒ってますね。
父様は、白尾が怒っていても特に気に止める事も無く平然としてますが、見ている、わたくしはハラハラです。
うわ~んケンカ反対ですよー!
「うん。野生の本能が出てガブリとやったんじゃ無いの?」
父様の言葉に白尾は完全に怒ってますね!
「わしは、そこまで未熟者では無いー!!こうなったら、わしが、絶対犯人を捕まえてやるーから待っていろー!!うわ~ん」
今度は白尾が泣きながら部屋を出て行ってしまいました。
ユキちゃんの死から、何だか、とんでもない事になってしまいましたよー!